ご指摘の通り、状況は本当に厳しい。 モノが動かないため工場を閉鎖・休業させる所が多く、 また仕事が減っているため、特に貯蓄のない世帯が心配だ。 各企業はリーマンショックの教訓から、キャッシュを抱えることで 突発的な不況から自己防衛することを覚えた。今回のコロナ危機 では、その時の教訓が生きたと言えそうだ。 しかし、この状態が続いていいとは思えない。企業優遇に傾けば 医療福祉など公共サービスが削られ、国民の生活に負担を強いる。 消費税、法人税の割合と富の再分配の論争が際立ってきたのは、 80年代の全盛期頃と比較して、グローバリズムにより国際競争が 激化し、「経済のパイ」が縮小したことが原因だ。 ようするに現状は、限られた「経済のパイ」を企業と国民、そして 国(財政再建)が奪い合っている状況であり、根本的に解決する には、この経済のパイを大きくする(以前に戻す)政策しかない。 その為には、以前にここで主張した通り、産業及び公共システムの 「生産性」を向上させなければならない。IT化時代のニーズから 相対的に取り残されているため、効率が悪すぎるのだ。 難しいことは嫌だと言ってそれを拒否するなら、途上国と同じような 二流の低所得と低公共サービスに国民がこの先慣れていくしかない。 だが果たして、「一億総中流」とかつて世界から羨望の眼差しで 見られた最高の暮らしを、一度は経験した今の国民に手放せるか。 但し、残念ながらITを利用してバラ色の未来とは簡単にはいかない。 実際の所、簡単な話ではなく、様々な課題を解決しないといけない。 まず、ITシステムの生産性(開発能力)自体が他国と比べて低いこと が、そもそもIT普及率・応用力を停滞させている大きな要因である。 (生産性が低ければコストがかかり、コストが高いと採用しない) IT系の開発現場は、製造業と比べて属人的で、開発プロセスが未熟だ。 標準化については、プロセス成熟度モデル(CMMI)などの指標は 存在するが、その評価資格を取得するのは大手で、実際の作業をする のは下請け企業であり、まったく実態に合ってない。 さらに言えば、その工学的開発プロセスの採用することを阻害している 日本独自の「商慣行」の問題も障壁となっている。華やかさの裏は泥臭く、 ゼネコンと同じ下請け構造であり、工学的アプローチが前提としている 「契約主義」によるプロセスの採用ができないからだ。 小難しい話は省くが、上記の絶望的状況から脱却するには、いまから 総力を上げて官民が取り組まないと、この遅れは挽回できないのだ。 海外と違い、ことITにおいては過去の「官製プロジェクト」が成功した 試しがない。官民一体協力を促進する政治的旗振り役(政治家)が必要と 考える。これからは、若くて行動力のある政治家が必要だ。
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孫崎享チャンネル
(ID:97363230)
ご指摘の通り、状況は本当に厳しい。
モノが動かないため工場を閉鎖・休業させる所が多く、
また仕事が減っているため、特に貯蓄のない世帯が心配だ。
各企業はリーマンショックの教訓から、キャッシュを抱えることで
突発的な不況から自己防衛することを覚えた。今回のコロナ危機
では、その時の教訓が生きたと言えそうだ。
しかし、この状態が続いていいとは思えない。企業優遇に傾けば
医療福祉など公共サービスが削られ、国民の生活に負担を強いる。
消費税、法人税の割合と富の再分配の論争が際立ってきたのは、
80年代の全盛期頃と比較して、グローバリズムにより国際競争が
激化し、「経済のパイ」が縮小したことが原因だ。
ようするに現状は、限られた「経済のパイ」を企業と国民、そして
国(財政再建)が奪い合っている状況であり、根本的に解決する
には、この経済のパイを大きくする(以前に戻す)政策しかない。
その為には、以前にここで主張した通り、産業及び公共システムの
「生産性」を向上させなければならない。IT化時代のニーズから
相対的に取り残されているため、効率が悪すぎるのだ。
難しいことは嫌だと言ってそれを拒否するなら、途上国と同じような
二流の低所得と低公共サービスに国民がこの先慣れていくしかない。
だが果たして、「一億総中流」とかつて世界から羨望の眼差しで
見られた最高の暮らしを、一度は経験した今の国民に手放せるか。
但し、残念ながらITを利用してバラ色の未来とは簡単にはいかない。
実際の所、簡単な話ではなく、様々な課題を解決しないといけない。
まず、ITシステムの生産性(開発能力)自体が他国と比べて低いこと
が、そもそもIT普及率・応用力を停滞させている大きな要因である。
(生産性が低ければコストがかかり、コストが高いと採用しない)
IT系の開発現場は、製造業と比べて属人的で、開発プロセスが未熟だ。
標準化については、プロセス成熟度モデル(CMMI)などの指標は
存在するが、その評価資格を取得するのは大手で、実際の作業をする
のは下請け企業であり、まったく実態に合ってない。
さらに言えば、その工学的開発プロセスの採用することを阻害している
日本独自の「商慣行」の問題も障壁となっている。華やかさの裏は泥臭く、
ゼネコンと同じ下請け構造であり、工学的アプローチが前提としている
「契約主義」によるプロセスの採用ができないからだ。
小難しい話は省くが、上記の絶望的状況から脱却するには、いまから
総力を上げて官民が取り組まないと、この遅れは挽回できないのだ。
海外と違い、ことITにおいては過去の「官製プロジェクト」が成功した
試しがない。官民一体協力を促進する政治的旗振り役(政治家)が必要と
考える。これからは、若くて行動力のある政治家が必要だ。