中庸左派 のコメント

トランプ2.0の方向性について、オルタナティブメディアの識者の見立ては次のようなカンジである。

「トランプは、米国の上層部を支配する諜報界(深奥国家=DS)を潰すために大統領になった。」(田中宇氏)

「間接的な介入と紛争に特徴づけられた外交政策からの脱却の可能性を示していると指摘する。」(ぺぺ・エスコバル氏)

「ドナルド・トランプは、ニッキー・ヘイリーやマイク・ポンペオのようなトロイの木馬が自分の陣営に侵入しないように、忠実な支持者を厳選している。これは、パックス・アメリカーナに信仰を置く「グローバリスト」を完全に拒絶することを意味する。」(MKバドラクマール氏)
https://www.deccanherald.com/opinion/is-donald-trump-a-neocon-3283855

Moon of Alabamaは次のようにトランプ人事を評した。

-------引用ここから-------

トランプが右翼の狂信者を選ぶのは意外ではない。物事を推し進めるには彼らの支援が必要なのだ。

しかし、トランプ氏がこれらの人物を選んだからといって、彼が彼らの言うことに耳を傾けたり、彼らのアドバイスに従ったりするわけではない。トランプ氏の最初の任期は、彼が選んだ人物が長続きしないことがしばしば示された。したがって、これやあれの愚かな人選に絶望する理由はない。

-------引用ここまで-------

さて、最近『西洋の敗北』(文藝春秋刊)が世界的ベストセラーになったエマニュエル・トッド氏はドイツ紙でのインタビューに対して次のように答えた。

-------引用ここから-------

【Q】大統領選挙後、アメリカの状況は改善すると思いますか?

【A】 いいえ、現在の選挙運動は西側諸国の状況を象徴しています。両候補とも奇怪で想像力に欠け、狂っているとさえ言えます。そして、どちらも米国の衰退を止めることはできません。ドナルド・トランプとカマラ・ハリスが米国大統領になることは、ヨーロッパにとって同様に悪いことです。ところで、西側諸国の力の衰退は、地政学的な問題で特に顕著です。

(中略)

【Q】 西側諸国では、BRICS諸国はしばしば「独裁者のクラブ」と呼ばれます。ドイツのような国は、そのようなパートナーと関わるべきでしょうか?

【A】一方には「善玉」である民主主義者がいて、もう一方には「悪玉」である独裁者がいるという議論を聞くと、笑うしかありません。西側にはもはや自由民主主義は見当たりません。米国は自由主義的な寡頭政治です。寡頭政治であるのは、金銭がシステムをコントロールしているからです。自由主義であるのは、多元主義であり、寡頭政治の指導者が多いからです。フランスでは、ミクロ寡頭政治と部分的に独裁的な国家が混在しています。ドイツでは、民主主義の状況はやや良好です。しかし、問題は、ドイツには外交政策に関して主権がないことです。

https://epicenter.bg/article/Emanyuel-Tod--BRIKS-stana-protivoves-na-zagivashtiya-Zapad--koyto-zagubi-voynata-sreshtu-Rusiya/364626/11/34

「西側にはもはや自由民主主義は見当たりません。」このエマニュエル・トッド氏の洞察を、“トランプ再選で民主主義の危機!“などと頓珍漢なことを言っている日本の左派リベラル系知識人は、先ずはよく噛み締めて、上記『西洋の敗北』を熟読したらよいのではないか、と思う。未だに、アメリカ帝国民主党に自由民主主義を見いだしている御仁は、日本の知識人には多いように見える。だから、世界的潮流からズレるのだ。

トッド氏が言うように、トランプは「奇怪」で、「想像力に欠ける」かもしれない。トランプ人事をみれば、“何だ?ネオコンみたいなタカ派がいるし、ヘッジファンドの代理人、ジョージ・ソロスのお友達もいる。どういうことだ?“という論評も頷ける。

しかし、「西洋の敗北」と、自由民主主義無き寡頭政治の欧米という大前提を受け入れるなら、トランプ政権2.0の歴史的意味は、大きいと考えている。つまり、「西洋の敗北」という大きな潮流の中に、トランプ政権2.0を位置付けるなら、実に理にかなっている。

No.2 4日前

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