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【第211号】『映画ドラえもん のび太の月面探査記』とポスト・トゥルースと公式二次創作

2019/03/06 07:00 投稿

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マクガイヤーチャンネル 第211号 2019/3/6
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おはようございます、マクガイヤーです。

『スパイダーマン:スパイダーバース』を先行IMAX上映で観たのですが、ちょっと信じられないくらい面白くて、びっくりしました。

自分は同じ映画を上映期間中に二度観るということをあまりしないのですが(そんな暇があったら別の映画を観たいから)、本上映になったら吹替版で再度観たいくらい面白かったです。コミックの『スパイダーバース』の映画化というよりも、マイルス・モラレスを主人公とした『アルティメット・スパイダーマン』視点での『スパイダーバース』としたのが最大の勝因だと思います。将来MCUでマイルス・モラレスを出す場合に苦労するだろうなあ、といらぬ心配をしてしまうくらい面白かったです。

それにしても、脚本と製作を務めたフィル・ロードとクリス・ミラーが降板しなかったら、『ハン・ソロ』もこんな感じになってたかもしれないなあ、なんて詮無いことを想像したりしてしまいますね……




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○3月10日(日)19時~「俺たちも昆活しようぜ! Volume 2」

昨年の8月、ご好評頂いた昆虫回が帰って参りました。

今回も昆虫にちょう詳しいお友達のインセクター佐々木さん(https://twitter.com/weaponshouwa)をお呼びして、昆虫の魅力について語り合う予定です。

漫画に出てくる昆虫……果たしてどんな昆虫話が飛び出すのか?!

ちなみに前回の放送はこちら




○3月20日(水)19時~「映画『バンブルビー』公開記念 トランスフォーマー講座」(いつもと曜日が異なりますのでご注意下さい)

3月22日より映画『バンブルビー』が公開されます。

実写映画版『トランスフォーマー』の7作目にしてスピンオフですが、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』で名を馳せたトラヴィス・ナイトが監督を務め、既に公開された米国ではシリーズ最高傑作と評判も高いです。

そこで、当チャンネルでは映画公開前に、玩具を中心としてトランスフォーマーの魅力を再確認できるような放送を行います。


ゲストとして、前回の放送「トランスフォーマー 上級編」にも出演して頂いたタカラトミーの大西裕弥さん(https://www.instagram.com/yuyaaa0401/)とイラストレーターの中村佑介先生(https://twitter.com/kazekissa)に出演して頂きます。


ちなみに前回の放送「トランスフォーマー 上級編」はこちら




○4月5日(金)19時~「俺たちの『スーパーロボット大戦』」(いつもと曜日が異なりますのでご注意下さい)

3月20日にPlayStation 4/Nintendo Switch用ゲームソフト『スーパーロボット大戦T』が発売されます。また、年内にはスマートフォン用ゲームアプリで初のシミュレーションゲーム系システムが採用された『スーパーロボット大戦DD』が配信予定です。『スーパーロボット大戦』シリーズの最新作になります。

1991年のGB版『スーパーロボット大戦』発売から28年、シリーズも50作(数え方に諸説あり)を越えた「スパロボ」は、いつの頃からか単なるお祭りや公式二次創作やロボットアニメ回顧コンテンツではなく、「スパロボ」ならではの新しい魅力を産み出すようなムーブメントになってきました。

そこで、シリーズの歴史や魅力を振り返りつつ、「スパロボとはなにか?」に迫るような放送を行ないます。

アシスタント兼ゲストとして、友人の虹野ういろうさん(https://twitter.com/Willow2nd)をお招きする予定です。



○4月21日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2019年4月号」

詳細未定。

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○文学フリマに出店します。

5月6日に東京流通センター第一展示場にて開催される第二十八回文学フリマ東京に出展します。

藤子不二雄Ⓐ作品評論本を売る予定です。



○『やれたかも委員会』に取材協力しました。

『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。

ちなみに基になったお話はこちら

https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063





さて、今回のブロマガですが、『スパイダーバース』については色んな人が語っているので、『映画ドラえもん のび太の月面探査記』について語らせて下さい。ネタバレを含みますが、オトナはネタバレを頭に入れたまま観ても楽しい映画だと思います。





