あなたが、「あのおかげで今がある」と思える経験はどんなものですか?
今回は、生まれた環境を理由に、仕事や人間関係に自信を持つことができないという方の相談をもとに、前回に引き続き過去を受け入れて前に進むための方法について解説させてもらいます。
Q. 幼い頃の家庭環境が悪かったせいか、仕事でもプライベートでも自信を持つことができません。
恋愛でも人間関係でも、どうせうまくいかないのではないかと余計なことばかりを考えてしまいます。
どうすればもっと楽しく生きることができるのでしょうか?
過去にとらわれて動けない人も、未来に対する恐れで動けない人もいますが、過去が悪いわけでも、未来が悪いわけでもありません。
それは自分の感情と向き合うことができていないということが原因です。
過去に失敗したとしても、その失敗をバネにして成長したり大きな成功を成し遂げる人もいます。
ところが、過去の失敗をトラウマと捉えてしまい、いつまでも前に進めなくなってしまう人もいます。
この違いはなんなのでしょうか。
人によっては過去を自分のものとして前に進む力に変えることができるのに、過去にとらわれて前に進めなくなる人もいます。
結局のところこれは、過去に対する自分の感情を受け入れることができているのか、未来に対する自分の感情とうまく付き合うことができているのかということです。
過去に対する後悔やトラウマも、未来に対する恐れも、全ては自分の感情とうまく付き合うことができているかということに集約されるわけです。
自分の感情とうまく付き合い、前に進むためにこの本はとても役に立つと思います。
弁証法的行動療法 実践トレーニングブック‐自分の感情とよりうまくつきあってゆくために‐
弁証法的行動療法というのは、過去を自分のものとして受け入れて、未来に対してまだ起きてもいないことをムダに不安に感じてしまう状況を改善してくれるものです。
まだ挑戦もしていないのだから、未来にそんな不安が現実化するかどうかなんてわからないのに、その不安にとらわれて行動できないという人も多いと思います。
過去にとらわれて今動くことをやめてしまう人もいれば、未来に対する不安から今動くことをやめてしまう人もいます。
この両方を解決する方法として、この弁証法的行動療法というものが役に立ちます。
そんな弁証法的行動療法を実践的にトレーニングするための内容になっています。
結局、過去や未来にとらわれる人は、自分自身の感情の処理の問題で前に進めないわけで、今が苦しいとか自分がダメだと思い込んでいる状況にいる人は、それは状況がダメなのではなく、その状況に対する自分の感情が自分を追い詰めています。
ですから、そこで解決するべき問題は、そのほとんどが自分自身の感情の問題です。
貧しい状況をバネにして大きな成功を手にする人もいれば、とても恵まれて裕福な家庭に生まれ他人から羨まれるような環境にいても、自分で自分を傷つけたり壊してしまう人がいます。
これは結局、自分の感情と上手く付き合えていないということが問題なわけです。
変えられない過去を受け入れて前に進む方法
前回に引き続き、変えられない過去を受け入れて前に進むための方法について解説していきます。
トラウマまで行かなくても、人間には少なからず忘れたい過去や乗り越えたい過去があります。
嫌な思い出や失敗は誰しもあります。
これを乗り越えていかなくてはならないわけですが、いつまでも忘れることができなかったり、そんな過去のせいで失敗が怖くなり前に進むことができなかったりします。
前回の前半では、8つのコーピング・ステートメントから、最も重要なワークとして求心的な受容のワークを中心に、それを乗り越える方法を解説させてもらいました。
一問一答「あなたがここ最近で苦しかったのはどんな時ですか?」【過去を受け入れて前に進む方法】
人は様々なものを抱えながら生きていくわけですが、それを乗り越えるためにマーシャ・M. リネハン博士が開発した弁証法的行動療法をもとにした、過去の乗り越え方を引き続き解説していきます。
感情機能のワーク
これは自分が抱いている感情にどんな機能があるのかということを考えてみるトレーニングです。
紙に書き出しながら行なってください。
目の前の状況に耐えられない人やトラウマを抱えやすい人たちは、往々にして自分の感情をぼんやりとしか捉えていません。
そのせいでネガティブな感情に圧倒されてしまいます。
何のためにその感情が湧いてきているのかということを細かく分析することができていないために、嫌な感情に対して100か0かで判断してしまいます。
そうなると目の前の状況に耐えられなくなります。
このような人は少し嫌なことがあっただけで、この世の終わりかのような心理状態になってしまいます。
今この瞬間に向き合うためにも 、自分の感情にどんな機能があるのかということを理解しておく必要があります。
僕たちの内側に湧いてくる感情には意味があります。
それを理解するためのワークを紹介しておきます。
以下に紹介するワークと質問を使って、自分の感情の働きについて意識を向けるようにしてください。
怒りの感情にも悲しみの感情にも目的があります。
その感情に流されるのではなく、自分が今なぜその感情を作り出したのかということを考えてみてください。
ステップ1 :先週のことを思い出し、自分が感情的な反応した出来事について考えてください
先週のことを振り返り、自分が感情的になってしまった時のことを思い出してください。
怒って友達に当たってしまったということでも構いませんし、上司に嫌味を言われて机を蹴ってしまったということでも構いません。
ステップ2 :その出来事に対して皆さんがどのように解釈したか考えてください
その感情的になってしまった出来事があり、皆さんはそれをどのように解釈したか考えてみてください。
例えば、上司に嫌味を言われて机を蹴ってしまったというのであれば、人によっては、最低な上司だからもう会社を辞めたいと思うかもしれませんし、机を蹴ってしまうなんて子供っぽいことをしてしまったと自分を責めてしまうかもしれません。
その出来事を自分がどのように解釈しているかということです。
自分の感情というよりは、その出来事を自分がどのように解釈しているかです。
ステップ3 :その時に抱いた感情の強度を100点満点で採点してください
例えば、怒りの感情を感じていたのであれば、人生でこれ以上はないというぐらいのレベルが100点です。
なんとなくの直感で構いませんので採点してください。
ステップ4 :以下の質問を使って感情の機能を特定します
以下の質問に自問自答しながら、何のためにその感情が生まれたのかということを考えていきます。
感情の機能は大きく分けて3つあります。
どれに当てはまるのかということを考えていきます。
①情報伝達の機能
その感情は他人に何かしらの情報を伝えましたか?
