中秋の名月の「中秋」とは、旧暦8月15日のこと。今年のカレンダーにあてはめると、10月4日にあたります。その夜に見られる月が「中秋の名月」です。名月は、満月とは限りません。今年の場合、翌々日(10月6日)が満月なので、満ちる手前の少し欠けている名月になります。昔から、中秋の名月は1年のうちでもっとも美しい月といわれ、お月見をするのが習わしです。
お月見は見上げるだけじゃなく、見下ろしてみるお月見といえば、月を見上げるのが一般的ですよね。しかし、かつて月は見上げるものではなく、見下ろすものでした。そもそも、平安時代に中国から伝わった名月鑑賞の風習を実践しはじめたのは平安貴族たち。風流を好んだ彼らは、月を直視することはせずに、池の水面や盃に映った月を見て楽しんでいたのです。
そんなふうに、もともとは身分の高い人たちの楽しみだったお月見が、一般庶民に浸透したのは江戸時代の頃。江戸の町では、品川や高輪、隅田川、不忍池などがお月見の名所でした。月見舟に乗って、水面に映った月影を愛でる――想像するだけでロマンチックですね!
これにならって、公園の池や川辺など、ウォーターフロントでお月見をしてはいかがでしょう。もちろん、普通に月を見上げてもいいのですが、私の経験からいうと、空高く昇った月を見続けるのは、首や肩が凝ってしまってツライことも。その点、水面に映る月ならば、長時間見続けても疲れないので、心行くまでお月見を楽しむことができますよ。
中秋の名月を、手元にひとり占めする方法わざわざウォーターフロントへ出かけなくても、水面の月を楽しむことはできます。それは、盃などに月を映すという方法。以下の手順で試してみてください。
1.ティーカップやお椀など、口が広い器を用意します。
2.水でもお酒でも、好きな飲み物をなみなみと注ぎます。
3.水面に月が映るように、器の角度を調整します。
この方法だと、手中に名月を独り占めした気分が味わえます。さらに、その器を口元にもっていって中身を飲めば、まばゆい月光とともに、名月のパワーが体のすみずみにまで染みわたるかのようです。
最後に、心配なのがお天気ですね。当日の夜、もしも曇り空だったとしても、すぐにあきらめないでください。時間の経過とともに空模様が変化して、雲の切れ間から見事な月が姿を現すことがあります。自然が相手のときは、すぐに結果を求めてはいけません。時間にも気持ちにもゆとりを持つことが、お月見の心得です。
また、雨のために名月が見られないことを「雨月(うげつ)」と呼びます。当日に雨が降ったら、心の目で雨月を楽しみましょう。
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