「反社会的行為だ!」
――「私の夢は、タバコが吸える航空会社の設立である」と言った時の友人の反応だ。
むろん彼はタバコを吸わない。
本気で期待されているとは思わないが‥‥
日常生活で、夢という言葉を口に出す機会はあまりないだろう。スモーカーズ・エアライン設立も、「実現に向けて努力している」といったたぐいのものではない。「あったらいいな」と思う程度の夢だ。
冒頭の友人も、私のいい加減な夢であることを気づいており、笑いながらコメントした。喫煙者に話しても「是非作って下さい」と同調されるが、本気で期待されているとは思わない。
近年の嫌煙ブームは魔女狩りにも例えられる。
しかし、既得権の搾取に対して喫煙者は意外と怒らない。数年前までどこでも吸えたタバコを、空港の滑稽なほど狭いスペースの中に追いやられながら、モクモクとタバコを吸う。機内で隣に座った乗客は、これ見よがしに鼻をクンクンする。分煙に協力したがゆえに、狭いところに追いやられ服に臭いがついたことをあなたはわかっていないらしい。
「実現しない夢で良いのか」
怒らない喫煙者に代わってスモーカーズ・エアラインを作れば、空の旅において究極の分煙が成立する。直前まで、狭い喫煙所でついた臭いを双方とも気にすることもない。実現できないのか――。
機内放送では未だに「当機は全席禁煙です」というアナウンスがあることにお気付きだろうか。国際法やIATAなどで機内での禁煙が決まっているわけではない。但し、米国に乗り入れる飛行機は同国の法律で禁じられているようだ。
アメリカは相手にしなければいい。
出資と採算を調べてみたが‥‥
静岡空港開港に合わせて設立されたフジドリームエアラインズの資本金は設立時わずか3億円。実際に飛行機を飛ばす段階では、静岡県内官民の協力を得て80億円強の借り入れを行っているが、3億を集めれば飛行機を飛ばすまでの準備資金にはなる。
これなら、集められる。
タバコ会社や喫煙者の個人投資家からの出資が期待できるだろう。経営陣には、愛煙家の国交省役人を引き抜き、当局と交渉させよう。
着陸後に、ふとしたきっかけでキャビンアテンダントに構想を話したことがある。たまたま彼女は喫煙者であり、タバコを吸う乗務員の苦労を話してくれた。
そして――「転職します」と言ってくれた。
米国で勝ち組に入る航空会社であるサウスイースト航空は、損益分岐搭乗率を75%に設定しているという。「当社」では喫煙スペースを20%設けて、客席は禁煙とする。喫煙しない同行者への配慮だ。80%部分の座席を9割以上稼働させ、単価を少し上げれば採算は取れる。
法律、採算のめどが立ったとして、どこに飛ばし誰をターゲットにするかだ。
愛煙家にとって一番タバコが吸いたくなるのは、食後と就寝前後に決まっている。最初は国際線ということになる。比較的喫煙率が高いアジア諸国に第1便を飛ばす事にしよう。
数年前にここまでは調べた。
面白そうでしょう――だが、進んでいない。
実現しなくても・・・「夢」は意味を持つ
50歳を前にしたビジネスマンにとって、航空会社設立といえば「精力的」とも「無謀」とも取れる行動だ。だが、真剣に実現しようとは思っていないのだ。実現段階にあるのなら、「夢」という言葉は「ミッション」とか「ビジョン」とかに置き換えられるのだろう。
だから「夢」はいいんだ。
うつつの中で、ぼんやりと構想し、名刺代わりに人に話す。
努力なんかいらない。
たまたま真剣に考えてくれるパートナーと巡り合い、社会的背景にもぴたりとはまった時だけ行動に移し、そうでなければ実現しようなんて思わない。
実現しなくても、「しいたげられた喫煙者のせめてもの抵抗」としてスモーカーズ・エアラインの「夢」は‥‥意味を持つのだ。
***
スモーカーズエアライン設立の際は、是非出資をお願いします。
●スモーカーズ・エアライン 青山 一郎(リアルテキスト塾12期生)
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橘川幸夫放送局通信
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