>米国の最大の同盟国はどこか英国 40.7%、加 19.2%、イスラエル6.1%、仏5.5%。中国 4.2%、日本2.7%、独 1.9%、露 1.9%、豪1.5%、メキシコ0.9%、韓国0.9% 日本よりも、中国のほうが同盟国? アメリカ人はなんだか、トンチンカンだな、と。思考回路が良くわからない連中だな、という素朴な感想を持った。 だから、アメリカ人はダメだ、といいたのではない。どこの国であれ、おそらくB層なんてものは所詮その程度。 だから、一国の所謂「知識層」やオピニオンリーダー、さらには政策決定に関与する政治家や官僚には良識やバランス感覚が必要だと考えている。 簡単にアメリカ帝国を信用しても、従属してもいけないし、日米同盟を絶対視してはいけないのだ。 とすると、問題は日本の言論状況に戻ってくる。その観点から、今日の毎日に、お目出度い且つお寒い日本の言論状況のサンプルのような言説を読んだので紹介したい。 https://mainichi.jp/articles/20230927/ddm/004/070/016000c この記事は、ウクライナでのロシアの特別軍事作戦を題材に、日本の「反戦平和」言説を「識者」に聴いた形式の記事であった。 一人は五野井郁夫・高千穂大教授。もう一人は、加藤直樹というノンフィクション作家の方。 五野井氏はウクライナ問題について、「日本にはあらゆる戦争を拒否する「絶対平和主義」の観点からウクライナの防衛戦争すら否定する知識人がいる。しかし、防衛戦争と侵略戦争の区別もなく全否定するのは、自由で民主的な国際秩序が所与のものと思えた時代の名残にすぎない。」と語っているので、ウクライナ応援団らしい。 五野井氏の論考について、あえて論評はしないが、無批判に「自由で民主的な国際秩序」を維持するという思考様式を前提にした論理は、お目出度いとしか言いようがない。「自由で民主的な国際秩序」などというものは、事実現実としては、これまでもなかったし、これからもないだろう。 ここで私が感想乃至論評を加えたいのは加藤氏のほうである。この方、なんとなくサヨク的、場合によったら元新サヨク?と思わせる経歴に見えるからである。勿論、私の思い違いかもしれないが。 では、以下加藤氏の発言。 「開戦後すぐ、SNS(ネット交流サービス)で左翼や平和運動系の友人たちが何人も、ウクライナがいかに腐敗したひどい国かを言い立てつつ露を擁護し始めた。侵略されている側を批判する姿勢に仰天し怒りを覚えた。」 まず、事実現実を踏まえた議論にはなっていない、と言える。 何故なら、NATOの当方拡大、2014年のマイダンクーデターによる親米親西欧政権樹立のための謀略的工作、ウクライナ東部ドンバス地域等の露系ウクライナ人の虐殺=内戦、ミンスク合意の欺瞞、ウクライナ国内極右民族主義の暴力。 ロシアによる特別軍事作戦を「侵略」と決めつけるなら、今、列記した全てに一定の評価や判断を加えた上で、「認定」すべきである。それらの事実現実に触れない、或いは無視した見解は公正公平ではない。議論に足る水準に達していない。 ハッキリ言うなら、不勉強でいい加減な思い込み論ではないか? 次に「露擁護的なウクライナ批判は、「嫌韓」言説に似ている。」「たとえば、韓国の民主化を褒めながら、一方で民主化運動を支えた彼らの民族主義を嫌悪する人に何度も会った。」との発言。 私は逆に、ウクライナ応援団には、偏向した「嫌露」感情がないか、問いたいくらいである。それはともかくとしても、「民族主義」を嫌悪することは、むしろ良識ではないのか?何故なら、ウクライナは内戦状態であったのだから。即ち、民族解放闘争のハナシではないのである。 「ウクライナ批判の場合、反米という「正義」があるから露骨におとしめても構わないらしい。「ウクライナを非難するほど正しい左翼だ」と思い込んでいる人もいる。」 お目出度いにもほどがある。加藤氏は、アメリカ帝国が世界の警察官として、悪いロシア人からウクライナ人を守っているというストーリーを信じているのだろうか? マイダンクーデターにおける親露政権の転覆工作が証拠である。ウクライナ問題にアメリカ帝国のネオコンや軍産複合体は深く関わっている。それは、プーチンロシアの弱体化という陰謀や謀略、即ちアメリカ帝国覇権主義の世界戦略そのものである。 そのような分析視角を欠く論理は完全な間違いである、と私は断言する。 最近、シーモア・ハーシュ氏がノルドストリーム爆破に関するアメリカ帝国の関与に関して記事を発表した。 https://seymourhersh.substack.com/p/a-year-of-lying-about-nord-stream 「バイデン政権はパイプラインを爆破したが、その行為はウクライナ戦争の勝利や停止とはほとんど関係がなかった。それは、ドイツが動揺してロシア・ガスの供給を再開するのではないか、そして経済的理由からドイツ、そしてNATOがロシアとその豊富で安価な天然資源の影響下に陥るのではないかというホワイトハウスの懸念から生じたものである。そして、アメリカが西ヨーロッパにおける長年の優位性を失うのではないかという究極の恐怖が続いた。」 