私がこのアメリカ帝国国債格付けの格下げに関して、問題だというか、違和感を禁じ得ないことは、日本の主流権威筋メディアのトンチンカンな書きぶりである。 トンチンカンというのは、①ドルの基軸通貨性の動揺や、②中露他非米側によるドル崩壊に向けた、意図的な取り組みを一切報じないこと、である。 これは、2008年のリーマンショック時には見られなかった世界の歴史を画する潮流だと考えているが、そのこととの関連で、アメリカ帝国国債の格下げを分析しないメディアは、役割放棄又は存在意義無しという他ない。 日本の主流権威筋メディアは、歴史の大きな流れ、新たな潮流を読み取る能力を欠き、永遠のパックスアメリカーナのファンタジーの中で、ユメを見続けているのではないか? しかし、永遠に続く「体制」はない。江戸幕府しかり、大日本帝国しかり、近代の西欧覇権しかり、ソ連邦崩壊しかり。 全て歴史の事実現実ではないか。 にも関わらず、以下、アメリカ帝国の議会が債務上限期限延長を決定した後の毎日社説(6月6日)である。「米国債のデフォルト回避 信頼損ねた内向きの政治」として、「世界の安定は超大国の責務だ。国内問題に足を取られていては役割を果たせない。立場を自覚し、混乱を繰り返してはならない。」 強いリーダーシップあるアメリカへの期待で締め括られている。 https://mainichi.jp/articles/20230606/ddm/005/070/086000c だが、事実現実を見るなら、そもそもウクライナでの代理戦争において約7兆円もの巨額の戦費を支援しながら、敗北が確定している。しかも、砲弾等武器支援も枯渇している。ウクライナ支援の一貫としてのロシアへの経済制裁は、西側経済にインフレと不況という副作用をもたらしただけ。 ロシアに対する過激な経済制裁を見て、非米側は安定した貿易決済手段としてドルへの信認を低下させている。 中露は中東での影響力を高め、中東の盟主サウジアラビアは原油増産に関してアメリカ帝国の言う事を聞かずに、原油取引でのドル決済は人民元決済の増加により、一層低下するだろう。 世界の趨勢としては、アメリカ帝国の覇権低下を横目に、BRICS、SCOといった新興大国による新たな政治経済的枠組みが、世界の多極化を加速させている。 その動きの中心は、ドル覇権崩壊に照準を絞った新たな基軸通貨や決済システムの創造である。 少なくとも、この間の事実現実はアメリカ帝国の覇権低下に繋がるものである。勿論、ヒトにより事実現実の評価は異なろう。過大評価や過小評価もありうる。 だが、事実現実を無視するのは論外だ。 事実現実の確固たる文脈の中に、アメリカ帝国国債の格下げを位置づけて分析することは、最低限の作法である。 アメリカ帝国の国債格下げは、単なるアメリカ帝国の内向き志向のみで生起した現象ではない。 総じて、アメリカ帝国の覇権低下という文脈の中で、起こるべくして起こった現象であると、私は考えている。 >中国は密かに準備金を金に移しつつある。ロシア型の制裁により資産が遮断されるのではないかとの警戒感が強まり、他の企業もドルエクスポージャーを再検討するようになった。 >より一般的には、外交政策当局による経済・金融制裁への過度の依存と進行中の地経学的断片化が、ドル中心の世界通貨秩序の存続可能性を実際に脅かしている。 本文、A-2の筆者が言う分析は当然であろう。何故なら、事実現実なのだから。 しかし、上記のような分析を日本の主流権威筋メディアは全く語らない。それどころか、「米国には、世界経済を安定させる責務がある。国際社会全体の利益を考慮して、政策を実行していかなければならない。」(毎日社説、8月8日)等と言っている。 https://mainichi.jp/articles/20230808/ddm/005/070/065000c 度し難いアメリカ帝国崇拝ではないか。 アメリカ帝国が世界経済を安定化させるには、すぐにウクライナでの代理戦争を止めるべきだ。また、財政赤字、財政破綻の原因であるドルの基軸通貨性をよいことにした無尽蔵なドル印刷と放漫財政政策を止めるべきだ。 アメリカ帝国のドル支配即ち基軸通貨性は、他国にアメリカ帝国の財政破綻のツケを廻すモラルハザード経済ではないか。 問われるべきはそこである。それを言わない日本の主流権威筋メディアは、事実を隠蔽し読者を騙す腐敗堕落した存在でしかない。
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孫崎享チャンネル
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私がこのアメリカ帝国国債格付けの格下げに関して、問題だというか、違和感を禁じ得ないことは、日本の主流権威筋メディアのトンチンカンな書きぶりである。
トンチンカンというのは、①ドルの基軸通貨性の動揺や、②中露他非米側によるドル崩壊に向けた、意図的な取り組みを一切報じないこと、である。
これは、2008年のリーマンショック時には見られなかった世界の歴史を画する潮流だと考えているが、そのこととの関連で、アメリカ帝国国債の格下げを分析しないメディアは、役割放棄又は存在意義無しという他ない。
日本の主流権威筋メディアは、歴史の大きな流れ、新たな潮流を読み取る能力を欠き、永遠のパックスアメリカーナのファンタジーの中で、ユメを見続けているのではないか?
