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マクガイヤーチャンネル 第139号 2017/10/4
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おはようございます、マクガイヤーです。

毎回、放送のハコ絵イラストを描いて頂いているアモイのジュンさんが、山田玲司チャンネルのヤンサンマンガ大賞に応募した作品がピクシブで公開されています。

https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=manga&illust_id=65127527

なんと自分も出演しています!

こういうの嬉しいですねえ。

ストーリーも『ゼブラーマン』にオマージュを捧げたいい話になってますし、是非お読みになってみて下さい。





マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。


○10月7日(土)20時~

「がんと免疫療法とがんサバイバー」

現在、日本人の死因第一位は悪性新生物――すなわちがんです。

がんの治療法としては、これまで手術、放射線療法、化学療法が3本柱とされてきました。

近年、新たな柱として注目されているのががん免疫療法です。免疫療法といえば、怪しい治療法がまかり通っていましたが、免疫チェックポイント阻害剤の劇的な効果がイメージを一身しました。

そこで、がんと免疫療法の歴史とメカニズムについて2時間じっくり解説する放送を行ないます。

渡辺謙、宮迫博之といったがんサバイバーはなぜ不倫するのか問題にも触れたいところです。



○10月21日(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2017年10月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○11月前半(日程未定)20時~

「ジャスティス・リーグのひみつ」

11月23日よりDCエクステンデッドユニバース(DCEU)の新作であり、期待の大作映画でもある『ジャスティス・リーグ』が公開されます。

しかしこのDCEU、前作である『ワンダーウーマン』はヒットしたものの。ライバルであるMCUに比べて勢いがありません。それどころか、テレビドラマやカートゥーンでのDCコミックス映像化作品に比べても元気がありません。

そこでこれまでのDCコミック諸作品を振り返りつつ、映画『ジャスティスリーグ』やDCEUの今後について占いたいと思います。

果たしてグリーンランタンや、マーシャン・マンハンターや、はたまたブノワビーストは出るのか?

ブースター・ゴールドやプラスティックマンの登場まで、暗い夜と光線技アクションシーンの我慢を強いられるのか?

ジョス・ウェドンは独占禁止法に違反しないのか

……等々、ジャック・カービーやニューゴッズの話題も交えつつ、様々なトピックで盛り上がりたいと思います。




さて、今回のブロマガですが、科学で映画を楽しむ法 第5回として書いている「『大長編ドラえもん』と科学」その6になります。

(基本的に、藤子・F・不二雄が100%コントロールしていると思しき原作漫画版についての解説になります)。



●藤子・F・不二雄の体調不良

1986年、53歳の藤子・F・不二雄は検査入院で胃癌と診断されます。当初、告知はされなかったそうですが、これ以降、体調を崩しがちになり、藤子・F・不二雄は自らの身体の変化に気づいたのでしょう。


翌年、藤子・F・不二雄、というか藤本弘は、長年の間安孫子素雄と組んでいた「藤子不二雄」というコンビを解消します。安藤健二『封印作品の謎2』には、このコンビ解消は、自分が死んだ後に遺族間で権利関係の揉め事が起こることを心配したからだという説が掲載されています。真実は分かりませんが、胃癌発症は藤子・F・不二雄に、そう遠くない未来における自らの死と漫画家活動の終わりを自覚したことでしょう。


翌々年劇場公開された映画『のび太のパラレル西遊記』は映画『大長編ドラえもん』の中で唯一藤子・F・不二雄による原作がありません(ちなみに『21エモン 宇宙へいらっしゃい!』の併映作品として公開された『ドラえもん ぼく、桃太郎のなんなのさ』には『ドラとバケルともうひとつ』という形での原作があります)。「西遊記」というモチーフは藤子・F・不二雄による発案ですが、ストーリーの詳細は他人の手によるものです(おそらく、様々な人物のアイディアをもとひら了がまとめる形で脚本を執筆したと思われます)。



『のび太の日本誕生』

そんなわけで、『のび太の日本誕生』は映画版『大長編ドラえもん』の記念すべき10作目にあたりますが、原作漫画としては9作目にあたります。ここから、一つずつナンバリングがずれていったわけですね。


その名の通り映画『日本誕生』が元ネタというか、タイトルの由来にあたりますが、内容は『日本誕生』で描かれた神話的世界が実際にはどうだったのか――日本人のはじまりをエンターテイメントに徹しながらもできるだけ科学的、というかSF的解釈で描く、というものになっています。

だから、のび太たちがタイムマシンで「史上最大の家出」をする時代も7万年前、「第四紀更新世でヴェルム氷期がはじまったあたり」と具体的です。劇中ではスネ夫が「化石とかさ、石器の年代をしらべると三万年ほど前にはたしかにいたらしいよ」と述べていますが、本作が発表された88年から現在までの間に、9~8万年前のものと思われる石器が岩手県の金取遺跡から、約12万年前のものと思われる石器が島根県出雲市の砂原遺跡からみつかっています。「ヒカリ族」や「クラヤミ族」や「精霊王」といったネーミングこそ象徴的ですが、「SF的にありえたかもしれない日本のはじまり」を描いているのです。

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「神かくし」を、間引きでも人買いへ子供をうることでもなく、「時空乱流の乱れによるタイムトリップ」と解釈するのもSF的ですね。


ドラえもんのひみつ道具を使って7万年前の日本に自分たちのユートピアを作るクラフト要素も相変わらず楽しければ、スネ夫とジャイアンがトキの大群をみて圧倒されつつ、絶滅を惜しむというのもセンス・オブ・ワンダーに溢れる描写です。のび太が遺伝子アンプルを掛け合わせてペガサスやグリフォンやドラゴンといった遺伝子組み換え生物を作るのを混じりけなしのポジティブに描写することにも恐れ入ってしまいます。最後に「空想動物サファリパーク」に引き取られるという形で責任をとることになりますが、のび太は遺伝子組み換え生物を勝手に作ることでペナルティを受けないのです。いい時代だなあ。


また、前作の反省か、本作は最後までのび太が主人公として活躍し、ラスボスであるギガゾンビを倒してヒカリ族を救うという、ひと夏の冒険物語としての体裁を維持します。映画作品が『新・のび太の日本誕生』リメイクされたのも納得です。


ただ、本作の欠点としては、『大長編ドラえもん』としても藤子・F・不二雄作品としても、新味が無いところでしょう。