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マクガイヤーチャンネル 第177号 2018/6/27
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おはようございます。マクガイヤーです。

そろそろ部屋を片付けたいのですが、忙しすぎて時間がとれません。

今月乗り切ればなんとかなるんだけどなー。


マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○6月30日(土)20時~

「しまさんとマクガイヤーの推しNetflix」

Netflix、Hulu、dTV、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ……と、様々な動画配信サービスをネットで愉しむことができる昨今ですが、大きな問題があります。

それは、「配信されるコンテンツが多すぎてどれから観れば良いのか分からない」もしくは「面白いコンテンツを見逃してしまう」といった悩みです。

そこで、編集者のしまさんとマクガイヤーが、Netflix配信ラインナップから独断と偏見で「推し番組」を紹介し合い、魅力を語り合います。

久しぶりのしまさん出演回です。乞うご期待!



○7月7日(土)20時~「最近のマクガイヤー 2018年7月号」

最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

・最近の日大

・眉村ちあき

『万引き家族』

『V.I.P. 修羅の獣たち』

『ニンジャバットマン』

『ハン・ソロ』

『生理ちゃん』

『MSVジェネレーション』

その他詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○7月28日(土)20時~「ゾイド大特集」

2018年6月より、久しぶりの「ゾイド」新シリーズである「ゾイドワイルド」の展開がアナウンスされています。6/23頃から新しいキットが発売される共に、7/7より新アニメ『ゾイドワイルド』も放送されるそうです。

ゾイドといえば昭和の一期と平成の二期それぞれで大人気を誇ったシリーズですが、いよいよ復活して三期目の歴史を紡ぐことができるのかどうか、メカボニカやスタリアスの頃から親しんでいた自分としては、気が気ではありません。

そこで、これまでのゾイドの歴史を振り返ると共に、ゾイドの魅力について語る放送を行ないます。

今回は主に昭和ゾイドについて語ることになります。

ゲストとして、YouTube動画などで活躍しているじろす(https://twitter.com/jiros_zoids)さんに出て頂く予定です。

虹野ういろう(https://twitter.com/Willow2nd)おじさんもきっとまた出てくれるよ!



○8月(日時未定)20時~「最近のマクガイヤー 2018年8月号」

最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○8月18日(土)20時~「俺たちも昆活しようぜ! 昆虫大特集」

7/13~10/8まで上野の科学博物館で昆虫特別展も開催されます。

夏といえば海に山に恐竜、そして昆虫! いま、昆虫が熱い!!

……というわけで、今年の夏のマクガイヤーチャンネルは昆虫を大特集する放送を行ないます。

昆虫に詳しいお友達の佐々木剛さん(https://twitter.com/weaponshouwa)をお呼びして、昆虫の魅力について語り合う予定です。





○Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





さて、今回のブロマガですが、引き続いて藤子不二雄Ⓐ作品、それも『魔太郎がくる!!』について書かせて下さい。


●封印された『魔太郎』

有名な話ですが、『魔太郎がくる!!』には「封印」された部分があります。

これまでに世の中に出た『魔太郎』の単行本は5レーベルあります。


①『週刊少年チャンピオン』での『魔太郎』の連載に合わせて1973年から順次刊行されていった秋田書店チャンピオンコミックス版『魔太郎がくる!!』全13巻。

②1984~91年にかけて刊行された中央公論社による藤子不二雄全集の意味合いを持つ「藤子不二雄ランド」レーベルで刊行された『新編集 魔太郎がくる!!』

③1997年から、②をほとんどそのまま文庫化する形で刊行された中公文庫コミック版『魔太郎がくる!!』全8巻

④1999年から「本家」である秋田書店から再度刊行された『新装版 魔太郎がくる!!』全12巻

⑤2004年から、②を再刊する形で刊行された「藤子不二雄Ⓐランド」版『新編集 魔太郎がくる!!』全14巻


各レーベルごとに収録話数に細かな違いがありますが、これらは大きく2つに分けられます。初出時ほぼそのままといえる①と、時代に合わせて削除・書き換えが行なわれた②~⑤の2種類です。

