そして、その集大成ともいえるのが、2016年に公開されたドキュメンタリー映画『Before The Flood』(邦題『地球が壊れる前に』)。
地球の受けているダメージの大きさ
ロサンゼルス中心部で育ったという都会っ子のディカプリオ。小さい頃足しげく通った博物館で見た絶滅種の動物が今でも鮮明に思い浮かぶのだとか。タスマニアン・タイガーや、ドードーといった動物たちは、環境がどのように変わったことで滅びてしまったのだろうとか、人間は気づかずに大きな過ちを犯してしまったのかもしれない、と思ったそうです。
環境問題のことを考えるのは非常に重要なこと。けれども地球上にはエネルギーのインフラさえ持たない地域や、それゆえ生きていくだけで必死の人々もいます。経済活動のためそれぞれの国で違った思惑があるのは当然であり、条約一つでどうにかなるような簡単な話ではありません。いま地球がどれだけのダメージを受けているのか、そしてこれ以上ひどくならないためにどう問題を回避するべきか。今まで「環境問題=温暖化」とされてきましたが、どうやら厳密には乾燥化・寒冷化が進む地域がまばらに出てくるのだとか。専門家との対話を重ねるうちに、ディカプリオの疑問は更に大きくなっていきます。
問題の核心「ライフスタイル・コンサンプション」「社会責任の重要さを人々に訴えかけることは非常に困難だ。みな複雑なライフスタイルをおくっており、それぞれ心配事を抱えている。自分の下す判断ごとにいちいち環境問題のことを持ち出して考えることなんてできない」
(ハーバード大学経済学部グレゴリー・マンキュー教授のコメント)
このドキュメンタリー映画を見ることで、国レベルではなく、私たち個人レベルでできることが何かを思い知らせされます。例えば一番安い植物油脂パームオイル。このパームオイルが熱帯雨林を破壊していると言ったら驚くでしょうか。
世界3大熱帯雨林の一つであるインドネシアにおいて多く生産されており、私たちの化粧品から食品(アメリカにおける食品の47%がパームオイルを使用)に広く用いられています。インドネシア政府と企業との癒着も手伝い、畑を拡大するために熱帯雨林の80%を焼いて開拓。オランウータンとゾウ、トラが共存する貴重な自然生態を破壊しているのです。日本の場合、パームオイルと書かずとも「植物油脂」と原材料表示するので、私たち消費者には気づきにくいかもしれませんが、意識して「買わない選択」をすることも大事なのではと考えます。
「2040年には北極のあちこちへボートでの移動が可能になる。その頃には氷河が一つ残らずなくなっているだろうから」
(ナショナル・ジオグラフィック、現地滞在研究員エンリック・サラ博士のコメント)
環境問題や温暖化に関しては、専門家の間でも意見がわかれるところです。ただ、いま私たちが当たり前だと思っているものが、未来には当たり前でなくなるかもしれない。そのことを想像するならば、情報に翻弄されることなく、自分が正しいと思うことを自分の意思選択により責任感を持って行うことが大事なのだと思います。
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