RT 29 Jan, 2023 ペンタゴンお気に入りのシンクタンクがウクライナ紛争の早期終結を求める中、ワシントンの雰囲気は変わりつつあるのだろうか? https://www.rt.com/news/570618-rand-came-up-with-solution/ ランド・コーポレーションは、戦闘を早急に終わらせるべきだと考えている- フェリックス・リヴシッツ記 ペンタゴンから直接資金提供を受けている、非常に影響力のあるエリート国家安全保障シンクタンク、ランド研究所は、代理戦争を長引かせることは米国とその同盟国に殊更に損害を与えると述べ、ウクライナでの「紛争の長期化」を避けるべきとワシントンに警告する画期的な報告書を発表した。 ■ウクライナにおける米国の利益とは 報告書の「長期戦の回避:米国の政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡」という明快なタイトルが、その内容を端的に示している。 この紛争は「ここ数十年で最も重要な国家間紛争であり、その進展はワシントンにとって大きな影響を及ぼす」とし、その中には米国の「利益」が殊更に損なわれることも含まれている、と述べることから始まる。この報告書は、ウクライナ人が戦闘を行い、彼らの都市が「壊滅」し、「経済が衰退」しているが、これらはキエフの「利益」から程遠いことを明確にしている。 米国が財政的、人道的、特に軍事的支援を速やかに打ち切れば、ウクライナは完全に崩壊する。ランド研究所は、そうすることが賢明である理由をいくつか挙げているが、特にロシアの「決意」によって、ウクライナの勝利は「ありえない」「疑わしい」と見做されており、ロシアの軍事動員は「ウクライナがハリコフの反攻で成功した原因となったロシアのマンパワー不足を是正」したとされている。 米国の「利益」の観点から、ランド研究所は、クレムリンは核兵器を使用すると脅してはいないものの、「ロシアの核兵器使用は、ワシントンが考慮すべき起り得る不測の事態であると同時に、紛争の将来の軌道を決定する上で非常に重要な要因となるいくつかの問題がある」と警告している。 ■米国にとってのリスクは何か このシンクタンクは、バイデン政権が「ロシアの核兵器使用の防止を最優先させる十分な理由がある」と考えている。特に、モスクワとの「直接的な核攻撃の応酬」、「ロシアとの直接的な衝突」、あるいは「NATOとロシアの戦争」の拡大を回避することを目指すべきだとしている。 後者についてランドは、マーク・ミリー米大将の「紛争はウクライナの地理的境界の中で」という要求が軽んじられる寸前だと懸念している。「数百億ドル相当の武器やその他の援助」「戦術的情報、監視、偵察支援」、さらに「キエフへの毎月数億ドルの直接予算支援」など、NATO同盟国の戦争への間接関与は息を飲むほど広範囲であるからである。 このような大盤振る舞いは、クレムリンが国家の安全を「著しく脅かす」と判断した場合、モスクワに「ウクライナに対する同盟国の支援を終了させる目的でNATO加盟国を罰すること、NATOのウクライナ介入が差し迫っているとロシアが認識した場合にNATOを先制攻撃すること、ウクライナへの武器輸送を阻止すること、ロシア国内に混乱を惹起しようとするNATOに対して報復すること」を促すとランド研究所は予測する。 これらの結果は「決して避けられないものではない」が、特に2022年11月にウクライナの防空ミサイルがポーランド領を攻撃したような事件-ウラジーミル・ゼレンスキー大統領がロシアの故意の攻撃だと誤認したことによって状況が悪化した-を考慮すれば、依然として「高まった」リスクを示している。この出来事は、「制御不能に陥ることはなかったが、戦闘が意図せずして近隣の米国同盟国の領土に波及する可能性があることを示した」のである。 このような事件がまた起これば、「米軍は世界最大の核兵器を持つ国との熱い戦争に直ちに巻き込まれることになる」。これは、NATOとロシア間の通常型紛争と同様に、ワシントンが何としても避けるべき事態であるとランド研究所は主張している。 その主な理由は、ランド研究所が指摘するように、欧米の支援者によるウクライナへの「軍事支援の強度」がすでに「持続不可能」なレベルに近づいており、米国と欧州の兵器在庫が「不足している」ためである。その結果、戦争が長引き、ウクライナの領土がより多くロシアに再統一されることを意味する。 ■解決策はあるのだろうか 領土の損失については、ランド研究所は、ウクライナが2014年以降に失ったものをすべて奪還しようとするべきだという議論には動じない。「領土支配の拡大は、経済的繁栄や安全の向上と直接の相関はない」からである。