シーモア・ハーシュ氏はウクライナ問題とノルドストリーム爆破の関係を上記のように書いた。日本のサヨクは、これでも、アメリカ帝国の「正義の戦い」を支持するのか?武器支援をアメリカ帝国が止めないのは、自国の覇権維持のためだとは考えないのか? 結果的にアメリカ帝国の覇権や世界戦略を支持する論理をサヨクがとってよい、という論理展開は、私は全く理解できない。 「そもそも日本の反戦・平和運動の主流は外国に興味がなかったように思う。その中核は、いわば一国護憲主義だった。」 一国護憲主義が悪い? ならば、アメリカ帝国流の軍事介入主義、戦争参加、戦争輸出が正しい、とでも言うのだろうか? 一国護憲主義を否定するなら、沖縄から米軍や自衛隊が出撃することにサヨクは反対するべきではない、というのだろうか?私は沖縄の反基地闘争や辺野古移設問題を考えるなら、一国護憲主義こそが理論的に正しいと考える。 逆にウクライナに対するロシアの侵略と決めつけ、台湾有事において台湾の民主主義を守れ!みたいな浅薄な思考様式では、防衛費増額によりガラクタ武器を買わされ、挙げ句の果に増税までさせられる論理に抗しきれない。 それが今のサヨクのテイタラクの実像である。 ロシアによるウクライナ侵略と決めつけた論理構成からは、停戦和平の論理も防衛増税に抗する論理も構築できなくなるのだ。 我々日本人は、当事国ではないのだから、百歩譲っても、中立の立場から物事を見るべきであった。私自身はウクライナは自業自得だと考えているが。 「これら「帝国の狭間(はざま)」の地域から育ってきた民主主義と進歩の伝統が、大国がつくる力の秩序を変えていくような方向を模索できないか。」 私は、サヨク或いはリベラル勢力の理論的課題の一つは、民主主義を疑うことではないか、と漠然と考えている。
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>米国の最大の同盟国はどこか英国 40.7%、加 19.2%、イスラエル6.1%、仏5.5%。中国 4.2%、日本2.7%、独 1.9%、露 1.9%、豪1.5%、メキシコ0.9%、韓国0.9%
日本よりも、中国のほうが同盟国?
アメリカ人はなんだか、トンチンカンだな、と。思考回路が良くわからない連中だな、という素朴な感想を持った。
だから、アメリカ人はダメだ、といいたのではない。どこの国であれ、おそらくB層なんてものは所詮その程度。
だから、一国の所謂「知識層」やオピニオンリーダー、さらには政策決定に関与する政治家や官僚には良識やバランス感覚が必要だと考えている。
簡単にアメリカ帝国を信用しても、従属してもいけないし、日米同盟を絶対視してはいけないのだ。
とすると、問題は日本の言論状況に戻ってくる。その観点から、今日の毎日に、お目出度い且つお寒い日本の言論状況のサンプルのような言説を読んだので紹介したい。
https://mainichi.jp/articles/20230927/ddm/004/070/016000c
この記事は、ウクライナでのロシアの特別軍事作戦を題材に、日本の「反戦平和」言説を「識者」に聴いた形式の記事であった。
一人は五野井郁夫・高千穂大教授。もう一人は、加藤直樹というノンフィクション作家の方。
五野井氏はウクライナ問題について、「日本にはあらゆる戦争を拒否する「絶対平和主義」の観点からウクライナの防衛戦争すら否定する知識人がいる。しかし、防衛戦争と侵略戦争の区別もなく全否定するのは、自由で民主的な国際秩序が所与のものと思えた時代の名残にすぎない。」と語っているので、ウクライナ応援団らしい。
五野井氏の論考について、あえて論評はしないが、無批判に「自由で民主的な国際秩序」を維持するという思考様式を前提にした論理は、お目出度いとしか言いようがない。「自由で民主的な国際秩序」などというものは、事実現実としては、これまでもなかったし、これからもないだろう。
ここで私が感想乃至論評を加えたいのは加藤氏のほうである。この方、なんとなくサヨク的、場合によったら元新サヨク?と思わせる経歴に見えるからである。勿論、私の思い違いかもしれないが。
では、以下加藤氏の発言。
「開戦後すぐ、SNS(ネット交流サービス)で左翼や平和運動系の友人たちが何人も、ウクライナがいかに腐敗したひどい国かを言い立てつつ露を擁護し始めた。侵略されている側を批判する姿勢に仰天し怒りを覚えた。」
まず、事実現実を踏まえた議論にはなっていない、と言える。
何故なら、NATOの当方拡大、2014年のマイダンクーデターによる親米親西欧政権樹立のための謀略的工作、ウクライナ東部ドンバス地域等の露系ウクライナ人の虐殺=内戦、ミンスク合意の欺瞞、ウクライナ国内極右民族主義の暴力。
ロシアによる特別軍事作戦を「侵略」と決めつけるなら、今、列記した全てに一定の評価や判断を加えた上で、「認定」すべきである。それらの事実現実に触れない、或いは無視した見解は公正公平ではない。議論に足る水準に達していない。
ハッキリ言うなら、不勉強でいい加減な思い込み論ではないか?
