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【第250号】『アナと雪の女王2』に足りない「新しいサーミの女」(前編)

2019/12/04 07:00 投稿

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マクガイヤーチャンネル 第250号 2019/12/4
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おはようございます。マクガイヤーです。

前回の放送「『アナと雪の女王』とディズニープリンセスの自立」は如何だったでしょうか?

ちょっと遅刻してしまいましたが、準備バッチリだったせいか話したいことを話せて、満足な放送になりました。

それにしてもゲストとして出演頂いた那瀬さんの「打算的な結婚でも幸せになれる」はオトナな発言でしたね。プリンセスものに足りないのはそれだ! と思ってしまいましたwww




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○12月22日(日)19時~「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会スターウォーズ2019」

例年お楽しみ頂いている「オタ忘年会」。

2019年に語り残したオタク的トピックスやアイテムについて独断と偏見で語りまくる予定ですが、今年はほとんどの時間を割いて、サーガの完結作となるEPIXが公開される『スター・ウォーズ』について語ることになると思います。

ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。


ちなみに過去の忘年会動画はこちらになります。

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年



○1月6日(月)19時~「「ジャンプヒーローとアメコミヒーローのあいだ」としての『僕のヒーローアカデミア』」(いつもと曜日が異なっております。ご注意下さい)

12月20日より映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』が公開されます。漫画『僕のヒーローアカデミア』のアニメ版にして劇場版です。原作漫画・アニメ共に高い人気を誇っており、日本は勿論のこと、アメコミの影響を受けつつ、アメリカでも大人気という、いまのジャンプを代表する漫画の一つです。オリジナルストーリーでありながら、昨年の映画版も驚くほどの面白さでした。

そこで、アメコミとジャンプ漫画双方の視点から解説するような放送を行ないたいと思います。 ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)をお迎えしてお送り致します。



○1月20日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年1月号」(いつもと曜日が異なっております。ご注意下さい)

詳細未定。

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本の通販しています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109



○『やれたかも委員会』に取材協力しました。

『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。

ちなみに基になったお話はこちら

https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063





さて、今回のブロマガですが、前回の放送の補講というかまとめのようなものとして、『アナと雪の女王2』について解説させて下さい。



●なぜ『アナと雪の女王』は名作だったか

2013年に公開された『アナと雪の女王』は大ヒットしました。そればかりか、批評的な面からも賞賛されました。年を重ねると共に、時代を象徴する名作としての評価が定まっていっていると言っていいでしょう。

なぜこんなにも名作とされたかというと、おそらく、主人公(の一人)であるエルサのキャラクターに誰もが共感できるような多面性があったからです。


たとえばエルサは、王子と恋愛しません。王子との恋愛や結婚がゴールにならず自分の意思で人生を切り開いていくのが自己批評的な最近のディズニーのプリンセスもののお約束ですが、エルサのパートナーとなる男性キャラクターがいないのです。最後に氷漬けになったアナを救うのが王子様的山男(後述するように実は違うのですが)であるクリストフではなく、エルサの「愛」というのは象徴的です。

おそらくこれは意図的なもので、作り手は王子様との恋愛が全てを解決するというこれまでのディズニー作品への批評性をより強めたかったのでしょう。

アナとエルサという女性同士の「愛」もLGBTQへの目配せだと考えられます。ディズニーのプリンセスものを一貫した連作としてみた場合、エルサが同性愛者という解釈は根拠の無いものではありません。よくいわれたのは、氷の魔法を恐れてお城の奥に押し込められるエルサが、まるでクローゼットの奥に押し込められる同性愛者を連想させるという批評でした(このクローゼット云々から「カミングアウト」という言葉が生まれました)。スヴェンと同じく主人の内なる心の一部を表すキャラクターとしてのオラフは、まるでアナとエルサの間に産まれた子供のようです。


ただ、姉妹同士の近親愛に踏み込むことは躊躇われたのでしょう(イシスとオシリス、アブラハムとサラから『ゲーム・オブ・スローンズ』のラニスター姉弟まで、兄弟姉妹で恋愛したり子供を産んだりする民話や神話は沢山あるのですが)。結果、愛は愛でも「家族愛」がアナを救うというお話になりました。ここからエルサが、家族愛や人類愛はあっても性欲のない無性愛者という解釈が生まれました。


また、恋の歌を唄ったにも関わらず悪役となったハンス王子や、最後の最後で役に立たなかったクリストフのように、『アナ雪』では男が善きものや活躍すべきものとして描かれません。これは同じくディズニーの自己批評性から来ていますが、あまりのやりすぎっぷりにミサンドリーを見出す人もいるでしょう。


また、エルサはこのお話の中で唯一魔法を使える存在であり、何もないところから雪や氷をクリエイトできます。無から有を生み出せるのです。中盤、王族というくびきから解き放たれたエルサは思う存分魔法を使って氷の城を作るのですが、そしてこのシーンは大ヒットした”Let it go”の楽曲とミュージカルの力も相まって本当に素晴らしいのですが、まるでそれまで周囲の無理解でなにもできなかったクリエイターの若者が思う存分力を奮い、創作の悦びに歓喜しているようにもみえます。ここで映画が終わってもそれはそれで良しという名シーンでした。もっといえば、これはエルサが自分の能力を活かせる自分の居場所をみつける話であり、話はまだ終わっていないともいえます。


更に、エルサはまるで氷の能力を持つスーパーヒーローのようにもみえます。特に、「魔法のような超能力」が思春期のアイデンティティやユニーク&ウィークポイントを象徴し、全体としてビルドゥングスロマンの話になるようなスーパーヒーローに良く似ている……というのは前回のブロマガで書いた通りです。


これを更に推し進めた先に、ホームグロウン・テロリストとしてのエルサという見方があります。ホームグロウン・テロリズムとは自国産テロリズムのことですが、その多くが国内外の過激思想に共鳴するものの国内外の組織に関係無く、独自にテロを引き起こします。また(日本以外の多くでは)、シャルリー・エブド襲撃事件のように、社会に馴染めず阻害され敵意を抱いた移民二世によって引き起こされます。氷の魔法の能力のせいで、周囲に馴染めず疎外されたエルサが、魔法を暴走させた結果、夏だった王国が永遠の冬に閉ざされてしまうという展開は、まるでエルサが氷の魔法というテロを引き起こしたかのようです。

 

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