おはようございます。マクガイヤーです。
先日の放送「テン年代の『進撃の巨人』」は如何だったでしょうか?
言いたいことを2時間ちょっとでまとめて話せて、満足しております。
そうそう、先週のブロマガで話題にしたPSアーカイブス終了の件ですが、PS3、PS Vitaのストアは継続となったようです。実に嬉しいですね。
https://www.famitsu.com/news/202104/20218267.html
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇5月5日(水)19時~「こんな時だからみたい旅行映画たち」
新型コロナ過の中、気軽に旅行に行けない状況が続いています。国内旅行は可能でしょうが、海外旅行は少なくともあと一年は無理そうです。
そんな中、気分だけでも旅行に行ったような感覚を味わえる映画を特集します。ロードムービーに限らず、全く別の土地や風景、旅行そのものの魅力を味わえるような映画は数多くあり、そんな映画たちについて語れればと思います。
ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
〇5月23日(日)19時~「黒富野と白富野のあいだの『閃光のハサウェイ』」
5月7日より映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が公開されます。1989~90年にかけて発表された富野由悠季による同名小説を、3作かけて映像化する、その第1作目になるそうです。なんでも、ガンダムにとっての「正伝」である宇宙世紀作品を各種メディアで展開するプロジェクト『UC NexT 0100』の第2弾として制作されるそうです。
『閃光のハサウェイ』が、いまこのタイミングで映像化されることに、驚きと納得の両方を感じてしまいます。発表当時、『閃光のハサウェイ』はイノセンスの象徴として過去作に登場したハサウェイ・ノアを抑圧された宇宙植民地の側に立つテロリストのリーダーとし、テロを繰り返す側の視点で描くガンダムシリーズとしては異端の物語だったからです。
しかし、アメリカ同時多発テロ事件から20年が経ち、いまもまだ「テロとの戦争」の最中にあります。テロリストの視点から語る物語は珍しくなくなりました。
富野由悠季の作風は『閃ハサ』以後どんどん「黒さ」を増しつつも、『ブレンパワード』を境に反転を迎えることとなります。一方で、「ガンダム」というコンテンツはサンライズの身売り以降、『SEED』や『UC』でしっかりとブランド化しましたが、富野自身が『閃ハサ』のアニメ化に関わらないことにも、驚きと納得の両方を感じてしまいます。
そこで、映画化に合わせて、『閃光のハサウェイ』を中心に富野由悠季とその作品群・作風について解説するニコ生を行います。
ゲストとしてお友達の虹野ういろうさん(https://twitter.com/Willow2nd)をお迎えしてお送り致します。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、今回のブロマガですが、『進撃の巨人』について、ニコ生の補講のようなものを書かせて下さい。
●ビルドゥングス・ロマンと悪いアニキ
同時期に「完結」したということでどうしても『エヴァンゲリオン』と『進撃の巨人』を比較してしまうのですが、どう考えても『進撃の巨人』の方が物語としての出来が良いと思うのですよ。
集団芸術としてのアニメと個人作である漫画というメディアの違い、25年に渡って悩みながら作った自己言及的な物語と当初の構想ほぼそのままで発表できたそれの違い、予算や時間の制限や途中で行ったリブートすらメタ的に物語に取り込んだ作劇とサプライズを上手く使いつつも一つの世界観を守ったある意味保守的なファンタジーとの違い……と、様々な違いがありますが、全体を通したテーマが一貫していて、伏線をきっちり回収して、大きな破綻なく風呂敷を畳めたという意味では、『進撃の巨人』の方が物語としての完成度が高いと言って良いと思います(終始一貫してパンツを脱いで踊る庵野から目が離せず、そこが『エヴァ』の最大の魅力となっているのは、日本文学史における私小説の重要さ以上のものがあると思います)。
『エヴァ』も『進撃の巨人』も、何者でもない主人公がさまざまな体験を通して成長していく過程を描いた物語――ビルドゥングス・ロマンを原型とした話ですが、『進撃の巨人』の特徴はグルやメンター的な人物が何人も出てくるところです。それも、多種多様なバリエーションが。
たとえば、ハンネスや実写映画版でピエール瀧が演じるソウダは分かり易いのですが、リヴァイ兵長は異様です。自分たちより圧倒的に強く、冷酷な態度を隠そうともしないリヴァイは、人殺しのような悪事を平然と行う「悪いアニキ」で、「信用できない師匠」です。
この「信用できない師匠」というのは、ビルドゥングス・ロマンを原型とする映画やアニメや漫画に頻出するキャラクターでもあります。途中で師匠と決別する『怒りの荒野』や『Gガンダム』から、信用できない人物を師匠とすることで多くを学ぶ『ベスト・キッド』や『とんかつDJアゲ太郎』(そういえばハンネスの声優は藤原啓治でした)まで、バリエーションも多種多様です。
単行本の4~9巻くらいまでは、このリヴァイ(とエルヴィン)を信用しても良いかどうかの葛藤が話を進める原動力の一つになっています。
読者も主人公も、完全にリヴァイやエルヴィン、そして調査兵団を信用できるようになると(つまり仲間になると)、新たに登場するのがケニー・アッカーマンです。
ケニーは自分たちを殺そうとする刺客のリーダーなのですが、リヴァイの叔父であり、「師匠」であり、同程度の強さを持っています。新たな「悪いアニキ」の登場ですね。
ケニーは最後まで「悪いアニキ」のままで、自分たちの仲間になることはありませんでした。しかし最後に「みんな(王族でさえ)何かの奴隷だった」という本作のテーマの一端を表す台詞を吐くことは象徴的です。
そして、ケニーが物語から退場すると、新たな「悪いアニキ」が登場します。
エレンの義兄ジークです。
・血のつながりがあること
・同じような能力があること
・先だって世界や人生に絶望していること
……といった特徴は、リヴァイに対するケニーと同じです。
つまり、「悪いアニキ」としてリヴァイが登場し、リヴァイにとっての「悪いアニキ」としてケニーが登場し、「更なる悪いアニキ」としてジークが登場したわけですね。
(次回へ続く)
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平野建太
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