おはようございます。
先日、ヤンサンのドラえもん回に出演しました。
初めて自宅からリモート出演しましたが、意外に快適でびっくりしました。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇9月14日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年9月号」
・時事ネタ
・『仮面ライダーゼロワン』総括
・『がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』
・『追龍』
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇9月28日(月)19時~「『TENET』とクリストファー・ノーラン――映画の「時間」と「嫁が怖い」――」
9/18よりクリストファー・ノーラン監督の新作映画『TENET』が公開されます。
『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』等を送り出してきた稀代のヒットメーカーの新作にして、新型コロナ禍の中で久しぶりに公開される大作映画です。
クリストファー・ノーラン監督の映画には大きな特徴が二つあります。
一つは、どの映画にもそれぞれ固有の「時間の流れ」がありますが、他作品に比べて突出してオリジナルな「時間の流れ」があること、もう一つは、主人公の妻が映画が始まる前から大きな役割を果たしていることです。
脚本も書いている『TENET』もこの特徴が炸裂している作品と予想しています。
そこで、クリストファー・ノーランの過去作を振り返りつつ、『TENET』を解説するようなニコ生を行います。
ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
〇10月5日(月)19時~「『デカダンス』とゲームの中で生きるおじさん」
7月8日よりアニメ『デカダンス』が放送・配信されています。
未来世界を舞台としたポストアポカリプスSFかとおもいきや、ある「仕掛け」が2話で明かされる、今期注目のアニメ作品になっています。
この「仕掛け」は、実のところ、取沙汰されている『ウエストワールド』だけではなく、ここ十数年の「いま」のアニメ・映画に特徴するものでもあるのですが、主人公が中年男であるところに、おじさんである自分は泣けてきます。
そこで、『デカダンス』と関連作品について解説するようなニコ生を行います。
ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。
〇10月19日(月)19時~「黒沢清とセカイの恐怖」
10月16日より黒沢清の新作『スパイの妻』が公開されます。
6月にNHK BS8Kで放送された作品の映画版ですが、どう考えても普通のNHKドラマとは思えません。
そこで、映画監督 黒沢清について振り返りつつ、『スパイの妻』について解説するようなニコ生を行います。
ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、今回のブロマガですが、前回の続きとしてまた『日本沈没2020』について書かせて下さい。
●視点の変化と戦争映画
国を消すことで、日本人とはなにか、日本文化とはなにか、そもそも民族とは何か、国家とは何かということを考えることができる。つまり、日本という国が無くなる時にこそ、「日本」や「日本人」の正体が明かになる。無くなる理由は戦争でも自然災害でも本質的には同じことではないか――『日本沈没』の執筆動機とは、そのようなものであったわけです。
『日本沈没2020』は、徹底的に「いま」の日本、「いま」の日本人を描くことで、原作小説である『日本沈没』のアップデート版になることを目指しています。
主人公の姉弟は日本人とフィリピン人とのハーフであり、2020年の東京オリンピック開催直後が舞台です。冒頭、建設業に携わる父親はオリンピックとパラリンピックの終わった新国立競技場の解体あるいは改装に従事し、フィリピン国籍を保持している母親は飛行機で我が家に帰る途中です。弟と母が頻繁に英語を喋ったり、ひきこもりやユーチューバー、ユーゴスラビア出身の大道芸人や独居老人のスーパー店主が登場したりします。彼ら彼女らと擬似家族的な関係性を築き、一種のロードムービーとして物語が進みます。
日本が沈没する理由は短い台詞で説明されるに過ぎません。「メガリス崩壊」や「D計画」といった原作では重要な要素も、新聞やニュースに名前が載るのみです。田所博士も作品内のニュースや新聞などで名前のみ登場し、小野寺俊夫もそうかと思えば、あっとおどろく登場の仕方をします。原作を知っていればいるほど、ニヤニヤしてしまうキャラクターの使い方です。『日本沈没』のアップデート版というよりも、アンサーソングのようです。
多様なバックグラウンドを持つキャラクターが架空の日本を擬似家族のように彷徨う話は、様々なバックグラウンドを持った仲間たちとサイエンスSARUを立ち上げ、海外とも仕事をする湯浅政明のリアルが反映されているのでしょう。英語で配信されるニュースを、近所のコンビニ店長たちは(行動力も決断力もあるのに)理解できないけれど、主人公家族だけが理解できるところなど、リアリティに溢れています。
ロードムービーという形式も興味深いです。
旧作の『日本沈没』は政治家や官僚や政財界の大物たちが日本沈没という戦争にも並ぶ国難に対して必死に働き、決断するさまが描かれましたが、これと対照的に、『日本沈没2020』は市井の人々の視点で地獄めぐりのような物語が進みます。
