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マクガイヤーチャンネル 第167号 2018/4/18
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おはようございます、マクガイヤーです。

先日の緊急ニコ生特番「追悼高畑勲 勲の犯した罪と罰」は如何だったでしょうか?

あまり追悼にならなかったかもしれませんが、映画監督高畑勲についてひとしきり語ることができ、満足しております。




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


○4月28日(土)20時~

「『レディ・プレイヤー1』と『ゲームウォーズ』とスピルバーグ」

4/20よりスピルバーグの新作映画『レディ・プレイヤー1』が公開されます。

本作はアーネスト・クラインが2011年に発表したオタクコンテンツのスーパーロボット大戦のようなSF小説『ゲームウォーズ』を原作としています。VR空間を舞台にデロリアンやビバップ号が疾走し、レオパルドンやボルトロンがバトルするさまに、そのスジの読者は狂喜したものでした。

そんな『ゲームウォーズ』が映画化される、それもスピルバーグの手によって! スピルバーグによる有名小説やコミックの映画化は、ガッカリする結果になることもままあるのですが、予告をみる限り誰もが納得する映画化のようです。また、スピルバーグが全作品に渡って追い求めてきたテーマ「大人になること」「Homeを求めること」も当然のように含まれているでしょう。

そこで、これまでのスピルバーグ作品を振り返ると共に、『レディ・プレイヤー1』とその原作『ゲームウォーズ』について解説するのニコ生放送をお送りします。

アシスタントとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。



○5月3日(木)20時~

「『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はなにがインフィニティなのか」

4/27に期待の新作映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開されます。

究極のお祭り映画にしてイベント・ムービーである本作を観ない人なんていないと思いますが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズもこれで19作品目、ここからMCUに入るのに躊躇している人もいるかもしれません。

そこで、これまでのマーベル映画作品を振りかえると共に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を100倍楽しめるような放送をお送りします。

ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。



○5月26日(土)20時~

「石ノ森ヒーローとしての『仮面ライダーアマゾンズ』」

『仮面ライダーアマゾンズ』はシーズン1、2がAmazonプライム・ビデオで独占配信されている特撮シリーズです。

いわゆる平成ライダー1期のスタッフが『アギト』でも『ファイズ』でも『カブト』でもやれなかった仮面ライダー、あるいは石ノ森ヒーローとしての限界描写を突き詰めたような内容で、自分はおおいに楽しみました。

そんな『アマゾンズ』がこの春『仮面ライダーアマゾンズ完結編(仮)』として、劇場公開されるそうです。それも、これまで意欲作(と自分には思える)春のスーパーヒーロー大戦映画枠を廃止してまで公開する劇場版です。未だ詳細な公開日が発表されていないことが気になりますが、大いに期待しています。

そこで、これまでの『仮面ライダーアマゾンズ』を振り返ると共に、あるいは石ノ森ヒーローとしての『アマゾンズ』に迫りつつ、劇場版を予想するニコ生放送をお送りします。

今度のシロタロスは裏切らないぜ!

アシスタント兼ゲストとして、友人の虹野ういろうさんをお招きする予定です。




○6月初頭(日程未定)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年6月号」

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○5月5日(土)開場12時、開演13時~

「山田玲司とDr.マクガイヤーのエロコンテンツバトル」 in 阿佐ヶ谷ロフトA

漫画家山田玲司とDr.マクガイヤーによるプレゼンバトル第二弾。

今回のバトルテーマは素直に「エロコンテンツ」!

「実はエロい」「意外にエロい」「本当はエロでしかない」……漫画やテレビや映画やその他のコンテンツについて、熱くトークバトルします。

果たしてどんなエロ話が飛び出すのか?!

イベント詳細は↓

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/86342

チケットは4/6 12時より↓から購入できます!

http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002257405P0050001P006001P0030001



○『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』トークイベント@川越スカラ座

映画評論家の映画評論家の町山智浩さんが川越スカラ座で行なう『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のトークイベントに、自分も登壇することになりました。

尊敬する町山さんのイベントということで今から緊張していますが、なにしろ『ロブスター』のヨルゴス・ランティモス監督の新作にして衝撃作です。全員が映画を観た直後ということで、面白いトークイベントになると思います。チケットが残り少ないらしいのでご注意下さい。

詳細は↓をご参照下さい。

http://event.k-scalaza.com/?eid=1264487





○Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





さて、今回のブロマガですが、ニコ生の補講というかまとめのようなものを書かせて下さい。



●高畑勲と喫煙

高畑勲監督の死因は肺がんでした。

昨年11月に高畑監督に会った関係者によると、高畑監督は以前よりも痩せていて、歩く時は体を支えられていたそうです。「子供のような好奇心でキラキラした表情が印象的な人だが、元気がなく、全く違った人みたいだった」というコメントが報道されています。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180406-00000503-sanspo-ent


