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マクガイヤーチャンネル 第44号 2015/12/7
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こんにちは。五週連続放送が終わり、ほっと一息ついているマクガイヤーです。
あとはウザい年末仕事をこなして、ウザい年賀状をやっつけで書いて、『フォースの覚醒』と『Fallout4』に備えるだけですね!
ひさしぶりのマクガイヤーゼミ「今だから復習したい『007 スカイフォール』とサム・メンデス」は如何だったでしょうか?
『007 スペクター』の観賞前に最適の番組となっております。
今後の放送予定ですが、以下のようになっております。
○12/26(土)20時~
「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会2015」
例年お楽しみ頂いている「オタ忘年会」。2015年のオタク的トピックスやアイテムについて独断と偏見で語りまくる予定です。
とりあえず、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』については絶対に触れる予定です。
ちなみに過去のオタ忘年会はこちら
2014年 → https://www.youtube.com/watch?v=k9kfABeaJxw
2013年
○1/9(土)20時~
久しぶりのスティーヴン・スビルバーグ監督作『ブリッジ・オブ・スパイ』が公開されるということで、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』について語ろうと思っていたのですが……すいません、別企画が実現しそうなので、番組内容は未定とさせて下さい。放送日はこのままです。
以上、ご期待ください。
さて、今回のブロマガですが、連載『遺言』をちょっとお休みして前回のニコ生「今だから復習したい『007 スカイフォール』とサム・メンデス」の裏話などさせて下さい。
『アベンジャーズ』『ミッション・インポッシブル』『ジュラシック・パーク』……有名映画シリーズの新作が次々と公開された2015年ですが、ほとんどの作品が年末公開を避けました。
何故でしょうか。聡明な皆様はとっくの昔にご存知ですよね。そう、12/18に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開されるからです。公開時期がかぶれば客の奪い合いになります。多くの映画が2015年の年末を避け、公開を前倒ししました。
しかし、唯一『007』だけは年末公開を動かしませんでした。『007 スペクター』のイギリス公開日は10/26、アメリカ公開日は11/7です。他国での公開日は当然これより遅くなります。日本での公開日は12/4となりました。『007』は『スター・ウォーズ』とのガチンコ対決を辞さなかった――そういっていいでしょう(厳密にいえば、日本では『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』が正真正銘のガチンコ対決を仕掛けているのですが、想定している観客層の違いから賞賛アリとみているのでしょう。でも、12/19は映画館がパンクするのではないでしょうか)。
『007』が『スター・ウォーズ』に対して一歩も引かなかった理由――それは、現在『007』が『スター・ウォーズ』と負けないくらいの歴史と格式を持った「ブランド」であるからです。
監督や主演が誰であれ、『007』の新作なら絶対に観る。フィギュアでもTシャツでもゲームでも、『スター・ウォーズ』のグッズなら金を払う。そういう人が最低数十万人いれば「ブランド」は成立し、多ければ多いほど「ブランド」の価値は上がります。
実際に『スペクター』を観にいった人なら分かるのではないでしょうか。50代60代が詰め掛け、劇場に入ったら加齢臭がぷんぷん匂い、途中で用を足すために席を立つ人が続出する――そういう映画は(邦画なら幾つかありますが、洋画では)珍しいです。『スター・ウォーズ』が身につけ、『ゴジラ』や『トランスフォーマー』が身につけつつある映画シリーズとしてのブランド力を、『007』はとっくの昔に手にいれていたというわけです。
これは映画だけでなく、ボンドが大好きな車や時計やスーツも同じことでしょう。ホームセンターで1000円で買える時計も、ボンドが着けている何十万円もするオメガやロレックスも、「時間が分かる」という機能は同じです。B級芸人のような扱いをされていた時代も、M-1で優勝した後も、トレンディエンジェルの芸人としての面白さは変わりません。中国やベトナムで作られた製品と、欧州で作られた製品とでは、ほとんど同じ材質で作られ、ほとんど同じ機能を備えているにも関わらず、何十倍、時に何百倍もの価格差がつく時があります。
何故か――それは「ブランド」が違うからです。人は信頼している「ブランド」であれば、どれだけコストパフォーマンスが悪くても金を払い、手に入れようとやっきになります。
競争が激化すると共に技術が発達すると、どの企業の製品も品質と機能に大差なくなり、しかも価格はそこそこ安くなります――いわゆるコモディティ化です。チープカシオもチープセイコーも、よほどのマニアでなければ品質と機能に違いを見出せません。
コモディティ化に対抗するには、なんとかして付加価値をつけるしかありません。その一つが「ブランド化」です。
2015年はたくさんのスパイ映画が公開された年でもありました。『ミッション・インポッシブル』『キングスマン』『コードネーム U.N.C.L.E.』……そういった映画と『スペクター』との違いはなんでしょうか?
監督の「格」、俳優の「格」、そして『007』というシリーズの「格」――つまりは「ブランド」ということでしょう。『キングスマン』や『コードネーム U.N.C.L.E.』がファーストフード、『ミッション・インポッシブル』がファミレスのチェーン店とすれば、『007 スペクター』には銀座の老舗の料亭のような風格がありました。
でも、60年代70年代の時分は、『0011ナポレオン・ソロ』も『スパイ大作戦』も、『007』とほとんど変わらないブランド力だったわけです。ショーン・コネリーやロジャー・ムーアがボンド役をやりつつ他の映画で主演を務めることはありませんでした。テレンス・ヤングやガイ・ハミルトンやジョン・グレンといった『007』映画専属監督以外が映画を監督することはありませんでした。
これが変わったのはピアース・ブロスナンが5代目ボンドになってからです。ブロスナンはボンド役をやりつつ、『ダンテズ・ピーク』、『トーマス・クラウン・アフェアー』、『テイラー・オブ・パナマ』といったA級作品でも主演を務めるA級スターでした。更には『マーズ・アタック!』で憎まれ役を演じる余裕さえもありました。
イオンプロとしてはブランドレベルアップへの手ごたえがあったのでしょう。ダニエル・クレイグが6代目を演じるにあたり、A級の予算を用意し、A級のカメラマンを雇い、そしてA級の監督にオファーする……この戦略が成功した結果が『スカイフォール』であり、『スペクター』だったのです。
そんな『スペクター』、基本的には面白い映画でしたが、自分にはどうしても気になってしまう点がありました。
ニコ生で解説した通り、ダニエル・クレイグが6代目ボンドを演じる『007』シリーズは、何者でもなかった若者が、「007」という名に値するスパイになるまでの成長物語として製作されています。
『カジノ・ロワイヤル』冒頭のボンドは、スパイとしては能力不足で、なんだかチンピラみたいな若者でした。それが、愛する人の死を経験し、映画が終わる頃には我々が知っていた――特にショーン・コネリーが演じていた時代の――殺人を躊躇しないハードなボンドに成長します。『慰めの報酬』で更に成長しますが、肝心のMr. ホワイトを取り逃がし、自分が最も気にしているミッションは未解決のままです。
『スカイフォール』のボンドは、前二作と比べていきなり老いた姿で登場し、上司にも見捨てられ、このまま中途半端な形で引退することを最大の恐怖に感じています。しかし、二度の擬似的な死を経験することで「007」の名に値するスパイに成長します。
映画の作風も、前二作はリアル一辺倒でしたが、『スカイフォール』では中盤から『007』映画特有の演出が復活し、更にはアート映画のようなシンボリックな表現が使われ始めます。ボンドのスパイとしての成長と、『007』映画としての成長(変化)がシンクロしていることが、『スカイフォール』最大の魅力です。
以下ネタバレ。
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