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【第287号】アンサーソングとしての『日本沈没2020』 前編

2020/09/02 07:00 投稿

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マクガイヤーチャンネル 第287号 2020/9/2
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おはようございます。

一昨日のニコ生「最近のマクガイヤー 2020年8月号」は如何だったでしょうか?

次回も「最近のマクガイヤー」になりますので、よろしくお願いします。




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇9月14日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年9月号」

・時事ネタ

『仮面ライダーゼロワン』総括

『mid90s ミッドナインティーズ』

『ファナティック ハリウッドの狂愛者』

『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』

『がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』

『ブラック アンド ブルー』

『追龍』

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』

『誰がハマーショルドを殺したか』

『悪人伝』

『カセットテープ・ダイアリーズ』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇9月28日(月)19時~「『TENET』とクリストファー・ノーラン――映画の「時間」と「嫁が怖い」――」

9/18よりクリストファー・ノーラン監督の新作映画『TENET』が公開されます。

『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』等を送り出してきた稀代のヒットメーカーの新作にして、新型コロナ禍の中で久しぶりに公開される大作映画です。

クリストファー・ノーラン監督の映画には大きな特徴が二つあります。

一つは、どの映画にもそれぞれ固有の「時間の流れ」がありますが、他作品に比べて突出してオリジナルな「時間の流れ」があること、もう一つは、主人公の妻が映画が始まる前から大きな役割を果たしていることです。

脚本も書いている『TENET』もこの特徴が炸裂している作品と予想しています。

そこで、クリストファー・ノーランの過去作を振り返りつつ、『TENET』を解説するようなニコ生を行います。

ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



〇10月5日(月)19時~「『デカダンス』とゲームの中で生きるおじさん」

7月8日よりアニメ『デカダンス』が放送・配信されています。

未来世界を舞台としたポストアポカリプスSFかとおもいきや、ある「仕掛け」が2話で明かされる、今期注目のアニメ作品になっています。

この「仕掛け」は、実のところ、取沙汰されている『ウエストワールド』だけではなく、ここ十数年の「いま」のアニメ・映画に特徴するものでもあるのですが、主人公が中年男であるところに、おじさんである自分は泣けてきます。

そこで、『デカダンス』と関連作品について解説するようなニコ生を行います。

ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。



〇10月後半(日時未定)19時~「黒沢清とセカイの恐怖」

10月16日より黒沢清の新作『スパイの妻』が公開されます。

6月にNHK BS8Kで放送された作品の映画版ですが、どう考えても普通のNHKドラマとは思えません。

そこで、映画監督 黒沢清について振り返りつつ、『スパイの妻』について解説するようなニコ生を行います。

ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109


また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。




さて、今回のブロマガですが、やはり『日本沈没2020』について書かせて下さい。



●『日本沈没2020』とは

『日本沈没2020』は小松左京が1964~73年にかけて執筆したSF小説『日本沈没』を原作とするNetflixオリジナルアニメ作品です。前々回のニコ生で特集しましたね。


https://eiga.com/news/20200820/16/


その後、再編集版が、『日本沈没2020 劇場編集版 シズマヌキボウ』のタイトルで11月13日より劇場公開されることが発表されました。

『日本沈没2020』は発表時より様々な毀誉褒貶に晒されましたが、自分は傑作であると考えます。劇場公開時に再度同様のことが起こると予想されますが(つまり『聲の形』と同じく「馬鹿にみつかる」ということですが)、ここでちゃんと自分の考えを文章として残しておきたいと思います。


●『日本沈没』は大地震の話なのか?

これまで『日本沈没』は二度映画化、二度漫画化され、テレビドラマやラジオドラマ化もされました。また、実現されなかった映画化企画も4つあります。

発表当時の映画化やドラマ化作品が原作に即しているのに対し、後年のそれらはオリジナル要素が多くなるという傾向があります。つまり、それぞれの時代に合わせて作品が捉えなおされてきたわけです。

『日本沈没2020』もこの例に漏れず、舞台を現代に置き換え、登場人物もほとんどがオリジナルであり、オリジナルな物語が語られます。


この理由は、95年の阪神淡路大震災や11年の東日本大震災のように、日本列島に定期的に大地震が発生し、その度ごとに大地震のインフレーション版としての「日本列島沈没」という物語が引っ張り出されるから――というように思えます。

しかし、小松左京が『日本沈没』を描いた理由は、大地震に対して警鐘を鳴らしたかったからではありません。

『日本沈没』は日本や日本人が未曽有の危機に直面した時にどうするか、ではなく、決定的な敗北に直面した時にどうするか、その時日本人が日本人である根拠が問われるのではないか――つまり、日本人にとっての実存を描きたかったからです。

すなわち、『日本沈没』は日本人にとっての敗戦論や実存論なのです。



●小松左京と実存

SF・文芸評論家の藤田直哉は「宇宙にとって実存とは何か、実存にとって宇宙とは何か」が小松左京の一大テーマであると看破しました。

自分も全くの同意見ですが、それでは何故小松左京はこのテーマを生涯かけて追い求めたのでしょうか。


1931年に大阪で生まれた小松左京は、終戦時に14歳、戦争経験はあるけれど戦場体験は無い世代です。

この世代のクリエイターは、「自分は戦場には行っていない」という屈託や後ろめたさを生涯抱え、「生き残ってしまったものの責任」を考え、それが創作の原動力となっているという共通性があります。活躍したジャンルは異なりますが、手塚治虫や三島由紀夫が例として挙げられるでしょう。

 

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