思考が優先して働いている現代では、物事の判断基準が「正しい」か「間違っている」かになりがちです。そうすると、頭ばかりを使うことになり、思考の筋肉(そんなものがあるかどうかは別として)がどんどん育って、体の感覚がどんどん鈍くなっていってしまいます。私たちを苦しめているのは私たち自身の思考ですから、正しい/間違っているを基準に物事を選ぶ、つまり頭を使えば使うほど、どんどん苦しくなっていく、ということです。
頭を休ませるためには「頭を休ませる」をすればいいのですが、いざ「頭を休めよう」とすると、頭を休ませるためにはどうすればいいのだろうか、とさらに頭を使い始めてしまいます。そんなときに役に立つのが五感を使うこと。五感から入ってくる刺激をただ感じることです。日常生活の中で五感をフルに使いやすいのは食事です。目で見て、香りを嗅いで、口に入れれば、食感があり、音があり、味があります。
食事をするときは、食事をすることだけに集中します。まずはほんとうに今、食べたいかどうか? お腹が空いているかどうか? お腹が空いていなくても、思考は「今食べておかないと食べる時間がない」とか「食べないと元気が出ない」とかいろいろ食べる理由を生み出します。
でも、体は答えを知っています。そうして、それを食べることに決めたらスマホや携帯、PCなどは目に入らない場所におくか、どうしても気になる場合には食事の間だけ電源をオフ。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚に意識を向けながら味わって食べます。味わってみて、おいしくないな、と感じたらもしかしたらそれは自分には必要のないものかもしれません。食べ終わったときの体の感覚はどうでしょう。
食事はエネルギーを補給するためのものです。食後、エネルギーに満ちて動き出したくなるような感覚になるかどうかは自分に必要なものを適量食べたかの判断基準になります。食事を通して気づけることはたくさんあります。そして、体感覚を取り戻すことは、自分に気づくための第一歩です。
今日の1枚:出張で訪れた福岡では金色に輝く田園風景にたくさん出会いました。噛めば噛むほど甘くなるお米。新米がおいしい季節に、じっくりゆっくり噛んでその味わいを楽しむのは豊かな時間におもいます。
>>明日の後編に続く