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標題=本当のニューメディア
掲載媒体=I
発行会社=東芝
執筆日=89/07/09
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MEDIAとは、中間物をあらわすMEDIUMの複数形である。だから、メディアとは、人と人との間にある環境と言うことができる。人間は「言葉」というメディアを発明し、それまで現実的な関係の中にしかなかった「発見」や「感動」を、そこにはいない「第3者」に伝えることに成功した。そして更に、言葉は「書物」という発明により、時間的にも異なる「第3者」に伝えることに成功した。
近代になっての複製技術の発展は、一人の個人から大量の「第3者」に対して伝達する手段を可能にした。本来は、個人的な関係の中でのMEDIUMであったものが、今は、社会的な環境としてのMEDIAになっているということである。
さて、大量伝達手段としてのMEDIAは、今後ますます精度と効率を高めていくだろう。しかし、本来の役割である「個人の感動を別の個人に伝えていく」という側面はますます見えにくくなってきている。MEDIAがシステムとして完成すればするほど、人工的な都市のように冷たく無人格なものになってきている。清潔で巨大な建造物が濫立しているけど、そこには生き生きとした人間関係もなく、役割と仕事に追われる機械だけが忙しそうに回転している、というのが現在のMEDIAの風景ではないだろうか。
MEDIAの完成は、ほとんど目に見えてきている。この後、しなければならないことといえば、個人と個人の間に本来あったMEDIUMとしての「言葉」の回復であろう。システム的に無駄のないMEDIA社会の上で、言葉の力が復権できたら、それこそが私たちがこれまで知ることのなかったNEW MEDIAとなるのではないだろうか。
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