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マクガイヤーチャンネル 第261号 2020/2/26
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おはようございます。

先日のニコ生放送「金ロー『リメンバー・ミー』生実況」は如何だったでしょうか?

山田玲司先生にしまさんも参加して、楽しかったイベントを思い出したりもしましたね。




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○3月8日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2020年3月号」

・最近のコロナウイルスその2

『ミッドサマー』

『マンダロリアン』

『仮面ライダージオウ NEXT TIME ゲイツ、マジェスティ』

『初恋』

『レ・ミゼラブル』

『野性の呼び声』

『ハスラーズ』

『チャーリーズ・エンジェル』

『1917 命をかけた伝令』

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー ダイナミック完全版』

『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

『バッドボーイズ フォー・ライフ』

・伊藤悠初期短編集『歌屑』『面影丸』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○3月22日(日)19時~「PCエンジンmini発売記念 おれたちのPCエンジン」

3月19日にPCエンジンminiが発売されます。ファミコンミニやメガドライブミニ、プレイステーション クラシックといった流れのトリを飾る大物復刻版ミニハードです。

PCエンジン用のソフトだけでなく、本来ならば初代PCエンジンやPCエンジン単体では動作しないはずのスーパーグラフィックスやスーパーCD-ROM2用ソフト、更には北米版PCエンジンであるTurboGrafx-16ソフト、計58本のゲームタイトルが収められており、他の復刻版ミニハードに比べて全く見劣りしない内容となっています。

しかし、ファミコンに比べて知名度が低かったこと、メガドライブに比べて熱狂的あるいはカルト的なファンが少なかったことから、あまり話題になっておりません。『しくじり先生』『アメトーーク』でPCエンジンがテーマとなることも無いでしょう……

そこで、PCエンジンの歴史や有名タイトルについて紹介すると共に、PCエンジンの魅力に迫るような放送を行います。

ゲストとして、お互いに実はメガドライブよりもPCエンジンの方がプレイ時間が多かったことが判明した、お友達のナオトさん(https://twitter.com/Triumph_march)に出演して頂く予定です。



○藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109


また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

https://macgyer.base.shop/items/25929849


合わせてお楽しみ下さい。



○『やれたかも委員会』に取材協力しました。

『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。

ちなみに基になったお話はこちら

https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063





さて、今回のブロマガですが、前回ニコ生の補講というかまとめというか、改めてつげ義春について書かせて下さい。




●つげ義春と商業主義

漫画史に絶対的な影響を与えるような作品を描きながらも、「ガロ」や「コミックばく」といった非メジャーな雑誌を活動の場としていたこと、休筆という実質的な引退から30年以上経過したこと、なによりも寡作であり何人ものアシスタントを雇って同じような作品を「量産」せず、同世代の「成功」した漫画家のように多くの収入を得なかったことから、つげ義春は商業主義に背を向けた作家のように思われています。

しかし、つげ義春のエッセイや自伝的作品を読むと、漫画家つげ義春はその誕生時から商業主義に基づいていたことが分かります。

最も分かり易いのは『義男の青春』の冒頭で、家族7人の生活を支えるために貸本漫画を描いている描写です。母親から

「まだ8枚しかできていないけど あしたまでに16枚描けるかや」

「お前のスランプというのはいったいどういうことなんだろうねえ」

とせっつかれる若かりしつげ義春(をモデルとした主人公)は、厳格な両親から漫画家になることを反対され姉だけが味方になってくれた石ノ森章太郎や、漫画家なんて補償も免許証も無いやくざな職業に就いて良いものだろうかと自問自答する藤子不二雄Aのようなトキワ荘の漫画家たちと比べると、明らかに異質です。

つまり、漫画家を始めたころのつげ義春は、完全にカネや生活のために漫画を描いており、自己実現や作家的野望や挑戦とは無縁だったわけです。

この頃に貸本漫画として描かれたつげ作品を読んでも、時代劇やミステリなどジャンルは多岐に渡っているものの(SFまで描いていたことには驚きます)当時流行していた劇画の定型をなぞったようなものが多く、この見立てが正しいことが分かります。

その後、つげ義春は『お化け煙突』や『ある一夜』のような作家性の高い作品が注目されて「ガロ」で描くようになり、明らかに娯楽作品意識から脱却した『沼』や『チーコ』を経て、『ねじ式』で当時のアングラ団塊世代の間でつげブームを起こすこととなるのですが、ついぞ作品を「量産」することはありませんでした。

つげの漫画家としてのあり方は、トキワ荘の漫画家たち(の何人か)が、ヒット作を量産し、高度経済成長の波に乗り、長者番付に名を連ねるまでになったのとは対照的です。


水木しげるはつげ義春を「つげさんはスケベで怠け者でしたね。でも品物はいいんです」と評しました。

『無能の人』で「あんたにはマンガしかないのよ」「ね マンガ描いてよ 注文がなくてもいいじゃない」と妻に泣かれるシーンは全ての漫画家にとっての根源的恐怖ですが、結局つげ義春本人をモデルにした主人公は六つのエピソードから成る連作『無能の人』の最後の最後まで漫画を描くことはありませんでした。

もしつげ義春の漫画家としてのスタートがもう少し違ったものであったのなら、漫画を描くことが『義男の青春』で描かれたような生活からの要請ではなく、『まんが道』で描かれたような作家的幸福と結びついたものであったのならば、つげ義春は休筆などしなかったのかもしれません。

勿論、いま名作とされている数々の作品を描けなかったという可能性もありますが。



●様々なつげ義春

そんなつげ義春とつげ義春作品ですが、ある程度漫画を読んでいる人にとっては、手塚や水木や藤子や赤塚や石ノ森と同じく、教養だと思っていました。ですが、アングレーム賞受賞時のSNSの反応などをみると、最近ではそうでも無いようです。

漫画読みならつげ義春くらい全作品読んでいるべき――とは思わないのですが、寡作なのでその気になれば僅かな時間で全作品読めます。初期の貸本漫画は永島慎二や辰巳ヨシヒロの影響を受けていますが、「ガロ」で描くようになってから発表した作品はつげにとっても漫画史にとっても重要作であり、影響を与えた側の作品になるので、他の漫画家の作品を知らなくても理解することができます。つまり、漫画史や文脈が分からなくても、つげ作品だけ読んで楽しむことができるのです。


もっといえば、つげ義春作品は難解ではありません、というか、つげ義春作品の魅力は難解さ以外にあります。