●サンプリングとノー説教

『のび太の月面探査記』は、ここ最近のドラ映画に顕著な、藤子・F・不二雄が関与した『映画ドラえもん』とその原作である『大長編ドラえもん』の要素を組み合わせた、ベスト版的なつくりになっています。

ドラえもんのひみつ道具が契機となった異世界の冒険に、異世界出身の同年代とマスコット的なゲストキャラクターが絡んでくるのはいつものことですが、ディストピアでのクーデターは『宇宙小戦争』『アニマル惑星』、中盤での異世界への移動手段の喪失と復活は同じく『アニマル惑星』、サプライズを成立させる伏線としての予言は『大魔境』、ラスボスは『海底鬼岩城』、しずかちゃんと女性ゲストキャラクターが別行動して解決に繋がる構成は『鉄人兵団』、お別れは『宇宙開拓史』……といった具合です。探せば他にもあるでしょう。

『映画ドラえもん』ももう39作目、うち6作はリメイクですが、ここまでシリーズが続けばセルフオマージュや引用が沢山ある作品になるのは仕方のないところです。むしろオトナの観客にとっては、『007』『スター・ウォーズ』のように、セルフオマージュや引用が楽しみの一つになることもあるでしょう。


問題は、セルフオマージュや引用が「単なるサンプリング」にならず、一本の映画として面白いかどうかです。思い返せば、昨年の『のび太の宝島』は「単なるサンプリング」どころか、まるでAIを使って『大長編ドラ』の名場面を抜き出してつなぎ合わせたかのような映画でした。


嬉しいことに、『月面探査記』は最近のドラ映画の中では、飛びぬけて面白い映画です。


なにが良いかって、まず説教が無いことです。(まるで一緒に観に来た親世代の客の心情を勝手に代弁するかのように)大人のキャラクターが子供に向かって長々と説教したり、ドラえもんが保護者のように長々と演説したり、しずかちゃんが長々とスピーチしたり……といった場面があると、もう本当に本当に興醒めしてしまうわけです。いかにも会議で「一緒に来た親御さんが満足するシーンをつくろう」、「家に帰ってから考えてもらえる“お土産”になるようなシーンを作ろう」みたいなことが話され、盛り込まれたかのようなシーンがあると、冷めちゃうわけですね。

あ、ドラえもんがラスボスに向かって説教をかましたり……はちょっとありましたが、これは許容範囲でしょう。

同じように冷めてしまうシーンとして、「なんてことない幸せ」をなんてことある過剰演出で描くシーンというものがあり、残念なことに『月面探査記』にも多数あったのですが、これはもう仕方ないことかもしれません。「なんてことない幸せ」は大半の観客が気づかないくらいなんてことない演出で描いてほしいものですが、子供向けだと難しいのかなあ。でも、ジブリアニメはわりとやってますよね。


もう一つは、後述するように、「創世記」テーマに真正面から取り組んだことでしょう。


●Fにとっての「創世」テーマと箱庭創世王国


手塚治虫にとっての『ファウスト』や、石森章太郎にとっての「新人類」のように、Fにとって「創世記」はライフワークのようなテーマでした。このことはF自身も公言しています。


レギュラー版『ドラえもん』では、「地球製造法」、「のら犬「イチ」の国」、「ハロー宇宙人」、「ガラパ星からきた男」そして「異説クラブメンバーズバッジ」などで科学技術による生命進化が描かれています。「地球製造法」はF版『フェッセンデンの宇宙』といえるお話です。「のら犬「イチ」の国」は後年『のび太のワンニャン時空伝』の元作品となりました。『ガラパ星からきた男』でのび太が作ってしまうアリ人間は『のび太の創世日記』のホモ・ハチビリスを連想させます。そして「異説クラブメンバーズバッジ」は『月面探査記』の元ネタでもありますが、ここででのび太が作る地底国はどことなく『竜の騎士』を思わせるところもあります。

