人と人の接触の機会が増えれば、普通感冒やインフルエンザと同じように、このウイルスに感染する人の数が増えるのは基本的に避けられない。感染発症してしまえば、抗ウイルス剤、良いワクチン、治療法の開発など、そして最終的には数年たてばおきるといわれているウイルスの弱毒化に期待するしかないが、これらがいつどうなるかを確実に見通せるひとはいない。一方、予防の原則は明らかで、ウイルスと接触しないことだが、それを徹底的にやるのは難しいことは、何種類かあるいわゆる普通感冒のウイルスやインフルエンザウイルスに100%接触しないことが難しいのと同じだ。 各国様々にとりくんでいるが、わたしは中国のデータは言うとおりには信じていない(※)。しかし、中国が一定程度は成功しているのだとしたら、それは、徹底的な国民監視と行動制御のおかげだ。だれがいつどこにいたかということがすべて当局に筒抜けになっている。こうした中国のおこなっている徹底的な国民監視と行動制御を日本で可能とはとてもおもえない。この点について、中国を称賛するヒトビトが正面から答えたところを見たことがない。かれらは、全員に検査すれば撲滅できるんじゃないの?とくりかえしているだけだ。実際は、徹底的な国民監視と行動制御こそが効いているのだ。 日本の現在の事態をどうすべきか。人々の接触を今よりも抑制する措置をとれば、チャイナ肺炎の新規感染者は減るだろう。もともとわたしは、7月にはじまったGOTOキャンペーンには懐疑的であり、冬がはじまる前に、国内の患者数を極小化すべきだという論者であり、そうしたことをここに書いたこともある。わたし自身はいまこそ、その路線に転換すべきだと考えている。 しかしその一方で、人々の接触を今よりも抑制する措置をとれば自殺者は(今でも昨年より増えているらしいが)増えるかもしれない。飲食業などの倒産は増え、失業はいっそう深刻な問題になるかもしれない。そのために莫大な財政支出をすれば、のちのちそれが問題をひきおこすであろう。感染者数は増加しても、さいわい、致死率、重症化率は、欧州でも第一波のときほどではない点をみれば、GOTOキャンペーンはギリギリまで維持するという考えも一理あるとおもう。 政府の舵取りはむずかしいことが明らかで、自分の意見が正しいと言い張るつもりはない。なんにせよ、「死者数の爆発的増加につながる医療崩壊は防ぐ」という点ではほとんどの人が一致しており、甘めに対応するか苦めに対応するかの違いということであろう。 ただ、中国人など外国人の訪日をいま緩和しようとしているのは、理解できない(72時間以内の短期滞在をする海外からのビジネス渡航者に対し、条件付きで受け入れる方向)。条件こそいろいろつけられているが、多くは、じつに日本的な協力要請にすぎない。そもそも、そういう渡航者をいま日本にとってどういう緊急の利益のために入れるのかわけがわからない。入れるならすべてが落ち着いてから入れればいいのだ。 中国は、自国でチャイナ肺炎が勃発し、多数の死者が出ていることを知りながら、春節で世界中に旅行客を送り出した国だ。ひどいめにあわされたことを、簡単に忘れてしまう政府内のヒトビトはもうしかたないが、わたしは忘れない。 ※ 中国では、昨年おきたブルセラ症の被害が周辺住民にもおきていたことを、ごく最近ようやく認めた。つまり、隠していたということだ。こういう国のデータを言うがまま信じるのは、科学的思考のできる人には不可能だ。 https://www.tokyo-np.co.jp/article/66850
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人と人の接触の機会が増えれば、普通感冒やインフルエンザと同じように、このウイルスに感染する人の数が増えるのは基本的に避けられない。感染発症してしまえば、抗ウイルス剤、良いワクチン、治療法の開発など、そして最終的には数年たてばおきるといわれているウイルスの弱毒化に期待するしかないが、これらがいつどうなるかを確実に見通せるひとはいない。一方、予防の原則は明らかで、ウイルスと接触しないことだが、それを徹底的にやるのは難しいことは、何種類かあるいわゆる普通感冒のウイルスやインフルエンザウイルスに100%接触しないことが難しいのと同じだ。
各国様々にとりくんでいるが、わたしは中国のデータは言うとおりには信じていない(※)。しかし、中国が一定程度は成功しているのだとしたら、それは、徹底的な国民監視と行動制御のおかげだ。だれがいつどこにいたかということがすべて当局に筒抜けになっている。こうした中国のおこなっている徹底的な国民監視と行動制御を日本で可能とはとてもおもえない。この点について、中国を称賛するヒトビトが正面から答えたところを見たことがない。かれらは、全員に検査すれば撲滅できるんじゃないの?とくりかえしているだけだ。実際は、徹底的な国民監視と行動制御こそが効いているのだ。
日本の現在の事態をどうすべきか。人々の接触を今よりも抑制する措置をとれば、チャイナ肺炎の新規感染者は減るだろう。もともとわたしは、7月にはじまったGOTOキャンペーンには懐疑的であり、冬がはじまる前に、国内の患者数を極小化すべきだという論者であり、そうしたことをここに書いたこともある。わたし自身はいまこそ、その路線に転換すべきだと考えている。
しかしその一方で、人々の接触を今よりも抑制する措置をとれば自殺者は(今でも昨年より増えているらしいが)増えるかもしれない。飲食業などの倒産は増え、失業はいっそう深刻な問題になるかもしれない。そのために莫大な財政支出をすれば、のちのちそれが問題をひきおこすであろう。感染者数は増加しても、さいわい、致死率、重症化率は、欧州でも第一波のときほどではない点をみれば、GOTOキャンペーンはギリギリまで維持するという考えも一理あるとおもう。
政府の舵取りはむずかしいことが明らかで、自分の意見が正しいと言い張るつもりはない。なんにせよ、「死者数の爆発的増加につながる医療崩壊は防ぐ」という点ではほとんどの人が一致しており、甘めに対応するか苦めに対応するかの違いということであろう。
ただ、中国人など外国人の訪日をいま緩和しようとしているのは、理解できない(72時間以内の短期滞在をする海外からのビジネス渡航者に対し、条件付きで受け入れる方向)。条件こそいろいろつけられているが、多くは、じつに日本的な協力要請にすぎない。そもそも、そういう渡航者をいま日本にとってどういう緊急の利益のために入れるのかわけがわからない。入れるならすべてが落ち着いてから入れればいいのだ。
中国は、自国でチャイナ肺炎が勃発し、多数の死者が出ていることを知りながら、春節で世界中に旅行客を送り出した国だ。ひどいめにあわされたことを、簡単に忘れてしまう政府内のヒトビトはもうしかたないが、わたしは忘れない。
※ 中国では、昨年おきたブルセラ症の被害が周辺住民にもおきていたことを、ごく最近ようやく認めた。つまり、隠していたということだ。こういう国のデータを言うがまま信じるのは、科学的思考のできる人には不可能だ。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/66850