具体的にどのような削除・書き換えが行なわれたかというと、まず差別語関連の台詞です。「黒ん坊」や「きちがい」、「ガン気狂い(クレージー)」、「カメラ狂」、「片目」、「カタワ」、「女中」、「ウスノロのデブ」、「酋長」、「皇太子」……といった、70年代まではOKでも、80年代(の特に後半)以降は問題になりそうな台詞が軒並み書き換えられています。全て、自主規制による書き換えです。

ただ、これらは88年の「黒人差別をなくす会」による『ちびくろサンボ』抗議事件以降よくみられる現象だったりします。70年代以前の漫画を80年代以降も出版しようとする時に台詞が書き換えられるのは『魔太郎』に限ったことではないのです。藤子ⒶやFだけでなく、手塚治虫も石ノ森章太郎も、70年代以前の漫画作品は同様の台詞書き換えが行なわれています。最近有名になったのは1976~2016年まで40年間にわたって長期連載された『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で、連載初期のまだ痩せていて荒々しさが残っていた両津勘吉の台詞が、連載終了時に刊行されていた版を重ねた単行本では穏当な表現に書き換えられていたのでした。


『魔太郎』で特徴的なのは、台詞のみならず作中の表現が書き換えられたり、話をまるごと削除されたりしていることです。

たとえば①と②~⑤の間では大きな違いとして以下のようなものが挙げられます。


まず「うらみの2番(第2話) 鉄のキバがひきさいた夜」では、結末が異なります。

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①では、憧れのヒロイン由紀子さんに下半身を露出させられるといういじめをうけた魔太郎が、いじめっ子二人を深夜の工事現場に呼び出し、ショベルカーのクラッシャーで惨殺します。

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更に翌朝、死体を埋めたと思しき工事現場にコンクリが流され、証拠が完全隠蔽されるさまをなんともいえぬ表情でみつめる魔太郎のコマで漫画が終わるのです。少年誌の主人公であるにも関わらず、魔太郎は完全にいじめっ子を殺しています。第一話ではいじめっ子を魔力で病院送りにしただけでしたので、ここで『魔太郎がくる!!』史上初の殺人が描かれたことになります。

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これが②~⑤では、「うらみ念法怪獣変わり」によって怪獣と化したショベルカーがいじめっ子を襲うという、ファンタジックな結末に改変されています。いじめっ子が死んだかどうか――魔太郎によって殺されたかどうかははっきりしません。『魔太郎』に登場するいじめっ子はゲスト扱いで、ほとんど再登場しないのです。多くの読者は、いじめっ子たちは魔太郎の魔力で「おしおき」されただけで、命までは取られていないと判断するでしょう。改変の結果、より漫画的・象徴的な結末になっています。


「うらみの3番」~「10番」、「12番」「13番」(いずれも初出時の番号)は、①からまるごと削除です。

内容はというと、行き過ぎたいじめを受けた魔太郎がいじめられた相手に仕返しをするという基本的なプロットに沿ったものなのですが、仕返しの方法が特徴的なのです。


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・「うらみの3番 ゴミはふくろにしまつしよう」では、シンナー大好きなフーテンを大きなビニール袋の中に誘導し、バットで撲殺します。透明な袋の中が子宮的なユートピアとして描かれるのは『怪物くん』の「シャボン玉の中のすてきな世界」と同じですね。

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・「うらみの4番 サルが空から落ちた!!」では、魔太郎の黒い手帳を読むために魔太郎パパの上司である親の力まで使って圧力をかける猿島くんを屋上から落として転落死。事前に手すりの脆弱箇所を調べ上げ、事故にみせかけます。

