>日本で世界で伍していける企業は自動車産業。 確かにそうなのかもしれない。しかし、この失われた何十年かの年月を振り返ると、どこか釈然としない思いがつきまとう。 確かに自動車産業は日本の基幹産業だ。しかし、その経済活動の基幹たる自動車産業、或いは輸出産業は日本人を豊かにしたのか?自動車産業は日本人を幸せにしたのか? 私にはそうは思えない。 自動車産業は”一将功成りて万骨枯る”の典型ではないか、とすら思える。 日本は輸出産業を保護するために円安を追い求め続けている。しかし、円安は庶民にとっては輸入物価上昇の温床であり、経済・産業全体で見ても資源原材料輸入コストを押し上げる。一方で、簡単に価格転嫁して値上げできない場合は、どこかに原価コストの皺寄せがいくだろう。結果、人件費抑制が続き、非正規労働者も増え、賃金は上がらない。デフレスパイラルに陥るという悪循環になった。 今は円安が進みすぎて、輸入物価上昇により、物価高が庶民を苦しめている。 そして、怒りを覚えるのは、自動車輸出や自動車産業の維持拡大のために、しばしば国内農産物の輸入自由化が取引材料になり、自動車輸出と引き換えに犠牲として差し出されて来たことだ。 その結果、国内農業が産業として成り立たなくなり、高齢化した農家も多く、廃業や耕作放棄地は増大し続けている。いまや「世界で最初に飢えるのは日本」とまで言われるような状況に陥っている。それでも、いまだに「「米国に要求された貿易自由化をすればみんなが幸せになれる」「それが安全保障」のような議論をしている。」(東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授・鈴木宣弘氏)そして輸入肥料や輸入種を考慮した実質食料自給率は1割を切っているという。以下、長周新聞主催の鈴木宣弘先生講演会の講演録から。 -------引用ここから------- 日本の食料自給率を計算し直す必要がある。現在の食料自給率は38%ぐらいといっているが、肥料や種の話は入っていない。さらに化学肥料原料の調達ができなければ収量が半分になる。実質自給率はそれだけで22%だ。さらに野菜の種の9割が輸入であることを考慮すれば実質自給率は9・2%だ。おそるべき数字だ。 -------引用ここまで------- ここのところ、米不足は庶民生活を直撃しているが、これまでの農業衰退を放置してきたツケが現実化し、今後ますます深刻化しないか心配している。 https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/31383 この間、トヨタ等輸出関連業種は、過去最高の経常利益を得たというが、なんのことはないドル建て利益を、決算のために円に転換すれば、円安だからより沢山円が手元に残り、経常利益を押し上げただけだ。 で、それで得したのは、ごく一部の輸出産業の従業員だけではないか?つまり、ごく一部のエリート企業の労働貴族だけだろう。 先の鈴木先生の言葉を借りるなら、日本は自動車産業を筆頭にした輸出業種のみで、「今だけ、金だけ、自分だけ」の経済産業構造になっていないか? 人口減少や少子高齢化はこれからも進むだろう。だからこそ、偏った経済でなく、あらゆる産業にバランスよく目配りをする経済の仕組みに転換するべきではないか?自動車産業の衰退を求めているのではなく、農業(漁業、林業も)や食料は国民の安全保障に不可欠であるから、自動車産業同様の保護をするべきだ。
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(ID:119568177)
>日本で世界で伍していける企業は自動車産業。
確かにそうなのかもしれない。しかし、この失われた何十年かの年月を振り返ると、どこか釈然としない思いがつきまとう。
確かに自動車産業は日本の基幹産業だ。しかし、その経済活動の基幹たる自動車産業、或いは輸出産業は日本人を豊かにしたのか?自動車産業は日本人を幸せにしたのか?
私にはそうは思えない。
自動車産業は”一将功成りて万骨枯る”の典型ではないか、とすら思える。
日本は輸出産業を保護するために円安を追い求め続けている。しかし、円安は庶民にとっては輸入物価上昇の温床であり、経済・産業全体で見ても資源原材料輸入コストを押し上げる。一方で、簡単に価格転嫁して値上げできない場合は、どこかに原価コストの皺寄せがいくだろう。結果、人件費抑制が続き、非正規労働者も増え、賃金は上がらない。デフレスパイラルに陥るという悪循環になった。
今は円安が進みすぎて、輸入物価上昇により、物価高が庶民を苦しめている。
そして、怒りを覚えるのは、自動車輸出や自動車産業の維持拡大のために、しばしば国内農産物の輸入自由化が取引材料になり、自動車輸出と引き換えに犠牲として差し出されて来たことだ。
その結果、国内農業が産業として成り立たなくなり、高齢化した農家も多く、廃業や耕作放棄地は増大し続けている。いまや「世界で最初に飢えるのは日本」とまで言われるような状況に陥っている。それでも、いまだに「「米国に要求された貿易自由化をすればみんなが幸せになれる」「それが安全保障」のような議論をしている。」(東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授・鈴木宣弘氏)そして輸入肥料や輸入種を考慮した実質食料自給率は1割を切っているという。以下、長周新聞主催の鈴木宣弘先生講演会の講演録から。
-------引用ここから-------
日本の食料自給率を計算し直す必要がある。現在の食料自給率は38%ぐらいといっているが、肥料や種の話は入っていない。さらに化学肥料原料の調達ができなければ収量が半分になる。実質自給率はそれだけで22%だ。さらに野菜の種の9割が輸入であることを考慮すれば実質自給率は9・2%だ。おそるべき数字だ。
-------引用ここまで-------
ここのところ、米不足は庶民生活を直撃しているが、これまでの農業衰退を放置してきたツケが現実化し、今後ますます深刻化しないか心配している。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/31383
この間、トヨタ等輸出関連業種は、過去最高の経常利益を得たというが、なんのことはないドル建て利益を、決算のために円に転換すれば、円安だからより沢山円が手元に残り、経常利益を押し上げただけだ。
で、それで得したのは、ごく一部の輸出産業の従業員だけではないか?つまり、ごく一部のエリート企業の労働貴族だけだろう。
先の鈴木先生の言葉を借りるなら、日本は自動車産業を筆頭にした輸出業種のみで、「今だけ、金だけ、自分だけ」の経済産業構造になっていないか?
人口減少や少子高齢化はこれからも進むだろう。だからこそ、偏った経済でなく、あらゆる産業にバランスよく目配りをする経済の仕組みに転換するべきではないか?自動車産業の衰退を求めているのではなく、農業(漁業、林業も)や食料は国民の安全保障に不可欠であるから、自動車産業同様の保護をするべきだ。