これは、『史上最大の作戦』や『トラ・トラ・トラ!』といった60、70年代の大作戦争映画が将軍や司令官、時に政治家や王族を描くことで戦争全体を描こうとしていたのに対し、『プライベート・ライアン』以降の大作戦争映画は『ダンケルク』や『1917 命をかけた伝令』といった最新作に至るまで、どれも一兵士や小規模な一部隊の視点を徹底させることで逆に戦争全体を想起させるような描き方に変わっていったことと対応しています。「いま」の社会で替えの効く一兵士のように使い倒され働き倒される観客は、将軍や司令官のように戦場を神の視点で俯瞰できる登場人物よりも、土にまみれて泥水をすする兵士の方がより感情移入できるのです。
国やそれぞれの軍隊の動きといった史実は、教養として観客が既に持っていることを前提とし、敢えて劇中で説明しません。これは、歴史に詳しくない観客をおいてけぼりにする怖れがありますが、基礎教養を敢えて再度説明しないという意味で、スマートなやり方です。
日本は、幸運なことに過去75年にわたり戦争を経験していません。しかし、地震や津波や噴火といった自然災害は数多く経験してきました。大規模な自然災害発生時に国や自衛隊や各省庁がどう動くかについては基礎教養とし、敢えて国や組織の視点で「日本沈没」を描くことをしない、必要なら原作小説を読んでくれ――というスマートすぎる姿勢を本作はとっている、自分にはそのように思えます。
●不発弾の意味
『日本沈没』は一種の戦争小説であり敗戦論である――こう考えると、「唐突すぎる」と評判の悪い不発弾シーンも、非常に重要なシーンであるように思えてきます。
彷徨する主人公一家ですが、アウトドアが趣味で、サバイバル能力の高い父親の力で、様々な食材をゲットします。郊外にでたら山に入って、猪を狩り、難なく解体し、火をおこして調理して食べます。山では「山芋掘り禁止」の看板を発見すれば、逆にここでは山芋が採れると考え、シャベルで掘り出そうとします。
その時、何故か埋まっていた不発弾にシャベルが当たり、爆発し、父親が爆死してしまうのです。一応、不発弾が埋まっている可能性があることを示す看板があり、それを姉がみるという描写があるのですが、あまりにも唐突すぎるし、そもそもこの2020年に不発弾注意の看板などみたことがない――という批判があるのです。全10話中2話目という比較的冒頭のシーンであること、唐突でリアリティが無い――分かり易い欠点のようにみえることから、『日本沈没2020』を批判する際にほぼ必ず取り上げられる描写になっています。
しかし、このシーンは欠点なのでしょうか?
リアリティの面から考えると、このような山に不発弾が埋まっているということは充分に考えられます。1年における不発弾の処理数は約1400件、その大半が沖縄県であるものの、戦後から開発の手が入っていない郊外の山の中に不発弾が埋まっている可能性は大いにあります(https://news.yahoo.co.jp/feature/1463)。また、不発弾の処理費用をだれが負担すべきかについては議論の分かれるところであり、不発弾が埋まっていることを把握しているにも関わらず、不発弾処理の出費を嫌がった地主が問題を先送りし、そのままとしていることもありえます。
「危険! 不発弾が埋まっている可能性があります」という看板を掲げたら、リスク回避どころか土地管理者の責任を問われそうなので、この看板に対する批判はまっとうですが、この看板が無かったら、唐突さに更に拍車がかかるでしょう。
そして、この看板をみた弟の台詞も意味深です。
「日本って、戦争の時に落とされて爆発しなかった爆弾が、まだまだ埋まってるんだって。
地震でそれが出てきて、事故が起きてるっぽいよ」
つまり、不発弾は、一つのメタファーなわけです。戦後から現在まで、この国のあらゆるところで起きている問題の先送りや、「不発弾」や「地雷」のように社会のあらゆるところに爆発しないまま「埋まっていた」問題が、みてみぬふりをしてきた問題が、日本沈没をきっかけに顕わになったわけです。
東日本大震災が起こる直前の十数年間、安全性の高まった日本の原子力発電は二酸化炭素排出を抑える有効な手段だと考えられていました。新型コロナウイルス禍が起こるまで、役所や保健所のIT非対応や各省庁の縦割り行政は、誰も本気で変えようとしない問題でした。国を揺るがすほどの災害や戦争があってはじめて、埋まっていた問題が顕わになったのです。
●箱根の老人としてのカイト
カイトの存在も評判の悪い点の一つです。
国際的に活躍するユーチューバーであり、多額の資産を持ち、パラモーターや気球や自衛隊の水陸両用車を操縦でき、ハッキング能力まであるかと思えば、フリースタイルラップまでできます。あまりにも都合の良すぎる、リアリティを無視した、デウス・エクス・マキナ的スーパーマンです。
少なくとも我々の知っているユーチューバーとは違います。ヒカキンもフワちゃんもせやろがいおじさんも、ここまでのスーパーマンではなく、どこかしら欠点や抜けたところがあるからこそ皆から愛され、ユーチューバーとして活躍しているわけです(英語に堪能な人は多いですが)。彼らに比べるとカイトは、小学生が想像したユーチューバー……いや、テレビよりYouTubeを好んで観る最近の小学生はユーチューバーの実際についてよく知っているので、あまりユーチューバーを知らない人がぼんやりと想像する、形而上学的な存在としてのユーチューバーのようだ、と言い換えてもいいかもしれません。
しかし、原作小説『日本沈没』に、そのような都合の良すぎる、リアリティを無視した、デウス・エクス・マキナ的スーパーマンがいなかったとは言わせません。
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