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マクガイヤーチャンネル 第176号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その9 『魔太郎がくる!!』その1】

2018/06/20 07:00 投稿

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  • Dr.マクガイヤー
  • 評論
  • 漫画
  • 童貞
  • 藤子不二雄Ⓐ
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マクガイヤーチャンネル 第176号 2018/6/20
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おはようございます。マクガイヤーです。

今月は涼しい日が続くので風邪ひきそうで怖いです。


マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○6月30日(土)20時~

「しまさんとマクガイヤーの推しNetflix」

Netflix、Hulu、dTV、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ……と、様々な動画配信サービスをネットで愉しむことができる昨今ですが、大きな問題があります。

それは、「配信されるコンテンツが多すぎてどれから観れば良いのか分からない」もしくは「面白いコンテンツを見逃してしまう」といった悩みです。

そこで、編集者のしまさんとマクガイヤーが、Netflix配信ラインナップから独断と偏見で「推し番組」を紹介し合い、魅力を語り合います。

久しぶりのしまさん出演回です。乞うご期待!



○7月7日(土)20時~「最近のマクガイヤー 2018年7月号」

最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

・最近の日大

・眉村ちあき

『万引き家族』

『ニンジャバットマン』

『ハン・ソロ』

『生理ちゃん』

『MSVジェネレーション』

その他詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○7月28日(土)20時~「ゾイド大特集」

2018年6月より、久しぶりの「ゾイド」新シリーズである「ゾイドワイルド」の展開がアナウンスされています。6/23頃から新しいキットが発売される共に、7/7より新アニメ『ゾイドワイルド』も放送されるそうです。

ゾイドといえば昭和の一期と平成の二期それぞれで大人気を誇ったシリーズですが、いよいよ復活して三期目の歴史を紡ぐことができるのかどうか、メカボニカやスタリアスの頃から親しんでいた自分としては、気が気ではありません。

そこで、これまでのゾイドの歴史を振り返ると共に、ゾイドの魅力について語る放送を行ないます。

今回は主に昭和ゾイドについて語ることになります。

ゲストとして、YouTube動画などで活躍しているじろす(https://twitter.com/jiros_zoids)さんに出て頂く予定です。

虹野ういろう(https://twitter.com/Willow2nd)おじさんもきっとまた出てくれるよ!



○8月(日時未定)20時~「最近のマクガイヤー 2018年8月号」

最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○8月18日(土)20時~「俺たちも昆活しようぜ! 昆虫大特集」

7/13~10/8まで上野の科学博物館で昆虫特別展も開催されます。

夏といえば海に山に恐竜、そして昆虫! いま、昆虫が熱い!!

……というわけで、今年の夏のマクガイヤーチャンネルは昆虫を大特集する放送を行ないます。

昆虫に詳しいお友達の佐々木剛さん(https://twitter.com/weaponshouwa)をお呼びして、昆虫の魅力について語り合う予定です。





○Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





さて、今回のブロマガですが、引き続いて藤子不二雄Ⓐ作品、それも『魔太郎がくる!!』について書かせて下さい。


●『魔太郎がくる!!』とその魅力

『魔太郎がくる!!』は1972年から1975年まで「週刊少年チャンピオン」で連載された藤子不二雄Ⓐの代表作の一つです。藤子不二雄Ⓐについて詳しくない方でも、本作の名前やキャラクター、「コノウラミハラサデオクベキカ」というきめ台詞を知っている方は多いのではないでしょうか。


主人公である「浦見魔太郎」は、パッとしない見た目、内気で弱気で暗い性格と、典型的ないじめられっ子です。いつもオドオドしているせいか、様々な人物からいじめを受けますが、限度を越えたいじめや、家族や大事な人(主にクラスメイトの由紀子さん)に影響が及ぶと、凄惨な方法で復讐する……というのが毎回のプロットです。

『怪物くん』『ハットリくん』『笑ゥせぇるすまん』『まんが道』『プロゴルファー猿』……といった他の代表作がアニメやドラマや映画として何度も映像化されているのに比べて、『魔太郎がくる!!』は一度も映像化されていません。これは、後述するようなⒶの断固たる意思があったからですが、一度も映像化されていないにも関わらず、『魔太郎がくる!!』の知名度が高いのは、それだけ本作が面白かったから――漫画家としてのⒶの思いや力が入っていたと共に、人の心を掴む魅力があったからでしょう。