あるいは、他人の行動に何かしらの影響を与えましたか?
もし、そうであればその機能を説明してください
人間は怒りを感じたり楽しみを感じた時には、その感情を使って、相手に自分の気持ちを伝えようとしているか、それによって相手の行動を何かしら変えようとしています。
その感情は他人に情報を伝えるためのものだったのか? それとも、相手の行動を変えるためのものだったのか? ということを考えます。
もしそうであれば、その目的は何だったのかということを考えます。
もし1人で怒ったり落ち込んでいるだけであれば、情報伝達の目的ではないということです。
もし相手がいたということは、自分は情報を伝えたかったのか、あるいは、何かしら相手に影響を与えたかったということになります。
②動機の機能
その感情はあなたの行動に方向性を与えたり、動機をアップさせたりしましたか?
もし、そうであればその機能を説明してください
自分のその感情によって自分の行動が変わったり、それによってモチベーションが上がったり下がったりしたのかということを考えます。
人間の感情はモチベーションになることがよくあります。
怒りを感じたり悔しさを感じることで、もっと前に進もうと思える人もいます。
怒りの感情も悲しみの感情も、それを動機としてモチベーションにすることができます。
そのようにできるのであれば、その自分の感情には動機の目的があるということになります。
③結論の機能
その感情はあなたに何らかの情報を与えましたか?
あるいは、あなたの認識に影響を与えましたか?
それとも、何らかの結論を出すのに役立ちましたか?
もし、そうであればその機能を説明してください
自分が感じている感情は、これら3つの方向性しかありません。
その感情を使って相手に情報を伝えたり行動を変えようとする他人に向けた感情の使い方、自分のモチベーションにする使い方、そして、感情によって何かしらの自分の行動を決定したり、自分に影響を与える使い方、この3つです。
要するに、自分に影響を与えるか、他人に影響を与えるか、モチベーションを上下させるかの3つです。
これらの質問を使うことで、感情が与える機能を理解することができるようになり、苦しい状況に耐えたり辛い状況を乗り越える力を高めることができます。
皆さんも怒りや悲しみの感情が湧いてきた時には、その感情にどんな機能があるのかということを考えてみてください。
例えば、奥さんが旦那さんにひどいことをされたとします。
もし、自分の悲しい気持ちを伝えたいのであれば情報伝達の機能です。
もし、落ち込んでいるけれど、このままではいけないと考えて、運動してもっと魅力的な女になってやると思っているのであれば動機の機能です。
もし、あまりにも悲しい気分になりすぎて離婚したいと思い始めているのであれば、それは結論の機能です。
このワークを使っていただけると、一歩引いて自分の感情を観察することができるようになるので、無駄に感情に飲まれてしまうことがなくなります。
ダイアリーカード
これは弁証法的行動療法の結構メジャーなテクニックです。
自分の衝動について学んで、その衝動をコントロールする力を鍛えるワークになっています。
これも紙に書き出しながら行うようにしてください。
トラウマや嫌な過去を乗り越えるためにも自己コントロール能力は必要ですし、乗り越えることで自己コントロール能力はさらに鍛えられていきます。
ステップ1 :自分が衝動的に行動してしまった時間を書き出す
まずは、皆さんが忍耐力を発揮することができず、衝動的に行動してしまったことについて思い出して、その日時を書き出してください。
ステップ2 :その衝動が起きたきっかけを書き出す
その衝動が起きたきっかけについて、事細かく思い出して書き出してください。
誘惑に負けたきっかけではなく、どのようなきっかけでその衝動が起きたのかです。
ステップ3 :その衝動が起きた際の感情を書き出す
その衝動が起きた時に、自分がどんな感情を感じたのかということについて、事細かく書き出してください。
衝動が起きた時や誘惑に負けそうになった時、人は自分の中での言い訳を探しています。
そんな自分の頭の中で渦巻いた言い訳や感情をできるだけ具体的に書き出します。
ステップ4 :そこで取った行動とコーピング・リストを思い出して書き出してください
そこで結果的にとった行動を書き出すと同時に、衝動を抑えるため 、あるいは、使えばよかったのに使えなかった自分が衝動を抑えるためのコーピング・リスト(自分のストレスや衝動を抑えるための自分だけのテクニックやリスト)を思い出して紙に書き出します。
ステップ5 :今日はどんな1日だったかを記録する
最後に、今日はどんな1日だったかを一般的な評価として記録します。
自分なりの採点でもいいですし、10点満点で採点してもいいと思います。
このような記録を定期的に続けることによって、多くの人が自分の衝動を把握できるようになったそうです。
自分がどのように衝動を感じるのか?
誘惑に負けそうになった時にどんな言い訳をするのか?
このようなことが理解できるようになり、自己コントロール能力の改善につながるということが示されています。
ここから先は、トラウマやネガティブな感情を乗り越えて、人生をより充実させるための方法について解説していきます。
ぜひ続きもチェックしてみてください。
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