中庸左派 のコメント

 一つ言えることは、権力がメディアを掌握する、或いは権力とメディアが癒着すると、権力の横暴や暴走は可能になる、ということだ。

 権力が、法又は公正公平又は「正義」をいかようにも捻じ曲げることが出来る社会を民主主義とは呼ばない。

 その意味では、最高裁長官とアメリカ帝国外交官が判決をめぐり癒着していた砂川事件裁判のその昔から、日本は民主主義では無かった。

 これは三権分立の歪みという意味で統治機構の腐敗堕落であった。

 近年は主流権威筋メディアと権力の癒着或いは忖度による政権の腐敗堕落が加わり、日本は民主主義でも何でも無い衆愚政治に陥っている。

 木原氏の事案は、権力者、政治家はいかようにも自己の都合のために法を捻じ曲げることが出来るという不正義を白日の下に晒した、極めて深刻な非民主的事態である。

 政治家や官僚が保身のために殺人事件を無かった事にするなど、公正公平な民主社会では起こってよいはずがない。

 しかも、何故このような不正義、腐敗堕落が起こっているかと言えば、単純極まりない理由である。

 それは、テレビ・新聞が報じないからである。もっと言うなら、ワイドショーや夕方や夜のニュースショーが報じないからである。

 単純にこれだけで衆愚政治化し、権力からすれば、大衆コントロールは可能なのである。この危機的状況の要因には、勿論、情報の受け手の劣化、即ちB層の圧倒的増大という問題もある。

 B層は、調べない、考えない、なんでも鵜呑みにする層であり、情報の一方的受け手でしかない。また、主流権威筋メディアが情報を隠蔽すれば、即ちワイドショーやニュースショーが報じなければ、B層には何も問題として発生しない。ノープロブレムなのである。

 権力が主流権威筋メディアと一体化して、特定情報を繰り返しワイドショーやニュースショーを通じて、B層に向けて垂れ流せば、圧倒的多数のB層は簡単にコントロールできる。

 これを権力と主流権威筋メディアに焦点を絞り、一言で言うなら「大本営発表」である。一方、B層を焦点にして言うなら、「衆愚政治」である。

 要するに、今の日本は民主主義でも何でもなく、「大本営発表」により統制された「衆愚政治」である。

 B層は呑気なゆでガエルである。だから、日本は民主主義だよね~みたいなユメを見ている。「自覚症状」もないし、自らを客観視する能力もないから、日本の衆愚政治は永遠に終わらない。

 前にも取り上げたが、ウクライナ戦争継続を煽る小泉悠の言説は、丁度よいサンプルである。

 小泉はこんな発言を毎日のインタビュー記事においてしている。

「日本は問題だらけの国ですが、それでも60点はあげられます。中露や北朝鮮などの権威主義国よりは、ずっとマシです。いくら岸田文雄首相を批判しても政府に殺されず、いくら経済が悪くても多くの人が一応は暮らせています。決して満点ではなく、とてもいびつですが、戦後70年以上かけて私たちが築いたこの社会を、誇りを持って守る。これが、私の考える安全保障です。」

https://mainichi.jp/articles/20230804/ddm/004/070/012000c

 日本は60点、だそうだ。大本営発表が覆い尽くす衆愚政治国家でも、中露、北朝鮮よりマシというその自信はどこから来るのか?

 「いくら経済が悪くても多くの人が一応は暮らせてい」るから及第点なら、日本は中露北朝鮮と何も違わない。日本はマシだのなんだの、自画自賛する根拠もないではないか。

 私は西側の主流権威筋メディアを信用していないから、海外出羽守になりたいわけではないが、フランス人から「日本の民主主義は絶滅寸前」とこき下ろされている理由を客観的に分析できるかどうかは大事だ。

https://toyokeizai.net/articles/-/213722?display=b

 小泉悠は、日本は「60点」とか言いながら、その意図は、中露北朝鮮よりは「マシ」みたいな自己肯定感に置かれているだけだろう。小泉は40代前半だから、次代の社会的な牽引層になるはずだ。今後、彼らのへんな自己肯定感が蔓延するかもしれない。

 日本の次世代として、自画自賛論を真に受けたB層ばかりの国家は衰退の一途だろう。

 まさに日本はゆでガエルだ。

 さすがに小泉らの言説に危うさを感じたのか、同じ毎日に後追いでこんな記事があった。

https://mainichi.jp/articles/20230816/k00/00m/040/283000c

「小田は「人間みなチョボチョボや」が持論だった。人間は本来、対等で自由な存在といった意味だ。小泉さんたちは、軍事的な安全保障がチョボチョボな日本を守るためにこそ必要だと思う。しかし、軍事はしばしばチョボチョボと矛盾する。ではどうすべきか、立ち止まって考える。ここに、小田の精神は「歯止め」として生きている気もする。」

 小田というのは、小田実のことである。私は高校時代に小田実の著作を読み、その反戦思想に触れ、影響を受けた。

 その目線でいうなら、次代を担う30代〜40代が小泉悠の言説に簡単に感化されてしまうのではないか、と心配している。

No.7 13ヶ月前

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