アートブックが、多彩な文化のプラットフォームになること。そんな目標をかかげ、2015年から「CASE Publishing」を運営しているCASE。東京を拠点に、写真や現代美術、デザインなど、芸術文化に焦点を当てた出版活動を行ってきましたが、この秋、東京とロッテルダムに拠点となるスペースを同時オープンするとのこと。
東京の「CASE TOKYO」は、渋谷ヒカリエのほど近く、青山通り沿いの渋谷アイビスビルの地下1階。その空間は、「印刷物」「プラットフォーム」をキーワードに、配送用パレットから展開されたものだそう。展示コンセプトによって自由に構成できるという什器にも興味をそそられます。
そして、オープニングを飾るのは、写真家・荒木経惟の写真展です。
あの頃の荒木と女と時代と場所 ©️Nobuyoshi Arakiタイトルは「愛の劇場」。荒木が電通勤務時代の1965年前後に撮影した、キャビネ版のオリジナル・プリント100点あまりを見ることができます。
「〈愛の劇場〉と書いてあるキャビネ判の箱が出てきた。開けてみると150枚ほどのプリントが入っていた。65年頃のプリントだ。その頃オリンパス ペンFでガチャガチャ撮って、わざと熱現像とかイイカゲンにフィルム現像してイイカゲンにプリントしてた、その頃の私と女と時代と場所が写っている、表現しちゃってる。あの頃から〈愛の劇場〉とか言ってたんだねえ。まーそれにしても、イイねえ、イイ写真だねえ、デジタルじゃこうはいかねえだろ。」(タカ・イシイギャラリー プレスリリースより)
この「愛の劇場」は、2011年にタカ・イシイギャラリーで開催され、今回アートブックとして刊行されることになったもの。
アートブックはキャビネ判の箱そのままの装丁も生々しく、若きアラーキーの生活、息づかいまでが感じられるようです。
消防士の日常をミニマルに描写ロッテルダムの「CASE Rotterdam」では、香港の写真家Chan Dick (チャン・ディック)の代表作[Chai Wan Fire Station]を紹介。
ある日、チャイワン消防局の消防士たちのすがたを、オフィスのバスルームの窓から見かけたチャン氏。洗車したり、学校の校外学習をしたり、ときにはバレーボールを楽しんだり......。消防士たちの何気ない日常を鳥瞰図でとらえた写真は、2016年のTokyo International Foto Awardsを受賞しています。
アジアから世界に発信するアートブックシーンの担い手として、ますます目が離せない「CASE Publishing」。アクセスのいい渋谷でその活動に触れられるなんて、朗報です。
[CASE TOKYO オープニング展「荒木経惟 愛の劇場」]
会期:2017年9月30日(土)〜11月11日(土)
会場:CASE TOKYO
住所:東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビルB1
電話:03-6452-6705
開廊時間:11:00〜19:00
休廊日:日・月・祝日