しかし、永遠に続く「体制」はない。江戸幕府しかり、大日本帝国しかり、近代の西欧覇権しかり、ソ連邦崩壊しかり。
全て歴史の事実現実ではないか。
にも関わらず、以下、アメリカ帝国の議会が債務上限期限延長を決定した後の毎日社説(6月6日)である。「米国債のデフォルト回避 信頼損ねた内向きの政治」として、「世界の安定は超大国の責務だ。国内問題に足を取られていては役割を果たせない。立場を自覚し、混乱を繰り返してはならない。」
強いリーダーシップあるアメリカへの期待で締め括られている。
https://mainichi.jp/articles/20230606/ddm/005/070/086000c
だが、事実現実を見るなら、そもそもウクライナでの代理戦争において約7兆円もの巨額の戦費を支援しながら、敗北が確定している。しかも、砲弾等武器支援も枯渇している。ウクライナ支援の一貫としてのロシアへの経済制裁は、西側経済にインフレと不況という副作用をもたらしただけ。
ロシアに対する過激な経済制裁を見て、非米側は安定した貿易決済手段としてドルへの信認を低下させている。
中露は中東での影響力を高め、中東の盟主サウジアラビアは原油増産に関してアメリカ帝国の言う事を聞かずに、原油取引でのドル決済は人民元決済の増加により、一層低下するだろう。
世界の趨勢としては、アメリカ帝国の覇権低下を横目に、BRICS、SCOといった新興大国による新たな政治経済的枠組みが、世界の多極化を加速させている。
その動きの中心は、ドル覇権崩壊に照準を絞った新たな基軸通貨や決済システムの創造である。
少なくとも、この間の事実現実はアメリカ帝国の覇権低下に繋がるものである。勿論、ヒトにより事実現実の評価は異なろう。過大評価や過小評価もありうる。
だが、事実現実を無視するのは論外だ。
事実現実の確固たる文脈の中に、アメリカ帝国国債の格下げを位置づけて分析することは、最低限の作法である。
アメリカ帝国の国債格下げは、単なるアメリカ帝国の内向き志向のみで生起した現象ではない。
総じて、アメリカ帝国の覇権低下という文脈の中で、起こるべくして起こった現象であると、私は考えている。
>中国は密かに準備金を金に移しつつある。ロシア型の制裁により資産が遮断されるのではないかとの警戒感が強まり、他の企業もドルエクスポージャーを再検討するようになった。
>より一般的には、外交政策当局による経済・金融制裁への過度の依存と進行中の地経学的断片化が、ドル中心の世界通貨秩序の存続可能性を実際に脅かしている。
本文、A-2の筆者が言う分析は当然であろう。何故なら、事実現実なのだから。
しかし、上記のような分析を日本の主流権威筋メディアは全く語らない。それどころか、「米国には、世界経済を安定させる責務がある。国際社会全体の利益を考慮して、政策を実行していかなければならない。」(毎日社説、8月8日)等と言っている。
https://mainichi.jp/articles/20230808/ddm/005/070/065000c
度し難いアメリカ帝国崇拝ではないか。
アメリカ帝国が世界経済を安定化させるには、すぐにウクライナでの代理戦争を止めるべきだ。また、財政赤字、財政破綻の原因であるドルの基軸通貨性をよいことにした無尽蔵なドル印刷と放漫財政政策を止めるべきだ。
アメリカ帝国のドル支配即ち基軸通貨性は、他国にアメリカ帝国の財政破綻のツケを廻すモラルハザード経済ではないか。
問われるべきはそこである。それを言わない日本の主流権威筋メディアは、事実を隠蔽し読者を騙す腐敗堕落した存在でしかない。