SF短編でも、その名もずばり『創世日記』、『神さまごっこ』、『うちの石炭紀』と何度もネタにしています。『創世日記』はこれまたF版『フェッセンデンの宇宙』である「天地創造システム」を手渡された中学生が主人公ですが、タイムパラドックスを含めて『大長編ドラ』と多くの共通点を持っています。『神さまごっこ』は世界観の構造やオチも含めて、『のび太の創世日記』の裏バージョンとも呼べる短編です。『うちの石炭紀』ではゴキブリが知性化し、人間以上の科学力を身につけ、核実験まで行います。身の危険を感じた主人公がゴキブリ文明を滅ぼそうとするその時、「他の生物をふみにじって栄えようという発想は人間だけのものだ」と宇宙へエクソダスするのが大いなる皮肉です。

そして、『大長編ドラ』の中だけでも、『鉄人兵団』『竜の騎士』『アニマル惑星』『創世日記』などで、科学技術による知的生命体と文明の創世が描かれています。『鉄人兵団』ではしずかちゃんが「神さま」に直接会ってお願いし、『竜の騎士』ではドラえもんが「神さま」と呼ばれるほど積極的に関与しています。


他に、F作品に特徴的なテーマとしては「タイムトラベル」、「異世界」などがありますが、中でも特筆すべきは「箱庭」でしょう。Fが幼少期からプラモデルや鉄道模型やジオラマ製作にハマっていたことは有名ですが、F作品では単なる模型製作ではなく、そこを思いのままにクラフトし、自分だけの「王国」を作るという展開が頻出するのです。

特に注目してしまうのは、『四畳半SL旅行』と『山寺グラフィティ』の二編でしょう。前者は、鉄道模型のレイアウトを趣味とする少年が、空想と現実の壁を破り、ジオラマ世界に魂が囚われてしまうというお話です。後者は、死んだ幼馴染が成長した姿となったような女性を主人公だけが認知するという、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を二六年前に三六ページでやっていた、というお話ですが、面白いのは幼馴染が成長する幽霊となった理由で、幼馴染の父親は、主人公と幼馴染が恋心を通わせた洞窟に、食器ひとそろい、女学院の入学案内、東京行きの電車の切符、東京名所絵葉書といっしょに、なんとミニチュア家具を山に納めていたのでした。

この二作のオチから受ける読後感は正反対ですが、「箱庭」内のキャラクターには魂があり、そこで生活し、時には成長さえしているという、明確な世界観が共通しています。


なぜFは「創世記」や「箱庭」テーマにこだわるのでしょうか?

もしかするとFは自分の作品を箱庭のようなものと考えていたのかもしれません。箱庭の中で自分が考えたキャラクターが動き、冒険をし、淡い恋をしたり友情を育んだり感動したりする……そこには明らかに魂がある、そう考えていたのかもしれません。


『大長編ドラ』で、真正面から「創世記」テーマを扱ったのが『のび太の創世日記』です。

ここでのび太とドラえもんは、まるでのび太やしずかちゃんの別バージョンのような人間たちが住む「新地球」を想像してしまいます。クライマックスでは「新地球」におけるもう一人ののび太である「ビタノ」と未来からきたドラえもんのようなロボット「エモドラン」に助けてもらうという、いかにもFらしいSF馬鹿話的展開になりますが、これは見方を変えればFがメタ的に「漫画を描く自分」を作中で表現しているともいえます。

そして、のび太は「そこまで大きく育った社会は、もうぼくの手におえません」と、まるでFにとっての『ドラえもん』卒業宣言とも理解できる台詞をいうのです。


……というようなことを、本ブロマガで書いたり、同人誌としてまとめたりしましたね。

それにしても『のび太の創世日記』のプロットは、Fが亡くなった今となっては、会議で提案したとしても受け入れてもらえないのではないでしょうか。



●ポスト・トゥルースと二つの箱庭創世王国と公式二次創作

そんなわけで、Fが亡くなった後に作られた『大長編ドラ』では、ドラえもんのひみつ道具を使って「箱庭」のように自分たちの王国を作る――今の(ゲーム)用語でいうところのクラフト要素とでもいうべきものが、ほぼ毎回出てきます。一方で、「創世記」テーマは『のび太のワンニャン時空伝』くらい、と少ないです。

 

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