韓国の左派系紙『ハンギョレ』によると、韓国の政治的混乱は続いている。 -------引用ここから------- 12・3内乱以降の状況を眺めている国民は呆気に取られている。内乱を起こした容疑者は、捜査機関の出頭要請を一方的に無視し「厳然たる現職の大統領」だと開き直っており、内乱の主導者であるキム・ヨンヒョン前国防部長官は、26日に弁護団の記者会見を通じて「今回の戒厳は国会の反憲法的行動に対して警鐘を鳴らすのが目的であり、大統領の適法かつ正当な非常戒厳宣布は内乱になりえない」と述べ、事実上国民を叱りつけている。 -------引用ここまで------- https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/52019.html 「捜査機関の出頭要請を一方的に無視」というのは、なかなかスゴい。「今回の戒厳は国会の反憲法的行動に対して警鐘を鳴らすのが目的」というが、戒厳令は民主主義の“停止“を意味するわけで、「警鐘」云々にハナシをすり替えるのは、正直、ノリが軽すぎるというか、軽薄な印象はいなめない。 「国民は呆気に取られている」というのは、まさにそのとおりではないか。 ハンギョレによると、「「非常大権で国を正常化」…尹大統領、3月から内乱を構想」とのことだが、この「国を正常化」という“切迫感“には、世界情勢の中で韓国政治を見た場合に、違和感がある。世界はトランプ2.0やウクライナ敗北、「西洋の敗北」、BRICSの台頭という激変期に入っている。 今年3月時点で、トランプが再選される可能性は想定の範囲内のはずだ。トランプ再選となれば、グローバリズム勢力の後退は避けられない。トランプ政権に替われば、アメリカ帝国として北朝鮮との融和に転換する可能性があることも想定されたのではないか?となれば、尹政権として北朝鮮融和や利敵行為をする野党を弾圧して、民主主義を停止してまで戒厳令を実行し、「国を正常化」するのは、トランプ政権に背く可能性がある危険な賭けでなかったのか? https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52034.html また尹大統領が敵視していたのは、民主労総等労働組合だった。 -------引用ここから------- 尹大統領は戒厳発言と共に、戒厳当時の逮捕リストに上がった主要政治家や労働界などに対する批判的な発言をしたという。尹大統領は8月初め、大統領官邸でキム前長官とヨ司令官を呼び、政治家と民主労総関連者などに言及し、「現在の司法体系の下ではこういう人らに対してどうすることもできない。非常措置権を使って措置を取らなければならない」と述べた。 今年の国軍の日にも戒厳に関する言及は続いた。10月1日の軍事パレード後、尹大統領はキム前長官やヨ司令官、クァク・チョングン特殊戦司令官、イ・ジヌ首都防衛司令官らを官邸に呼び、手料理でもてなした。そして政治家や新聞・放送界、労働界のいわゆる「左翼勢力」について話しながら、非常大権に触れたという。 -------引用ここまで------- 「政治家や新聞・放送界、労働界のいわゆる「左翼勢力」」とあるが、韓国では比較的、左翼勢力とナショナリズムが結び付いているように見える。その意味では、ナショナリズム対グローバリズムの対立の構図がここにも現れているように考えられる。 NYTの記事には、戒厳令という禁じ手、民主主義の停止を断行しようとした尹政権に対して批判的な視点がないように見える。バイデン政権やアメリカ帝国のグローバリストからすると、戒厳令でもなんでもよいから、尹政権というアメリカ帝国の言うことを聞く政権の下で韓国の政治がまとめられていればよいという認識が伺われる。 グローバリズムからすると、北朝鮮との融和は必要ない、ということなのだろう。緊張を煽り、戦争も辞さないグローバリズム政権として尹政権の悪あがきが今回の韓国政治の混乱の本質ではないか、そんなふうに考えている。
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韓国の左派系紙『ハンギョレ』によると、韓国の政治的混乱は続いている。
-------引用ここから-------
12・3内乱以降の状況を眺めている国民は呆気に取られている。内乱を起こした容疑者は、捜査機関の出頭要請を一方的に無視し「厳然たる現職の大統領」だと開き直っており、内乱の主導者であるキム・ヨンヒョン前国防部長官は、26日に弁護団の記者会見を通じて「今回の戒厳は国会の反憲法的行動に対して警鐘を鳴らすのが目的であり、大統領の適法かつ正当な非常戒厳宣布は内乱になりえない」と述べ、事実上国民を叱りつけている。
-------引用ここまで-------
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/52019.html
「捜査機関の出頭要請を一方的に無視」というのは、なかなかスゴい。「今回の戒厳は国会の反憲法的行動に対して警鐘を鳴らすのが目的」というが、戒厳令は民主主義の“停止“を意味するわけで、「警鐘」云々にハナシをすり替えるのは、正直、ノリが軽すぎるというか、軽薄な印象はいなめない。
「国民は呆気に取られている」というのは、まさにそのとおりではないか。
ハンギョレによると、「「非常大権で国を正常化」…尹大統領、3月から内乱を構想」とのことだが、この「国を正常化」という“切迫感“には、世界情勢の中で韓国政治を見た場合に、違和感がある。世界はトランプ2.0やウクライナ敗北、「西洋の敗北」、BRICSの台頭という激変期に入っている。
今年3月時点で、トランプが再選される可能性は想定の範囲内のはずだ。トランプ再選となれば、グローバリズム勢力の後退は避けられない。トランプ政権に替われば、アメリカ帝国として北朝鮮との融和に転換する可能性があることも想定されたのではないか?となれば、尹政権として北朝鮮融和や利敵行為をする野党を弾圧して、民主主義を停止してまで戒厳令を実行し、「国を正常化」するのは、トランプ政権に背く可能性がある危険な賭けでなかったのか?
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52034.html
また尹大統領が敵視していたのは、民主労総等労働組合だった。
-------引用ここから-------
尹大統領は戒厳発言と共に、戒厳当時の逮捕リストに上がった主要政治家や労働界などに対する批判的な発言をしたという。尹大統領は8月初め、大統領官邸でキム前長官とヨ司令官を呼び、政治家と民主労総関連者などに言及し、「現在の司法体系の下ではこういう人らに対してどうすることもできない。非常措置権を使って措置を取らなければならない」と述べた。
今年の国軍の日にも戒厳に関する言及は続いた。10月1日の軍事パレード後、尹大統領はキム前長官やヨ司令官、クァク・チョングン特殊戦司令官、イ・ジヌ首都防衛司令官らを官邸に呼び、手料理でもてなした。そして政治家や新聞・放送界、労働界のいわゆる「左翼勢力」について話しながら、非常大権に触れたという。
-------引用ここまで-------
「政治家や新聞・放送界、労働界のいわゆる「左翼勢力」」とあるが、韓国では比較的、左翼勢力とナショナリズムが結び付いているように見える。その意味では、ナショナリズム対グローバリズムの対立の構図がここにも現れているように考えられる。
NYTの記事には、戒厳令という禁じ手、民主主義の停止を断行しようとした尹政権に対して批判的な視点がないように見える。バイデン政権やアメリカ帝国のグローバリストからすると、戒厳令でもなんでもよいから、尹政権というアメリカ帝国の言うことを聞く政権の下で韓国の政治がまとめられていればよいという認識が伺われる。
グローバリズムからすると、北朝鮮との融和は必要ない、ということなのだろう。緊張を煽り、戦争も辞さないグローバリズム政権として尹政権の悪あがきが今回の韓国政治の混乱の本質ではないか、そんなふうに考えている。