彼らは、自分のキャパシティ以上のことはしません(しかもそのキャパシティ設定はかなり低め)。以前雇っていたドライバーが、人を送りに行くとなかなか帰ってこないので、どこに行ってるの? と聞くと、家に帰って朝ごはんを食べてコーヒーを飲んでいるのだそう。営業時間は、人を送り届けたらすぐに帰ってきてくれるように伝えると、なんと、辞めたい、と。(仕事終了後もFacebookかYoutube見ている割には)結婚式やお葬式やその他の儀式で忙しいから、働く時間がない、とのこと。「働かなかったら借金はどうするの?」と耳が痛いことを聞かれたら、バリニーズスマイルで交わす。基本的に、辛いことはしません。未だに、完全に理解しきれないところです。
とにかく笑う、家族と笑うキャパシティを低めに設定しストレスを溜めないバリ人ですが、バリ人なりに、もちろんストレスを抱える人もいます。たとえば、夫がもう長年働かず、14人の家庭の生計を一人で切り盛りしているおばちゃん。仕事の合間に、よく私の腕の中で泣いていますが、夫婦で一緒にいるところを見ると、とっても楽しそう! 演じているわけでもなさそうで......私としては驚愕ですが、家族が健康で、なんとか暮らしていけていれば、それでいい。それが、幸せだそう。大所帯で暮らし、常に一緒にいるのに、いつ見ても話が途切れることなく、爆笑しているバリ人家族。先進国の人間は、学べることがありそうです。
とにかく感謝する、そもそも多くを求めないバリヒンドゥー教の信仰が生活の隅々にまで根付くバリでは、家の隅々に、道のあちこちに、家寺に、職場の祭壇に、毎日お供え物を作って祈りと一緒に捧げます。貧しい人は少しのお供え、裕福な家ではたくさんのお供え、それぞれの生活レベルに見合ったお供えをするようですが、どんなに貧しくとも、少しでもあるものに対し神々に感謝し、食べ物に困っていても、ある食べ物の中からお供えをする。幸せであるために、そもそも多くを求めないのがバリ人です。
トリ・ヒタ・カラナ(幸せに必要な3つの要素)神々との調和。自然との調和。人間同士の調和。「幸せに必要な3つの要素」という意味のトリ・ヒタ・カラナ。バリを代表する、古来からの哲学です。全ては、ここに集約される気がします。そしてこの3つの要素は、バリ人にとってだけでなく、おそらく人類全体にとっての幸せの原則で、皆がこの精神に則って生きていたら、この地球はこんなことになっていないはず。バリ同様、八百万の神々がいて、本来アニミズム(多神教)の国、日本。宗教ではなく、魂の深いところに根差し、太古から変わらず私たちの根幹にあるもの。日本人がそもそも持っているのに忘れてしまったもの。それがここには、残っている気もします。日本人がバリを初めて訪れて「懐かしい」と言うのは、そう言うことなのでしょうか。
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