恐らく人の数だけ、幸せのカタチもあるのではないでしょうか。
本当の「幸せ」ってなんだろう? 米Holstee社のマニフェスト「THIS IS YOUR LIFE.」に触発され作ったという、前野先生オリジナル「しあわせのためのマニフェスト」ポスター。眺めているだけで、自分は大丈夫だ!と思えます。「幸せ」という目には見えない抽象的なものを、科学的に研究しているのが、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司先生。
前野先生によると「幸せ」になるためには、四つの因子をバランスよく持つことが大切なのだそうです。
第一因子「やってみよう」因子(自己実現と成長)
夢や目標、やりがいを持ち、それを実現させようと自ら成長する。
第二因子「ありがとう」因子(つながりと感謝)
他者を喜ばせたり、支援すること。家族や友人たちなど人とのつながりを感じる。
第三因子「なんとかなる」因子(前向きと楽観)
物ごとに対して常に楽観的でいること、自己肯定感が高いこと。
第四因子「あなたらしく」因子(独立とマイペース)
周りや他人と比べず、自分らしく、あるがままでいること。
これら4つの因子から、本当の「幸せ」とは自分次第、つまり自分の心の在りようでなんとでもなるということがわかります。
「幸せ」は自分次第で手に入るどうしたら「幸せ」だと感じられるようになるのでしょうか。前野先生に聞いてみました。
「"幸せとは何か"を定義することは難しいのですが、これまでの様々な研究の結果、幸せになるためのコツはいくつかあります。たとえば、眠る前にその日あったことで良かったと思うことを、3つ書き出してみる。イヤな気分で一日を終えるよりも、良かったことを思い出し、満たされた気持ちで眠りにつけば心が安らかになりますよね。同様に、感謝を3つしてから眠るというのも良いと思います。ほかには、自分の友だちの数を数えて(思い浮かべる)みるのもいいですね」(前野先生)
前野先生によると、幸せな状態であるときには視野が広がり、物ごと全体を把握できるのだそう。反対に不幸せな状態だと、視野が狭まり部分しか見られないと言います。悪いことが続くときには思考も悪い方へと行きがちなのはこのためなのです。
「毎日感謝していると、イヤなことは忘れてしまうんです。感謝するクセがついてしまえば、イヤなことがあったとしても、それを成長のチャンスだと捉えられる。すべて試練だと思えます。つまり、幸福学を知っていると、修行しなくても悟りの境地にいけるんです。笑」(前野先生)
イヤだな! と思ったら深呼吸ーー日々仕事や生活をしていると、逃れようのないイヤなこと、辛いこととの遭遇も否めません。そのようなときは、どう対応したらよいのでしょうか。
「イヤなことの数だけ、それに対する回避術もあります。簡単なものですと深呼吸をしたり、イヤだと思っても3秒待ってみる。何か別のものに意識を集中することも回避する手段のひとつです。
少し慣れてきたら、たとえば苦手な人が言いがかりをつけてきたとします。当然こちらもイラッとするわけですが、そこは客観的に自分を観察し、"あー、イラッとしているな"と思いながら心を落ち着け、しっかりと相手の言い分を聞いてあげるのです。つまり傾聴ですね。すると、不思議と言いがかりをつけた方も徐々に心が落ち着いてくることが多いのです。たいていの人は、自分の話を聞いて欲しい、注目して欲しいと思っているんです」(前野先生)
電車に乗っているとき、窓に映る自分の表情をみてハッとした経験はありませんか? 口角は下がり、無表情。ともすると、何かに不満を感じているようにも見えることも......。
あたりまえかもしれませんが、幸せは笑顔をつくり、笑顔は幸せを招きます。前野先生の提案する四因子を実践するためには、お金も労力もまったく必要ありません。ただ、自分のマインドを少し変えてみるだけ。ほんの少し意識することで、毎日の生活が少しずつ豊かなものへと変化してゆくのではないでしょうか。
後編では、不幸せからの脱却方法など、さらに「幸福学」の実践についてレクチャーいただきます。
後編へ続く>>
お話を伺ったひと:前野隆司(まえのたかし)さん
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。ヒューマンマシンシステム、イノベーション教育、社会システムデザイン、幸福学、システムデ ザイン・マネジメント学などの研究に従事。著書に『脳はなぜ「心」を作ったのか』(筑摩書房)、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『思考脳力の作り方』(角川書店)、「幸せのメカニズム」(講談社現代新書)、近著に「無意識の整え方」(ワニブックス)などがある。[SDM前野隆司]
撮影/中山実華(前野先生・ポスター)/image via shutterstock
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