逗子に住んでいた頃は、横須賀の佐島漁港に週イチ通っては、そこでタコや近海魚を買ったりしてたなぁ。行きつけの魚屋さんは、動いているタコを何のためらいもなくむんずと掴んで、目にも止まらん速さでとどめを刺して袋に入れて、「はい!」と渡してくれた。そんなことを、思い出した。
これは島タコ。やんばるの海で獲れたもの。それも、友人の知り合いのおじいが、古宇利島に行く橋から海をじーっと見てたら、タコがふわりふわり泳いでいたからすかさず釣った、とのこと。すごいなぁ。なんだかすごく直接的だ。正真正銘のハンターだよ、そのおじい。そしてその獲物を「あげる」と、潔くギフトしてしまうところがずいぶん粋じゃないの。ほとんど猫だな、そのおじい。
そんなタコを、とにかく塩でもむ。ぬめりがとれるまで、とことんもみほぐすこと数十分。この作業は「気持ちわるーい」と子どもたち言うかなと思ったけれど、意外と「やってみたい」と人気。ぬるぬるをそこまで体感することもないから、いい機会である。
洗い終えたら流水で磨き、酢を入れた湯で茹でること10分。湯気もうもうの熱湯にタコを入れた途端、さーっと色が赤く変わる。それまで灰色の海底軟体動物だったのが、きゅうに「タコ」となる決定的瞬間だ。
出来立てを、うすくうすくスライスして、お皿に平たく並べ、オリーヴオイルをまわしかける。塩を振って、ケッパー、レモン汁。さっそく、みんなで茹でたてを食べた。歯ごたえしっかりで味が濃い。さっきまでふわりふわりしてたものが、ここにこうして料理となる。ほんと、こころから「いただきます」って感じがする。