・「うらみの5番 おかえしはコンクリート・パンチで」では、由紀子さんに暴力を奮ったいじめっ子を石膏ならぬコンクリートで固めたギブスの腕で殴って半殺しです。

・「うらみの6番 黒メガネをかけた中学生」と「うらみの7番 サングラスをとればただの人!!」は初の前後編。ウスラバカだけど肉体派+脆弱だけと頭脳派の中学2年生コンビ。彼らは魔太郎に対し、交通量の多い道路の横断歩道を信号が赤になった途端にダッシュを強制するといういじめを行ないます。魔太郎は、ウスラバカに肉汁をかけて土佐犬に襲わせる、頭脳派のサングラスをとりあげて更なる上級生である3年生にリンチさせます。更に、最後のコマでは赤信号ダッシュも追加することを示唆します。

・「うらみの8番 暴走カーを暴走させた!!」では、家族で楽しいドライブ旅行中に車をぶつけて脅迫までしてきた乗用車の暴走族に対し、スパナで殴って気絶させ、その間にアクセルを足に縛り付け、ダンプにつっこませて殺します。これはブラックユーモア短編『ブレーキ踏まずにアクセルふんじゃった』を踏襲したオチですね。

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・「うらみの9番 おぼれ方教えます」では、戸塚ヨットスクールを思わせる暴力的スイミングスクールの合宿に送られた魔太郎が、合宿所からの脱走防止に仕掛けられていたトラバサミを逆利用。プールにトラバサミをしかけ、体罰を奮いまくる暴力コーチを溺死させます。

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・「うらみの10番 マムシがマムシにかまれた!!」では、少年院から脱獄し、魔太郎を下僕にしようとする不良少年「間虫」に対し、マムシにみせかけた蛇皮のベルトを投げつけ、なんとショック死させます。晩のニュースできちんと「ショック死」と報道されるのがたまりません。

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・「うらみの12番 ニセ教師はイジメの先生だった」と「うらみの13番 いじめるのも相手を選べ!!」も前後編。子供の頃に予科練くずれの教師にいじめられたコンプレックスを晴らすため、魔太郎の中学に入り込み、教室をジャックするニセ教師。『鈴木先生』の最終エピソードみたいな話ですが、あんなスッキリした終わり方にはなりません。教室ジャックして何をやるかと思ったら、『黒ベエ』の「しごくものしごかれるもの」と同じ自転車こぎや、生徒間での殴り合いの強制です。人質になった魔太郎は、まず隙をみて消火器で目潰し、ニセ教師の武器(刃物入りのムチ)を奪って反撃、最後は刃物をわざと渡し、乗り込んできた警官隊の前に誘導して射殺させます。


これら改変や削除されたエピソードには、はっきりと共通する傾向が二つあります。

一つは、復讐の対象が死んだり、後遺症を負いそうなほど半殺しの目にあったりすることです。少年誌の主人公に殺人などさせられないという「良識」や「倫理」が働いたのかもしれません(『こち亀』でも、「ロシアンルーレットで遊んでいて即死」という台詞が「マヨネーズの一気飲みが得意だった」に改変されていたりします)。他にも、ハサミが墨汁になったり、出血表現がホワイトで消されていたりと、「死」や「殺人」に繋がる表現が隠蔽・書き換えられています。

もう一つは、「マムシがマムシにかまれた!!」を除いて、「うらみ念法」や「黒魔術」のような超自然的な力ではなく、実際に実現可能な物理的作用で復讐を果たしていることです。漫画を離れた現実では、粘土像を通した呪いの伝達なんて不可能ですが、ショベルカーでの惨殺やバットで撲殺や屋上からの転落死偽装は、実際に実現可能です。


そして、以後の『魔太郎』は、実際に実現可能な方法での復讐は描かれなくなり、超自然的な力を用いた復讐が大半を占めるようになります。


この作風の変化について、Ⓐはエッセイでこのように書いています。