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マクガイヤーチャンネル 第127号 2017/7/12
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おはようございます。マクガイヤーです。

先日ドールハウスミニチュアショウに行って以来、自分でもドールハウスらしきものを作ろうと四苦八苦しているのですが、なかなか時間がとれなくて苦労しております。



マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。


○7月15日(土)20時~

「『ハクソーリッジ』と天才変態監督メル・ギブソン」

6/24よりメル・ギブソン久々の監督作である『ハクソーリッジ』が公開されます。

本作は2017年の第89回アカデミー賞において録音賞と編集賞を受賞しました。これまでどう考えても落ち目だったメル・ギブソンにとっての復活作なのですが、『ブレイブハート』『パッション』『アポカリプト』といったこれまでのメル・ギブソン監督作を観ていた我々には分かっていたことです。

メル・ギブソンが、稀代の変態にして天才映画監督であることを……

そこで、俳優・監督としてのメル・ギブソンについて振り返りつつ、『ハクソーリッジ』について解説したいと思います。

是非とも『ハクソーリッジ』を視聴した上でお楽しみ下さい。



○7月29日(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2017年7月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。


詳細未定



○8月前半(日時未定)20時~

「しあわせの『ドラゴンクエスト』」

7/29に『ドラゴンクエスト』シリーズ久しぶりのナンバリングタイトルにして非オンラインタイトル『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が発売されます。

『ドラクエ』といえば「国民的ゲーム」の冠をつけられることが多いですが、『ポケモン』『妖怪ウォッチ』『マインクラフト』といったゲームを越えたコンテンツが席巻し、ゲームといえば携帯ゲームである現在、事情は変わりつつあるようです。

そこで、これまでの歴代作品を振り返りつつ、ドラゴンクエストの魅力に迫っていきます。



○8月後半(日時未定)20時~

「最近のマクガイヤー 2017年8月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定




さて今回のブロマガですが、この前の土曜日についに公開された『メアリと魔女の花』について書かせて下さい。

先日のニコ生、「サバイビング・ジブリ ジブリ・サバイバーとしての米林宏昌と『メアリと魔女の花』予想」にて映画の内容を予想しましたが、

自分が「こうじゃないかなー」と思ってたところは、だいたい合ってましたね!



●『メアリと魔女の花』

『メアリと魔女の花』は、毀誉褒貶激しいというか、普通にみてしまうとなんてことない作品に感じてしまうアニメです。

「元ジブリの監督やスタッフたちが作った」ということを知っていても、それが(観客にとって)プラスに働くとは限りません。本作は絵柄も、キャラクターも、要素も、「ジブリっぽいもの」に溢れています。ジブリで作品を作っていた人たちが作っているのだから、当たり前です。スポンサーや広告代理店が求める「ポストジブリ映画」として絶対に赤点をとらない映画です。

メアリが常に自分の感情を台詞として説明してくれること、エンドア大学の仕組みや秘密を誰かが必ず台詞できっちり説明してくれることも、「赤点をとらないこと」を補強しています。一年に一度しか映画をみないようなシネコン観客を対象としてヒットさせるためには、必須のしくみというか仕様だからです(『バケモノの子』もそうでした)。

一方で、これは映画を沢山観て、シーンの意味や文脈を読み取る力を備えた観客にとっては、物足りなさを越えて馬鹿にされているように感じるしくみでもあります。

更に本作には、過去のジブリ作品と比較して「駿や勲の狂気」がありません。しかし、それは贅沢な悩みというものです。何故ならば、本作の監督は宮崎駿や高畑勲ではなく、米林宏昌なのですから。


本作にはもう一枚下のレイヤー、――「作り手たちが本作を作らざるを得なかった意味」――が確かに込められています。それも、普通にみていたら分からない形で。それは、「米林宏昌の狂気」とでも呼ぶべきものです。

ですが、この前のニコ生を観た人はなんとなくでも気づきましたよね!

