植西 聰著『平常心のコツ』と出会ってから、「あまりがんばらないほうが心はブレなくなるのではないか」と思うようになりました。
人は人、自分は自分と割り切る自分では「他人からどう見られているか」なんて気にしていないつもりでいたけれど、「ちゃんとしなければ」という思いが強いのは、他人の評価を中心に意識を組み立てて自分の気持ちは後回しにしている何よりの証拠。
「人は人、自分は自分」と割り切る勇気が足りていなかったなと気づきました。別にほかの誰かを納得させるために生きているわけではない、自分は自分にもっと集中しよう。そう決めたら、気持ちがすっと楽になりました。
あきらめたっていいと思うじつのところ、私が気にしているのは「人からどう思われるか」というよりも、人からよく思われなかったときに「身におぼえのないうわさを広められる」こと。うわさ対策で、自分の行動を他者から見てより正しく見えるものに制限してきたような気がします。
でも、本当の私を知っている人ならうわさは信じないはずだし、信じる人のことは放っておくしかないでしょう。人の口から出てくる言葉に対して、私にできることはほとんどありません。
この本をもとに、「わかってもらえなくてもいい」「どう思われてもいい」「嫌われてもいい」などと、外部からの評価や反応に関することはあきらめることにしました。すると、人の言葉によって気持ちを揺らされることが減り、心が静かに。
水のように淡々と暮らす1週間をそれでも、人の視線や言葉をまったく気にしないというわけにはいかない私ですが、敏感になりすぎて心が乱れていると感じたときは、水のように淡々(たんたん)とすごす期間をつくることにしています。だいたい1週間。
この本のなかで最も印象に残ったのが、「たんたんと」という言葉だったからです。自分が調子を落としているときも「たんたんと」、ショックを受けて落ちこむような出来事があったとしても「たんたんと」。仕事や家事や入浴など、日常の動作をただ「たんたんと」おこなっていれば、心の揺れはやがておさまっていく、と植西さん。
試してみると、うまくいく日もいかない日も起きたことの理由を頭で考えすぎず、「ちゃんと」ではなく「たんたんと」過ごすのは何とも心地いいもの。
ただ、不思議なもので、自分のペースを守って暮らせていれば、今度はもうすこし誰かの意見を取り入れてみようという気持ちもわいてきます。淡々と過ごす7日間があってこそ、多少のことを聞いてもブレない、しなやかな心が作れているのを感じています。
[『平常心のコツ』]
(木谷梨子)
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