9月以降キエフによって奪還された土地は、「ロシアが、全体としてのウクライナに対して はるかに大きな経済コストを課している」ことを意味する。 またランド研究所は、「国際規範を強化し、ウクライナの将来の経済成長を促すために」「ウクライナの領土支配を拡大する」べきだという主張の価値も検討し、キエフが「2022年2月以前の支配ラインを超え、ロシアが2014年から占領している地域を奪還できた」場合でさえ、「核使用やNATOへの攻撃」など、モスクワからのエスカレーションのリスクは「急上昇」すると考えている。 「クレムリンはクリミアの喪失の可能性を、国家安全保障と体制安定の両方に対するより重大な脅威として扱うだろう」と報告書は警告している。 これらの要因から、ランド研究所は、「長期戦を避けることが、エスカレーションのリスクを最小化した後の最優先事項」であり、米国は、紛争が始まる前にモスクワが要求したが聞き入れられなかった「国の中立性に関する保証の発行」や「ロシアへの制裁緩和」など、「中期的に紛争終結をより可能にする措置を取る」よう勧告している。 しかし、報告書は、「米国の政策を一夜にして劇的に変える」ことは「国内でも同盟国でも政治的に不可能」であると警告し、その代わりに、戦争を「交渉によって終わらせる」ための「手段」を探り、長期戦による打撃を軽減するために米国が「ウクライナや米国の同盟国と協調」することを予め推奨している。しかし、このプロセスは迅速に開始されるべきである。なぜなら、「代替案は、米国、ウクライナ、およびその他の国々に大きな課題を突きつける長い戦いになる」からである。 *** この提案が無視しているのは、ロシアとの間で署名・仲介した条約を尊重・遵守することに関し、西側諸国の指導者たちは自分達が信用に値しないことを一貫して証明してきたことだ。例えば、ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が、実行するつもりはなく、むしろキエフの時間稼ぎのために合意したミンスク協定がそうである。 そうなると、モスクワはランドの解決策には全く興味を示さず、代わりに自分たちの条件で戦争を終わらせることを選択するかもしれない。
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RT 29 Jan, 2023
ペンタゴンお気に入りのシンクタンクがウクライナ紛争の早期終結を求める中、ワシントンの雰囲気は変わりつつあるのだろうか?
https://www.rt.com/news/570618-rand-came-up-with-solution/
ランド・コーポレーションは、戦闘を早急に終わらせるべきだと考えている-
フェリックス・リヴシッツ記
ペンタゴンから直接資金提供を受けている、非常に影響力のあるエリート国家安全保障シンクタンク、ランド研究所は、代理戦争を長引かせることは米国とその同盟国に殊更に損害を与えると述べ、ウクライナでの「紛争の長期化」を避けるべきとワシントンに警告する画期的な報告書を発表した。
■ウクライナにおける米国の利益とは
報告書の「長期戦の回避:米国の政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡」という明快なタイトルが、その内容を端的に示している。
この紛争は「ここ数十年で最も重要な国家間紛争であり、その進展はワシントンにとって大きな影響を及ぼす」とし、その中には米国の「利益」が殊更に損なわれることも含まれている、と述べることから始まる。この報告書は、ウクライナ人が戦闘を行い、彼らの都市が「壊滅」し、「経済が衰退」しているが、これらはキエフの「利益」から程遠いことを明確にしている。
米国が財政的、人道的、特に軍事的支援を速やかに打ち切れば、ウクライナは完全に崩壊する。ランド研究所は、そうすることが賢明である理由をいくつか挙げているが、特にロシアの「決意」によって、ウクライナの勝利は「ありえない」「疑わしい」と見做されており、ロシアの軍事動員は「ウクライナがハリコフの反攻で成功した原因となったロシアのマンパワー不足を是正」したとされている。
米国の「利益」の観点から、ランド研究所は、クレムリンは核兵器を使用すると脅してはいないものの、「ロシアの核兵器使用は、ワシントンが考慮すべき起り得る不測の事態であると同時に、紛争の将来の軌道を決定する上で非常に重要な要因となるいくつかの問題がある」と警告している。
■米国にとってのリスクは何か
