マインドフルネスの盛んな地、カリフォルニアに暮らしながら、日本人初のSIY認定講師(※)としてアメリカではもちろん、日本での活動も精力的にこなします。今ではエネルギーに満ち溢れた木蔵さんですが、マインドフルネスに出合うまでは、激務による体調不良とメンタルの不調を抱えていたと言います。そんな木蔵さんにマインドフルネスについてお話を伺いました。
10年ほど前、カリフォルニアに暮らしながら研修会社を経営していた木蔵さんは、日本とアメリカを行き来しながら超多忙な日々を過ごしていたそうです。ストレスフルな毎日に、当然、身体は悲鳴をあげます。
「当時は朝起きてから眠るまで、常に自分を追い立てていました。知らず知らずのうちに身体に不調をきたしたんですね。関節の病気になってしまい、杖をついて移動する日々となりました。そんなとき、見かねた友人が9週間のマインドフルネスコースに誘ってくれたんです。もともとカリフォルニアには生活やビジネスに瞑想を取り入れている人が大勢いましたので、マインドフルネス自体は10年前でもわりとポピュラーなものでした。」
マインドフルネスプログラムのスタート時は雑念だらけで、自分にはむいていないと思ったそうですが、続けるうちに身体が楽になってく感覚があり、これはもしかしたらと、マインドフルネスのポテンシャルを感じたのだそう。
「瞑想をはじめたばかりでも案外効果は出るんだなと驚きました。そして9週間のプログラムが終了する頃には、身体がとても楽になっていたんです。そのとき、これは一体自分のなかで何が起こっているんだろう、理解したい! と思ったんです。また、時を同じくして、マーク・レッサー(Marc Lesser)氏の『Tha Zen of Business Administration』という本に出合い、私のなかでマインドフルネスへの探究がはじまりました」
その後、米国「Serch Inside Yourself Leadership Institute」に出合った木蔵さんは、マインドフルネスプログラムを初めて受けたときに抱いた疑問が、このとき解明されたと言います。マインドフルネスの有効性を実感した木蔵さんは、日本でもこのプログラムを開催したいと思ったそう。すぐに以前から知り合いであった荻野淳也さんに声をかけ「一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティチュート(MILI)」を設立しました。
毎回違った気付きがあるリトリート木蔵さんは現在も年に1、2度は長期間のリトリートを行います。たとえば1週間の瞑想プログラムでは、ひたすら自分の心と向き合うのだそう。
「もう10年近く定期的にリトリートしていますが、毎回違った気付きがあります。1週間も瞑想を続けていると、少しずつ自分の思考パターンが見えてきます。これまでの人生での思い込みやバイアス、"ねばならない"という気持ちなど、色んな感情が出てくるんです。身体をデトックスするのと同じように、心にもデトックスが必要なんだなと思いますね。言うなれば、古い洋服を脱いで手放すイメージ。洋服なんて着なくても良いんだと、気付くこともあります。
マインドフルネスというものは、もともと自分のなかにあるもの、いらないものに気付き、それを使うことが自分のためか、手放すことが自分のためかという取捨選択ができることなのです」
深い気付きは自分のなかにある、という木蔵さん。何十年も自分を縛ってきた固定概念から解き放たれたときに、本当の気付きが得られるのではないでしょうか。
マインドフルネス初心者がまず心がけたい3つのこと Photo by Gettyimages何はともあれ、まずは実践することが大切です。マインドフルネスを生活に取り入れてみたいけれど、何からしたら良いかわからないという初心者の方にも、すぐに取り入れられそうなシンプルな方法を、木蔵さんにレクチャーいただきました。
まずは環境を整える・心が落ち着いて、自分とじっくり向き合える環境をつくる
・比較的ひとりになりやすい時間を選ぶ
(就寝前のベッドの上などでもOK)
1.今に
2.注意を向けて
3.リラックスする
上記3つのことを心がけることができれば、たとえ1分でも3分でも良いのだそう。ただし続けることが重要で、1回やっただけではあまり意味がなく、日常のなかに取り入れ、様々な場所、時間帯で試してみるのがおすすめ。通勤電車のなかでトライすることも良いかもしれませんね。
もっとマインドフルネスを知りたい! という方は、木蔵さんおすすめの、マインドフルネスについて分かりやすく書かれた本を。
『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
『心に静寂を創る練習』(WAVE出版)
「昨年出版された『JOY ON DEMAND』にも書かれていますが、マインドフルネスをやる上でもっとも大切なことは、"楽しいから、やりたいから、続けられる"という気持ちです」
マインドフルネスで劇的に変化するわけではない昨年初頭から、ある種マインドフルネスブームのような状況ですが、じつはマインドフルネスを取り入れたからといって、劇的に生活や体調が変化するものではないということは、予め認識しておくべきこと。
ただ、自分の心と対峙することで、それまで見えなかったものに気付くことができたり、日々の生活がより充実したものに感じられるようになるというメリットは期待できそう。
「マインドフルネスが事実とは異なった情報で広まることには、とてもがっかりしますし、私たちも正しい情報を伝えて行きたいと思っています。今後は個人レベルで、多くの人たちが人生に喜びを感じたり、今ある幸せに気付くことができるようになる、そのお手伝いができればと思っています。一方で、本当に優れた会社、組織とは何か? といった問いを持ちながら、マインドフルネスのポテンシャルを個人ー組織ー社会に対して、より持続的な形で反映できるようにしていきたいとも思っています」
"マインドフルな人"とは木蔵さんのような人を言うのだな、と深く納得してしまうほど、穏やかでありながらも鋭く洞察力に優れた木蔵さん。自らの心と対峙し、余計な雑念を極限まで削ぎ落すことで、今この瞬間、もっとも必要なことにフォーカスし集中する、ということを実践されています。
継続は力なり。まずは1日1分、自分の心を見つめることからからはじめてみたいですね。
※SIY認定講師:米国Google社で開発された優れたマインドフルネス研修Search Inside Yourself (SIY)は、非営利団体SIYLIによってその運営と講師養成が任されている。
お話を伺った方:木蔵シャフェ君子さん一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティチュート(MILI)代表
近著に『シリコンバレー式 頭と心を整えるレッスン』(講談社)『世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。