せっかく公開直後なので、きちんと解説しておこうと思います。


●アニメにおける「魔法」とは

まず、映画の中で「魔法」とか「科学」とかが出てきた場合、それは何を意味するのか、何のメタファーなのかということです。

映画の誕生から120年が経ったのでなかなかピンと来なくなりましたが、映画は科学の産物です。原油からフィルムを作り出すのも、フィルムを露光させて像を記録するのも、現像して情報を定着させるのも、すべて化学反応に基づいています。その後の撮影技術の進化――ピント送り、パンフォーカス、長回し、カラー化、ズーム、マクロ撮影、高感度撮影、ステディカム、合成、デジタル化、ノンリニア編集……すべて科学技術の進化の産物です。当然、絵や人形を映画の中で生きているかのように動かす技術――アニメーションもその一つです。

そして、科学技術の進化によって達成された新しい映画表現は、傍目からは魔法と区別がつきません。

だから、映画の中で「魔法」とか「科学」とかを使って何事かをなす場合、それらは「映画」を作ることそのものの隠喩となります。

この傾向は、アニメや特撮といった、科学技術・映画技術に大きく依存しているジャンルほど、強くなります。アニメにおける「魔法」や「魔法使い」が「アニメ」や「アニメを作るおれたち」、特撮映画における「科学者」が「映画を作るおれたち」の隠喩です。ディズニーアニメや東宝特撮は、CGやノンリニア編集が導入された今でも(というか今でこそ)、この歴史的隠喩を受け継いでいます。


●スタジオジブリ原理主義視点

次に、「スタジオジブリ原理主義視点」を紹介しましょう。

これは、「スタジオジブリで作られるアニメはすべてジブリ周辺のものごとを題材にしている」という仮説です。

たとえば、『ゲド戦記』は王子が父である王を殺すシーンから始まりますが、これは当時の宮崎吾郎の心境を反映したものです。『コクリコ坂から』には学園の園長として徳間書店の会長が登場し、主人公たちは「カルチェラタン」という名の部室棟の存続を陳情しに行きますが、これはスタジオジブリが徳間書店の出資によって設立したことを反映しています。

これは、宮崎駿も同様です。特に『もののけ姫』で自身の抱えるテーマの幾つかに決着をつけた後に顕著です。たとえば、『ハウルの動く城』は奥さんを家に残して働きまくる宮崎駿の話ですし、『崖の上のポニョ』は幼児に戻って幼女と心ゆくまで遊びたいという宮崎駿の心境の反映ですし、『風立ちぬ』は実質的には72歳を迎えた青年アニメーター宮崎駿の人生の投影です。

http://d.hatena.ne.jp/macgyer/20130725

こういった作り方は、なにもジブリだけではありません。『エヴァンゲリオン』が庵野秀明のSF私小説のような話であることは沢山の人が指摘していますし、『オマツリ男爵と秘密の島』は細田守がスタジオジブリで『ハウルと動く城』の監督作業をしていた頃の葛藤が込められているとされています。


●幼女は「愛でるもの」ではなく「自身の投影」

もう一つ注意したいのは、「幼女」が監督にとってどういう位置づけにあるかです。ある意味、この点が宮崎駿と米林宏昌最大の違いです。

「幼女」の本当の定義は就学前の女子児童ということになりますが、ここでは30歳以上のおっさんである映画監督が恋愛対象にするには幼すぎる女性、ということになります。


これまで宮崎駿作品の中の「幼女」――クラリスやラナといったヒロイン――は憧れの対象でした。ナウシカやキキのように「幼女」が主人公になる場合、彼女たちは「こうであってほしい幼女」という、理想化された存在となります。

主人公が男である場合、「幼女」のヒロインとはつきあえません。だからルパンはクラリスに、ポルコはフィオに手を出しません。恋人同士としてつきあうためには、宗介のように自身が幼児化するか、ソフィのように婆と少女両方の姿を持っている必要があります。何故なら、いくら自身がロリコンであると自覚していても、昭和の男としてそうやすやすと幼女と「合体」するわけにはいかないからです。


しかし、米林宏昌にとっての「幼女」は、「愛でるもの」どころか自分自身そのもの、「自身の投影」になります。

宮崎駿のような世代にとってこれは信じがたいことかもしれませんが、米林宏昌のような、生まれた頃からアニメや漫画があって、その中では女性主人公が男性よりもイキイキと活躍していたのを当たり前にみていた世代にとって、これは当然のことです。というか、「いま」のアニメでは当然を超えて常識です。『まどマギ』『ガルパン』『ストパン』も、これまで男性主人公が担っていた役割を当然のように女子が受け継いでいます。現在40~50代以下のアニメ監督にとって、幼女との「合体」は易々とできる行為なのです。


●エンドア大学=スタジオジブリ説

・「魔法使い」や「科学者」は「アニメを作るおれたち」の隠喩である

・これまでスタジオジブリで作られるアニメはすべてジブリ周辺のものごとを題材にしてきた

・幼女は「愛でるもの」ではなく「自身の投影」

この三点を頭に入れて、元ジブリの監督やスタッフたちが作った『メアリと魔女の花』を観るとどうなるでしょうか?

答えはすんなり出てきます。