りゃん のコメント

ところでトランプの背景にある政治状況については、孫崎さんは「政治状況はこれまでで一番厳しい」との見方です。
朝日新聞記事も同様の見方のようですが(※1)、
https://www.asahi.com/articles/ASM5B3W3CM5BUHBI01F.html
わたしはすこし違った見方をしており、以下に説明します。

わたしは昨年、2018年の春頃に「米中貿易摩擦はいったん夏頃(2018年の夏頃)までに中国側からの妥協で終わる。しかし火種はのこりつづけいずれ再戦がある」と考えており、その旨をこのブログの場にも書いた記憶があります。しかし実際は中国が妥協しないままそれから一年が経過しました。

この一年に何があったかというと、まずはHUAWEI問題に代表されるように、トランプ政権は米中貿易摩擦を安全保障問題であると定義し(※2)、それによって民主党の支持もとりつけた(※3)。これがいちばん大きいですが、さらにロシア疑惑の捜査は終結しました。そのうえ、米国内は好況で女性、ヒスパニック、黒人の失業率はとても低くなっていて、トランプ自身の支持率はあがっている。米国は民主国家だから一枚岩になることはありませんが、今が一年前よりも中国と戦う好機というわけです。

一方中国の内部事情はあまり伝えられませんが、この一年で経済はさらに行き詰まり、言論統制が常態化しています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5897
習近平の権力基盤の弱体化の現れかもしれず、そうであれば、もはや、中国側からの妥協は一年前よりもずっと困難になっていることでしょう。

このまま双方が突っ張り続けた場合、日本に及ぼされる影響としては、世界不況への懸念もありますが、まずは中国への輸出企業の打撃が大きいでしょう。しかしこういうときのために、内部留保をため込むことが許されていたとして、政府は安易な首切りや賃下げが行われないよう、厳しく監視すべきですね。

※1 なお、この記事中でも「進出企業に課す技術移転やサイバー攻撃などで入手した知的財産を「元手」に、国を挙げた産業育成に突き進む中国」と書かれています。これは朝日の記者も否定できない共通認識なわけです。

※2 これに関連していうと、孫崎さんは最近英国の5G問題を取り上げていますが、英国と日本との違いは、英国が中国とは地理的に遠い上に、英国が核保有国であるというところです(ここを忘れがち)。英国は米国にたいしても、中国に対しても、安全保障問題においてそれなりの自主的判断のできる現実的地位(空想ではなく)にあります。

※3 孫崎さんの記事中に Chuck Schumerのツイの紹介として Strength is the only way to win with China. とあるとおりです。

No.10 67ヶ月前

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