次に「露擁護的なウクライナ批判は、「嫌韓」言説に似ている。」「たとえば、韓国の民主化を褒めながら、一方で民主化運動を支えた彼らの民族主義を嫌悪する人に何度も会った。」との発言。
私は逆に、ウクライナ応援団には、偏向した「嫌露」感情がないか、問いたいくらいである。それはともかくとしても、「民族主義」を嫌悪することは、むしろ良識ではないのか?何故なら、ウクライナは内戦状態であったのだから。即ち、民族解放闘争のハナシではないのである。
「ウクライナ批判の場合、反米という「正義」があるから露骨におとしめても構わないらしい。「ウクライナを非難するほど正しい左翼だ」と思い込んでいる人もいる。」
お目出度いにもほどがある。加藤氏は、アメリカ帝国が世界の警察官として、悪いロシア人からウクライナ人を守っているというストーリーを信じているのだろうか?
マイダンクーデターにおける親露政権の転覆工作が証拠である。ウクライナ問題にアメリカ帝国のネオコンや軍産複合体は深く関わっている。それは、プーチンロシアの弱体化という陰謀や謀略、即ちアメリカ帝国覇権主義の世界戦略そのものである。
そのような分析視角を欠く論理は完全な間違いである、と私は断言する。
最近、シーモア・ハーシュ氏がノルドストリーム爆破に関するアメリカ帝国の関与に関して記事を発表した。
https://seymourhersh.substack.com/p/a-year-of-lying-about-nord-stream
「バイデン政権はパイプラインを爆破したが、その行為はウクライナ戦争の勝利や停止とはほとんど関係がなかった。それは、ドイツが動揺してロシア・ガスの供給を再開するのではないか、そして経済的理由からドイツ、そしてNATOがロシアとその豊富で安価な天然資源の影響下に陥るのではないかというホワイトハウスの懸念から生じたものである。そして、アメリカが西ヨーロッパにおける長年の優位性を失うのではないかという究極の恐怖が続いた。」
シーモア・ハーシュ氏はウクライナ問題とノルドストリーム爆破の関係を上記のように書いた。日本のサヨクは、これでも、アメリカ帝国の「正義の戦い」を支持するのか?武器支援をアメリカ帝国が止めないのは、自国の覇権維持のためだとは考えないのか?
結果的にアメリカ帝国の覇権や世界戦略を支持する論理をサヨクがとってよい、という論理展開は、私は全く理解できない。
「そもそも日本の反戦・平和運動の主流は外国に興味がなかったように思う。その中核は、いわば一国護憲主義だった。」
一国護憲主義が悪い?
ならば、アメリカ帝国流の軍事介入主義、戦争参加、戦争輸出が正しい、とでも言うのだろうか?
一国護憲主義を否定するなら、沖縄から米軍や自衛隊が出撃することにサヨクは反対するべきではない、というのだろうか?私は沖縄の反基地闘争や辺野古移設問題を考えるなら、一国護憲主義こそが理論的に正しいと考える。
逆にウクライナに対するロシアの侵略と決めつけ、台湾有事において台湾の民主主義を守れ!みたいな浅薄な思考様式では、防衛費増額によりガラクタ武器を買わされ、挙げ句の果に増税までさせられる論理に抗しきれない。
それが今のサヨクのテイタラクの実像である。
ロシアによるウクライナ侵略と決めつけた論理構成からは、停戦和平の論理も防衛増税に抗する論理も構築できなくなるのだ。
我々日本人は、当事国ではないのだから、百歩譲っても、中立の立場から物事を見るべきであった。私自身はウクライナは自業自得だと考えているが。
「これら「帝国の狭間(はざま)」の地域から育ってきた民主主義と進歩の伝統が、大国がつくる力の秩序を変えていくような方向を模索できないか。」
私は、サヨク或いはリベラル勢力の理論的課題の一つは、民主主義を疑うことではないか、と漠然と考えている。