ウクライナによるロシア・クルスク州への進攻の意義をどのように見るかについては様々な見解がある。その中で、典型的なウクライナ応援団の評価は次のようなものだろう。元陸上自衛隊東部方面総監、渡部悦和氏の論評。 「ウクライナ軍のクルスク奇襲作戦は見事、ただし次の一手が極めて重要に」 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/82822#goog_rewarded この中で、同氏は以下のように主張している。 -------引用ここから------- 勢力的に劣勢に立つウクライナが今後やるべきことは多い。まず初期の奇襲作戦の成果を拡張するために防御への迅速な転移を行うべきだし、兵員の確保は最優先で自ら行わなければいけない。 長距離ドローン等によるロシアの重要インフラの攻撃も徹底的に行うべきだ。 そして、大量の弾薬と兵器を米国等の西側諸国から確実に入手することだ。ゼレンスキー大統領は「米国等は、約束した弾薬や兵器の供与を早く確実に行ってもらいたい」と口を酸っぱくして言っている。 また、ロシア国内で米国等が許与する長射程の兵器を自由に使わせるべきだ。バイデン政権などがウクライナに課しているこの制限は理不尽である。 以上みてきたように、乾坤一擲の作戦を行い、一定の成果を得たウクライナ軍を助け、早くこの戦争を終結させるために、米国等の西側諸国のやるべきことは多い。 -------引用ここまで------- 渡部氏は「乾坤一擲」と書いているが、悪く言うなら、ウクライナによるヤケクソ作戦だろうか? また、同氏が「長距離ドローン等によるロシアの重要インフラの攻撃も徹底的に行うべきだ。」とか、「また、ロシア国内で米国等が許与する長射程の兵器を自由に使わせるべきだ。」とか、日本のような第三国の評論家が、あからさまに戦争のエスカレーションを煽っている点には違和感しかない。 ただ、客観的に言えること、或いは大方の見方は、ウクライナがこれ以上、ロシア領内奥に進攻することはムリだろう、という点。兵員の枯渇や兵站維持のリスクが高すぎる。 だからこそ、渡部氏も、ウクライナ軍に「ロシア側の反撃を予想して、より防御可能な地域に陣地や障害を構築して、防御に転移することだ。」などと勧めている。 以上はウクライナ応援団側の評価。 次に、中立派、現実派(或いは「親露派」?)の評価。 以下はMoon of Alabama、8月28日の記事より。題して、「ドンバス戦線の崩壊」。勿論、ウクライナ軍のドンバス戦線の崩壊のこと。 https://www.moonofalabama.org/2024/08/ukraine-sitrep-collaps-at-the-donbas-front.html#more 著者は次のように書いた。「ウクライナ指導部は、ドンバスの最前線から撤退した精鋭部隊と予備部隊を、ロシア国内のクルスク原子力発電所方面への攻撃に派遣した。ロシア国内に15キロほど入ったところで部隊は足止めされた。彼らは現在守勢に立たされており、徐々に排除されていくだろう。何が起こるか分かっていたであろうロシアに対するこのような作戦は、より大きなものに発展する機会を決して得られなかった。」 ウクライナ軍の「守勢」と、早晩「排除」される運命を予測している。蓋し、現実論。 ウクライナは和平交渉を有利に運ぶため、クルスク州に踏みきったのかもしれないが、効果は見込めないのではないか?次の論評がその点を辛辣に評価している。 https://mises.org/mises-wire/incursion-russia-will-not-solve-ukraines-biggest-problem -------引用ここから------- ウクライナはせいぜい和平交渉に移行するつもりだが、まずはロシアから譲歩を引き出すために使える領土を確保したいのだ。 そうすれば、少なくともウクライナ側が交渉に応じる姿勢を示していることになるが、うまくいく可能性は低いようにも思える。この領土奪取で譲歩を引き出すには、ロシア側が、失った領土を取り戻す最善の方法は武力ではなく交渉であると確信する必要がある。そして現時点では、ロシア側がそれを確信していないのは明らかだ。 現在、ロシア軍はクルスクで失った土地を奪還するために予備軍を動員し、侵攻を支援するウクライナの補給線に壊滅的な攻撃を仕掛けている。また、ロシア軍はウクライナ軍がクルスクに軍を転用したことを利用し、主戦線への攻撃を激化させている。ロシア軍はウクライナ軍の動きに不意を突かれたが、急速に勢いを取り戻しつつある。 したがって、クルスク侵攻の目的が将来の和平交渉におけるウクライナの立場を強化することだったとしたら、ウクライナは再び、待つことで立場が悪化するだけという状況に陥るかもしれない。米国当局は2年前のひどい決定を撤回し、ウクライナがロシアとの和平交渉を最終的に推進するよう促すべきだ。 -------引用ここまで------- どのような立場にせよ、ウクライナ軍劣勢は一致している。それでも、ウクライナガンバレー、マケルナー!というか、もう戦争の悲劇はやめるべきだ、というか?ヒトとして、問われているのはその点だと考えている。