本作を描いた動機について、Ⓐはこのように語っています。


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ぼくは自分の子どものころのいじめられっこの心情を、漫画に描いてみようと思った。(略)ただし、いじめられっこが、いじめっこにいつもいじめられてばかりいる漫画を描いたのでは、フラストレーションがたまるばかりでカタルシスがないし、第一漫画にならない。そこで主人公を魔界の少年にした。ふつうはよわよわしい卑屈な弱虫少年。しかし、実はその裏にすごい魔力を持っている。

『Aの人生』講談社、2002年)

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僕は子供のころ、小僧さんが何人もいるような、割りと大きなお寺の坊ちゃんでしたから、坊ちゃん坊ちゃんってちやほやされて育ちましてね。幼稚園は東京で、小学校へは、当時、国民学校っていってたんですが、富山の氷見っていうところへ帰って、入学したんです。

氷見は猟師町で、子供たちは、小さいころから親と一緒に船に乗ってるから、身体、すごいんですよ。僕とは、ほんとに、大人と子供くらいに違う。教室でも、僕は一番前の席でね、先生が教室に入ってくると、級長が「起立!」って号令かけるでしょう。すると先生が「我孫子(藤子不二雄Ⓐの本名)、なぜお前は立たないんだ?」って。僕は「立ってますぅ!」って。みんな、ワーッとうけた。勿論、先生は分かっていていうわけ。

当然いろんないじめがあって、僕は電熱器ってあだ名つけられた。赤面症なんですよ。当時、ヤカンでお湯を沸かすのに電熱器使ってて、スイッチ入れるとニクロム線がすぐに赤くなるんです。電熱器電熱器ってね。今ほど残酷ないじめじゃないけど。後で、『魔太郎がくる!!』で、いじめを題材にして描いたのも、自分の体験があったからでね。その頃は、いじめなんて、社会的な話題にもなってなかったですからね。

『ビッグ作家究極の短編集 藤子不二雄Ⓐ』巻末インタビュー)

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実際、『魔太郎がくる!!』には、いじめられっ子のリアルさがよく描かれています。


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まず、一読すれば誰もが気づくと思うのですが、主人公である魔太郎のキャラクターが暗い! 少年誌にあるまじき暗さです!!


そして、魔太郎が受けるいじめ描写がリアルです。

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学校という日常に普通に存在する暴力の怖さ、野生動物のようないじめっ子に目をつけられる怖さ、弱者が感じる本能的な怖さのようなものが、しっかりと描かれています。


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これらは、たとえば藤子F不二雄の描くいじめ――『ドラえもん』におけるジャイアンがのび太に行なういじめと比較すると、よく理解できるかもしれません。

Ⓐの描くいじめは、Fに比べて戯画化されておらず、描写も細かく、リアリティが高いのです。


最近の少年漫画では滅多に表現されないリアルで陰湿な暴力、テレビのドラマやバラエティー番組では全く出てこない流血も、『魔太郎』ではしっかり描かれます。


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そして、いじめがある限度を越えた時、「コノウラミハラサデオクベキカ」というきめ台詞と共に、魔太郎はあの手この手で残酷な復讐を果たします。被害者が一転して加害者、いや復讐者に変化するわけです。これまで弱者であった魔太郎が、うらみ念法で、黒魔術で、あるいはいじめ加害者を越える暴力で、強者になり、残酷な復讐を果たします――しかもそれ以前に魔太郎が受けていたいじめがあまりにも酷いものだったので、読者は魔太郎に感情移入せざるをえない――このカタルシスこそが『魔太郎』最大の魅力です。


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更に初期数話では、復讐を果たした後の魔太郎が、暴力を奮ったことへの空しさを表現するようなコマまで描かれます(後述しますが、文庫版や新装版では削除されているのが惜しいところです)。


更に、魔太郎にとって、自分に危害を加えてくる対象は単に学校のいじめっ子だけではありません。連載が進むと、会社の上司や水泳教室のコーチ、学校の先生のような組織やシステムの威をかって我が侭し放題の中年男性、芸能界の人気スターや大金持ちの息子のような社会的成功者の座にあぐらをかいて性格が捻じ曲がっている者、あの手この手で他人の財産をむしり取ったり魔太郎を都合の良い子分にしようとする犯罪者など、弱者をいじめて搾取しようとする存在すべてが魔太郎にとっての「敵」であり「悪役」になります。



●Ⓐの分身としての魔太郎

これらは、Ⓐが子供や学生時代に受けたいじめに対する思い、弱者としての思いがあった上での描写であることは当然ですが、その他の部分にも魔太郎がⒶの分身としか思えない描写が続出します。

 

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