その純子さんが大好きな装花家の谷匡子さんという方が、NYのギャラリーでパフォーマンスをされるとの事。谷さんは、月刊フローリストという雑誌でずっと連載をされていて、日本の伝統工芸の作家さんを訪ねてその作品にもお花を活けて掲載されているのですが、華やかな花が全盛だった20年前から野花を生けておられる方で、本当に素敵なので是非、観にいってね、とのメッセージでした。谷さんのHPを拝見しただけで何だかとても胸が高まる思いになって、娘と2人でワクワクしながらマンハッタンに向かったのでした。
ロウアー・イーストにあるギャラリーでは『てしごと と くらし展』という展覧会が行われていて、並んでいる作品がどれもみな一つ一つ丁寧に心を込めて作られているのが伝わる美しい作品ばかりで、またそれをアメリカで手に取って観ていると特別、心が落ち着く感じがしました。
そして谷さんのパフォーマンス。あぁ、もうそれはそれは本当に素晴らしかった。一時間くらいだったのでしょうか、静かな空間の中で、バイオリンの演奏と共に楽器のように谷さんの花ばさみの音が聴こえ、その度に草花の良い香りがギャラリーに満ちていきます。
谷さんは裸足で花器の周りを歩いたりしゃがんだりして花を活けていくのですが、まるで最初から全ての草花の場所が分かっているかのように迷いなく流れるようなリズムで、それを観ていると時間の中に吸い込まれるような、アンビエントの音楽を聴いているような不思議な感覚になりました。
娘が飽きてゴソゴソしないか少し心配だったのですが、すっかり観入っていて、途中からスケックブックを取り出して谷さんのパフォーマンスをスケッチし始めるくらい夢中になっていました。
パフォーマンス後、谷さんとお話しする機会があったのですが、御本人もとっても素敵な方で感無量でした。ギャラリーのスペ=スの関係で、作った作品を片付けないといけないそうで、帰りに谷さんが作品で使った草花を娘にプレゼントして下さったのですが、茶色の大きな包装紙で包んだので、よく覗かないと見えないはずなのに、路上や地下鉄ですれ違った人に何度も「素敵な花だね!」と声を掛けられたのです。もしかしたら草花の香りのせいかな、、それよりも草花から谷さんの『気』のようなものがずっと優しく漂っていたような感じがしました。
家に着いて、娘は谷さんのパフォーマンスを思い出しながら、頂いた草花を嬉しそうに活けていました。こうして今書いていても、どこからかあの日の香りが漂ってくるようです。
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