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ウクライナによるロシア・クルスク州への進攻の意義をどのように見るかについては様々な見解がある。その中で、典型的なウクライナ応援団の評価は次のようなものだろう。元陸上自衛隊東部方面総監、渡部悦和氏の論評。
「ウクライナ軍のクルスク奇襲作戦は見事、ただし次の一手が極めて重要に」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/82822#goog_rewarded
この中で、同氏は以下のように主張している。
-------引用ここから-------
勢力的に劣勢に立つウクライナが今後やるべきことは多い。まず初期の奇襲作戦の成果を拡張するために防御への迅速な転移を行うべきだし、兵員の確保は最優先で自ら行わなければいけない。
長距離ドローン等によるロシアの重要インフラの攻撃も徹底的に行うべきだ。
そして、大量の弾薬と兵器を米国等の西側諸国から確実に入手することだ。ゼレンスキー大統領は「米国等は、約束した弾薬や兵器の供与を早く確実に行ってもらいたい」と口を酸っぱくして言っている。
また、ロシア国内で米国等が許与する長射程の兵器を自由に使わせるべきだ。バイデン政権などがウクライナに課しているこの制限は理不尽である。
以上みてきたように、乾坤一擲の作戦を行い、一定の成果を得たウクライナ軍を助け、早くこの戦争を終結させるために、米国等の西側諸国のやるべきことは多い。
-------引用ここまで-------
渡部氏は「乾坤一擲」と書いているが、悪く言うなら、ウクライナによるヤケクソ作戦だろうか?
また、同氏が「長距離ドローン等によるロシアの重要インフラの攻撃も徹底的に行うべきだ。」とか、「また、ロシア国内で米国等が許与する長射程の兵器を自由に使わせるべきだ。」とか、日本のような第三国の評論家が、あからさまに戦争のエスカレーションを煽っている点には違和感しかない。
ただ、客観的に言えること、或いは大方の見方は、ウクライナがこれ以上、ロシア領内奥に進攻することはムリだろう、という点。兵員の枯渇や兵站維持のリスクが高すぎる。
だからこそ、渡部氏も、ウクライナ軍に「ロシア側の反撃を予想して、より防御可能な地域に陣地や障害を構築して、防御に転移することだ。」などと勧めている。
以上はウクライナ応援団側の評価。
次に、中立派、現実派(或いは「親露派」?)の評価。
以下はMoon of Alabama、8月28日の記事より。題して、「ドンバス戦線の崩壊」。勿論、ウクライナ軍のドンバス戦線の崩壊のこと。
https://www.moonofalabama.org/2024/08/ukraine-sitrep-collaps-at-the-donbas-front.html#more
著者は次のように書いた。「ウクライナ指導部は、ドンバスの最前線から撤退した精鋭部隊と予備部隊を、ロシア国内のクルスク原子力発電所方面への攻撃に派遣した。ロシア国内に15キロほど入ったところで部隊は足止めされた。彼らは現在守勢に立たされており、徐々に排除されていくだろう。何が起こるか分かっていたであろうロシアに対するこのような作戦は、より大きなものに発展する機会を決して得られなかった。」
ウクライナ軍の「守勢」と、早晩「排除」される運命を予測している。蓋し、現実論。
ウクライナは和平交渉を有利に運ぶため、クルスク州に踏みきったのかもしれないが、効果は見込めないのではないか?次の論評がその点を辛辣に評価している。
https://mises.org/mises-wire/incursion-russia-will-not-solve-ukraines-biggest-problem
-------引用ここから-------
ウクライナはせいぜい和平交渉に移行するつもりだが、まずはロシアから譲歩を引き出すために使える領土を確保したいのだ。
そうすれば、少なくともウクライナ側が交渉に応じる姿勢を示していることになるが、うまくいく可能性は低いようにも思える。この領土奪取で譲歩を引き出すには、ロシア側が、失った領土を取り戻す最善の方法は武力ではなく交渉であると確信する必要がある。そして現時点では、ロシア側がそれを確信していないのは明らかだ。
現在、ロシア軍はクルスクで失った土地を奪還するために予備軍を動員し、侵攻を支援するウクライナの補給線に壊滅的な攻撃を仕掛けている。また、ロシア軍はウクライナ軍がクルスクに軍を転用したことを利用し、主戦線への攻撃を激化させている。ロシア軍はウクライナ軍の動きに不意を突かれたが、急速に勢いを取り戻しつつある。
したがって、クルスク侵攻の目的が将来の和平交渉におけるウクライナの立場を強化することだったとしたら、ウクライナは再び、待つことで立場が悪化するだけという状況に陥るかもしれない。米国当局は2年前のひどい決定を撤回し、ウクライナがロシアとの和平交渉を最終的に推進するよう促すべきだ。
-------引用ここまで-------
どのような立場にせよ、ウクライナ軍劣勢は一致している。それでも、ウクライナガンバレー、マケルナー!というか、もう戦争の悲劇はやめるべきだ、というか?ヒトとして、問われているのはその点だと考えている。