それでも、今年の2月には故郷の岡山で講演をしていたりしますので、周囲の関係者にとっても突然の死だったのかなとも思います。

https://www.asahi.com/articles/ASL2C3SD0L2CPPZB003.html


高畑監督は、禁煙を始めたという話を『アニメーション、折りにふれて』の最後におさめられたエッセイ「禁煙レポート」に書いています。


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喫煙は、たしかに健康上、いろいろと問題はあろうかとおもいます。他人に与える実害と不快感も無視できません。そのせいで、ここ二、三十年ほどの間、喫煙の効用が説かれることはついぞなく、その害ばかりが強調されるようになりました。アメリカでは、大失敗の禁酒法と違い、禁煙運動は大成功、上流階級や知識人僧に、もはや喫煙者は(表面的には)皆無といってよく、喫煙者は自己抑制のできない依存症患者・無能力者と見なされます。ピクサーのジョン・ラセター監督の子供たちが二馬力を訪れたとき、尊敬すべき宮崎駿監督が平然と煙草を吸うのを見て、激しいショックを受けたと聞きます。

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こんなご時世なのに、なぜ禁煙しないのか。ご時世に対する抵抗? いえいえ。単純にやめたくなかったからです。喫煙行為には、害だけでなく、はっきりと大きな効用があります(前述した以外に、ボケにくい、というアメリカの統計結果もあるはず)。自分にとっての効用の方が害を上回ると思っているうちは、何事であれ、やめる気になるはずはありません。害には目をつむります。喫煙はその典型例です。それに、もし喫煙が原因の疾患、たとえば肺癌に冒される危険性があったとしても、この歳になって今さらやめても危険性の軽減はほとんど見込めず、もはや手遅れだろう、というあきらめもあります。

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今年九月、八月に健康診断をして頂いた日本テレビ麹町診療所の久保田有紀子先生から、診断の結果、このまま喫煙を続けていると、五年か十年後には激しい息切れによって呼吸困難に陥る可能性が非常に高いが、今やめればそのようなことにならなくて済む。だからこの際、是非とも禁煙すべきである、との懇切なご忠告を、再三にわたって頂きました。

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十月になっても、つい忙しさにかまけて、Y内科に足を運ばぬまま日が過ぎていたある日のこと、宮崎駿氏と鈴木敏夫氏から突然呼び出しがかかり、一室に連れ込まれ、禁煙のための行動を起こすことを強く勧告されたのです。こと喫煙に関しては、強固な団結を誇ってきた私たち三人でしたが、お二人の、「同志を裏切っても構わぬ、お前の健康が第一だ」との友情あふれる忠告には、木石ならぬ身、さすがの私も心を動かさずにはいられなかったのでした。

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十月二十九日当日は社命が発せられ、敵前逃亡を防ぐためか、お目付け役として西村義明氏(引用者注:当時製作中だった『かぐや姫の物語』のプロデューサー)が私の家まで派遣されました。

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待合室で呼び出しを待ちながら、例の妙薬について思いをめぐらせました。煙草をやめないまま、薬を服用しているだけで煙草嫌いになれる、そんなうまい話がありうるだろうか。吸っていて煙草がまずくなるような薬ならば、おそらく途中で煙草ではなく薬の方を飲まなくなるのではないか。成功させるには薬を強制的に飲ませなければならず、薬を強制的に飲ませるためには他の依存症同様、入院(煙草からの隔離)が必要なのではないか。

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そうこうするうちに、アンケート用紙が手渡され、そこに必要事項を書き込むよう指示されました。(中略)私としては、喫煙が今後の自分にとってどう「良くないのか」それをはっきりさせるために相談に来たつもりなので、「喫煙はよくないこと」を当然の前提にしたアンケートには、まともに答えようがなかったのです。

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大変ドライで分かりやすいご説明でした。どっちみち、喫煙によってすでに負ってしまったハンデはもはや取り返し不能なんだ、と感慨にふける間もなく、「さてそこで、さきほどのアンケートですが」と先生は一項目ずつを確認しつつそれを点数に換算して集計されました。(中略)この結果では、健康保険の適用はできない、お気の毒だが自費でやって頂くしかない、約六倍の金額になる、厚生労働省がそう定めているのだ、とのご託宣が下りました。

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私としましては、(中略)まずは先生にご相談しようと思い、そのために、偽らざる気持ちを正直にアンケートに反映させたのでした。

私は大変理不尽な思いがし、裏切られた気持ちになりました。

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私は図々しく言ってみました。「先生、もし私が保険適用を受けようと思えば、先生のところは今日限りということにして、別の内科であらためてアンケートに“適切に”答えれば、それが可能だということになりますよね」。お若いY先生は苦笑しながら「ま、そういうことにはなりますが……」と言葉をお濁しになりました。

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このエッセイ、元はジブリの配布する無料小冊子『熱風』2010年1月号に書かれていたものです。

高畑監督には「アニメ界最大の変人」の異名がありますが、さすが高畑勲という感じです。



●高畑勲とイタリア・ネオリアリズム

高畑勲監督はキャリアの初期に『アルプスの少女ハイジ』『母を訪ねて三千里』『赤毛のアン』の演出(監督)で有名になりました。これに『じゃりん子チエ』(の劇場版とTV版)を合わせたシリーズ4作は、ジブリ以後の映画作品に勝るとも劣らない名作(『火垂るの墓』を除けば勝っているのではないかとも思います)として評価が高いです。今回のニコ生に合わせて再視聴したりもしたのですが、『赤毛のアン』の後半、特に『マシュウの愛』、『死と呼ばれる刈入れ人』、『マシュウ我が家を去る』の三作はいま観ても目頭が熱くなってしまいます。

高畑監督は『母を訪ねて三千里』を作るにあたり、イタリア・ネオリアリズムを意識したといっています。