このシンクタンクは、バイデン政権が「ロシアの核兵器使用の防止を最優先させる十分な理由がある」と考えている。特に、モスクワとの「直接的な核攻撃の応酬」、「ロシアとの直接的な衝突」、あるいは「NATOとロシアの戦争」の拡大を回避することを目指すべきだとしている。
後者についてランドは、マーク・ミリー米大将の「紛争はウクライナの地理的境界の中で」という要求が軽んじられる寸前だと懸念している。「数百億ドル相当の武器やその他の援助」「戦術的情報、監視、偵察支援」、さらに「キエフへの毎月数億ドルの直接予算支援」など、NATO同盟国の戦争への間接関与は息を飲むほど広範囲であるからである。
このような大盤振る舞いは、クレムリンが国家の安全を「著しく脅かす」と判断した場合、モスクワに「ウクライナに対する同盟国の支援を終了させる目的でNATO加盟国を罰すること、NATOのウクライナ介入が差し迫っているとロシアが認識した場合にNATOを先制攻撃すること、ウクライナへの武器輸送を阻止すること、ロシア国内に混乱を惹起しようとするNATOに対して報復すること」を促すとランド研究所は予測する。
これらの結果は「決して避けられないものではない」が、特に2022年11月にウクライナの防空ミサイルがポーランド領を攻撃したような事件-ウラジーミル・ゼレンスキー大統領がロシアの故意の攻撃だと誤認したことによって状況が悪化した-を考慮すれば、依然として「高まった」リスクを示している。この出来事は、「制御不能に陥ることはなかったが、戦闘が意図せずして近隣の米国同盟国の領土に波及する可能性があることを示した」のである。
このような事件がまた起これば、「米軍は世界最大の核兵器を持つ国との熱い戦争に直ちに巻き込まれることになる」。これは、NATOとロシア間の通常型紛争と同様に、ワシントンが何としても避けるべき事態であるとランド研究所は主張している。
その主な理由は、ランド研究所が指摘するように、欧米の支援者によるウクライナへの「軍事支援の強度」がすでに「持続不可能」なレベルに近づいており、米国と欧州の兵器在庫が「不足している」ためである。その結果、戦争が長引き、ウクライナの領土がより多くロシアに再統一されることを意味する。
■解決策はあるのだろうか
領土の損失については、ランド研究所は、ウクライナが2014年以降に失ったものをすべて奪還しようとするべきだという議論には動じない。「領土支配の拡大は、経済的繁栄や安全の向上と直接の相関はない」からである。9月以降キエフによって奪還された土地は、「ロシアが、全体としてのウクライナに対して はるかに大きな経済コストを課している」ことを意味する。
またランド研究所は、「国際規範を強化し、ウクライナの将来の経済成長を促すために」「ウクライナの領土支配を拡大する」べきだという主張の価値も検討し、キエフが「2022年2月以前の支配ラインを超え、ロシアが2014年から占領している地域を奪還できた」場合でさえ、「核使用やNATOへの攻撃」など、モスクワからのエスカレーションのリスクは「急上昇」すると考えている。
「クレムリンはクリミアの喪失の可能性を、国家安全保障と体制安定の両方に対するより重大な脅威として扱うだろう」と報告書は警告している。
これらの要因から、ランド研究所は、「長期戦を避けることが、エスカレーションのリスクを最小化した後の最優先事項」であり、米国は、紛争が始まる前にモスクワが要求したが聞き入れられなかった「国の中立性に関する保証の発行」や「ロシアへの制裁緩和」など、「中期的に紛争終結をより可能にする措置を取る」よう勧告している。
しかし、報告書は、「米国の政策を一夜にして劇的に変える」ことは「国内でも同盟国でも政治的に不可能」であると警告し、その代わりに、戦争を「交渉によって終わらせる」ための「手段」を探り、長期戦による打撃を軽減するために米国が「ウクライナや米国の同盟国と協調」することを予め推奨している。しかし、このプロセスは迅速に開始されるべきである。なぜなら、「代替案は、米国、ウクライナ、およびその他の国々に大きな課題を突きつける長い戦いになる」からである。
***
この提案が無視しているのは、ロシアとの間で署名・仲介した条約を尊重・遵守することに関し、西側諸国の指導者たちは自分達が信用に値しないことを一貫して証明してきたことだ。例えば、ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が、実行するつもりはなく、むしろキエフの時間稼ぎのために合意したミンスク協定がそうである。
そうなると、モスクワはランドの解決策には全く興味を示さず、代わりに自分たちの条件で戦争を終わらせることを選択するかもしれない。