今回の韓国政治の騒動には、単純に驚いた。といっても、驚愕というより、なにそれ?みたいな不可解が先行する妙なハナシだ、という驚き。 テレビで韓国市民がインタビューに答えて、「朝起きたら、夜のうちに世界が一度変わって、またもとに戻っていたカンジ」みたいなハナシを答えていて、いい得て妙と感心しつつ、思わず吹き出してしまった。 正直、尹大統領はヘン人だな、と。一体何をしたかったのか、意味不明である。立法府と行政府が捻れてしまい、政策が進まなくなることは議会制民主主義では、好ましくはないが、結構あることだ。それを解消するなら、議会を解散し、総選挙に打ってでるしかないだろう。それでもムリなら、野党と妥協するしかない。 捻れ政治を解消するために、戒厳令を宣言する政治家が現れるとは、私の想像をはるかに超える珍事件に見える。 尹大統領は、当たり前だが、数時間で撤回し、後に残ったのは、支持を失い、更にレームダック化した政治生命だろう。 ただ、このことを西側による自称自由民主主義政治の行き詰まりと見るなら、その滑稽な1頁を刻んだように見える。自称自由民主主義なるものは、グローバリズムイデオロギーの隠れ蓑に過ぎないと考えている。今やグローバリズムイデオロギーは、ウクライナでの西側の敗北や、イスラエルの蛮行になす術もない、西側という現実が顕になり、化けの皮が剥がれている。ウクライナでロシアが勝利し、中露主導のBRICSにグローバルサウスが結集することにより、西側覇権即ちグローバリズムは崩壊するだろう。トランプ2.0も、これまでのアメリカ帝国の覇権を放棄する流れに位置付けるべきだと考えている。独仏では既存の中道リベラル政治=親EUのグローバリズム政党が多くの国民から見放されつつある。EU懐疑派或いは国家主権の復権を志向する右派ポピュリズム政党が支持を集めている。 今回の尹大統領の失敗も、グローバリズム勢力としての尹政権の迷走と言えるのではないだろうか?尹大統領は保守系であり、北朝鮮政策では強固派である。北朝鮮は明らかに西側グローバリズムに敵対している。そして、親北朝鮮或いは北朝鮮に融和的な野党は、逆に反グローバリズムと見てよいように考えられる。 というわけで、世界的なグローバリズムの退潮の一環として尹政権のドタバタを見るなら、「西洋の敗北」(エマニュエル・トッド)を印象付けるエピソードの一つに思える。これから、どんどん西側覇権が崩れていくのを眺めるのは愉しみである。
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孫崎享チャンネル
(ID:135017317)
今回の韓国政治の騒動には、単純に驚いた。といっても、驚愕というより、なにそれ?みたいな不可解が先行する妙なハナシだ、という驚き。
テレビで韓国市民がインタビューに答えて、「朝起きたら、夜のうちに世界が一度変わって、またもとに戻っていたカンジ」みたいなハナシを答えていて、いい得て妙と感心しつつ、思わず吹き出してしまった。
正直、尹大統領はヘン人だな、と。一体何をしたかったのか、意味不明である。立法府と行政府が捻れてしまい、政策が進まなくなることは議会制民主主義では、好ましくはないが、結構あることだ。それを解消するなら、議会を解散し、総選挙に打ってでるしかないだろう。それでもムリなら、野党と妥協するしかない。
捻れ政治を解消するために、戒厳令を宣言する政治家が現れるとは、私の想像をはるかに超える珍事件に見える。
尹大統領は、当たり前だが、数時間で撤回し、後に残ったのは、支持を失い、更にレームダック化した政治生命だろう。
ただ、このことを西側による自称自由民主主義政治の行き詰まりと見るなら、その滑稽な1頁を刻んだように見える。自称自由民主主義なるものは、グローバリズムイデオロギーの隠れ蓑に過ぎないと考えている。今やグローバリズムイデオロギーは、ウクライナでの西側の敗北や、イスラエルの蛮行になす術もない、西側という現実が顕になり、化けの皮が剥がれている。ウクライナでロシアが勝利し、中露主導のBRICSにグローバルサウスが結集することにより、西側覇権即ちグローバリズムは崩壊するだろう。トランプ2.0も、これまでのアメリカ帝国の覇権を放棄する流れに位置付けるべきだと考えている。独仏では既存の中道リベラル政治=親EUのグローバリズム政党が多くの国民から見放されつつある。EU懐疑派或いは国家主権の復権を志向する右派ポピュリズム政党が支持を集めている。
今回の尹大統領の失敗も、グローバリズム勢力としての尹政権の迷走と言えるのではないだろうか?尹大統領は保守系であり、北朝鮮政策では強固派である。北朝鮮は明らかに西側グローバリズムに敵対している。そして、親北朝鮮或いは北朝鮮に融和的な野党は、逆に反グローバリズムと見てよいように考えられる。
というわけで、世界的なグローバリズムの退潮の一環として尹政権のドタバタを見るなら、「西洋の敗北」(エマニュエル・トッド)を印象付けるエピソードの一つに思える。これから、どんどん西側覇権が崩れていくのを眺めるのは愉しみである。