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マクガイヤーチャンネル 第86号 【デヴィッド・エアーの青春就活物語『バッドタイム』】

2016/09/26 07:00 投稿

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  • Dr.マクガイヤー
  • 評論
  • 映画
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マクガイヤーチャンネル 第86号 2016/9/26
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いよいよ本庶先生がノーベル賞を受賞しそうでドキドキしてるマクガイヤーです。
今年受賞したら、11月のニコ生にてPD-1とオプジーボの解説もやりたいですね。

さて、前回の放送「LAヤンキー愚連隊! 『スーサイド・スクワッド』とデヴィッド・エアー」は如何だったでしょうか?



毎回ゼミで映画を紹介する時はお奨めしたい作品を紹介してきましたが、今回はちょっと微妙な感じの放送になりました。

でも、デヴィッド・エアーはもっとできる子だし、『スーサイド・スクワッド』はもっと面白くなるコンテンツなんだよ! ということは訴え続けていきたいです!



マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。



○10月10日(月) 20時~

「テン年代の『闇金ウシジマくん』」

9/22より映画『闇金ウシジマくん Part3』が、10/22より映画最終作となる『闇金ウシジマくん the Final』が公開されます。

また、現在テレビドラマの第三シーズンが深夜に放送されています。

これらはいずれも2004年より連載されている漫画『闇金ウシジマくん』を原作としたものです。

当初は『ナニワ金融道』のクローンでしかなかった本作ですが、「新しい貧困」「マイルドヤンキー」「ワーキングプア」「格差社会」……といった「現在」を映し出し、もはやゼロ年代後半やテン年代のニッポンを代表する漫画であるといって良いでしょう。

そこで、原作漫画を中心に『闇金ウシジマくん』について特集します!

 

○10月27日(木) 20時~

「最近のマクガイヤー 2016年10月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

お題

『聲の形』

『怒り』

『スター・トレック BEYOND』

『ゼーガペインADP』

『ゲレクシス』

その他諸々について語る予定です。

詳細未定。

 

○11月前半 20時~

「ニッポン対ワクチン」

子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの副反応や、HPVワクチン薬害研究についての疑義、というか捏造報道など、ワクチンに関する報道や話題が盛り上がっています。

そこで、そもそもワクチンとは何か、どのように発明されどのように使われてきたのか、何故大事なのか、なにが現実でなにが虚構なのか……等々について今一度しっかり解説します。

 

○11月後半 20時~

「最近のマクガイヤー 2016年11月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定。




また、50回記念オフ会を下記日時に開催します。

日時:10/22(土) 14時(13時半開場)~18時(予定)

場所:ワニスタ

http://wanistu.com/

参加希望者は下記フォームにてご申請下さい。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScpfkKnxSPUpZkWn...

詳細は未定ですが、皆でマクガイヤーのお勧め映像を観た後、歓談するというような内容を予定しております。

参加料は無料です。差し入れ大歓迎です!

その後、二次会として近くの飲食店での飲み会も予定しております(こちらは3000円となります)。

応募者多数の場合はTwitterとFacebookのIDがある方から選びますので、是非書いておいてね!

締め切りは10/19となります。


お楽しみに!



番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。

マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html

690971e0da7c8773e848dd77ba91a7589e7e0433

新製品乳首ポケストップTシャツ

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同じく新製品スーサイドスクワッドTシャツ

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思わずエナジードリンクが呑みたくなるヒロポンマグカップ

 

……等々、絶賛発売中!




さて、今回のブロマガですが、『スーサイド・スクワッド』の監督であるデヴィッド・エアーの過去作、それも初監督作である『バッドタイム』について書かせて下さい。

クリスチャン・ベールが主演してるにも関わらず日本ではDVDスルーになってしまった地味な作品ですが、実は本当に愛しい愛しい映画だと思うのですよ。


デヴィッド・エアーは1968年にイリノイ州シャンペーンで生まれました。以後、ミネソタ州ブルーミントン、メリーランド州ベセスダと引越しを続けますが、父の死で母親に家から放り出されたのを契機に、従兄弟が住むロサンゼルスのサウスセントラルへ移り住みます。この時、デヴィッド・エアーはまだティーンエイジャーでした。


サウスセントラルは全米で一、二を争うほど治安の悪い街です。元々は工場があり、黒人の労働者たちが働いていたのですが、工場閉鎖後にスラム化しました。その後、ラティーノ、チカーノ、コリアン、ヒスパニック……と様々な人種が住むようになり、人種間での対立や、ギャングチーム間での抗争が起こるようになりました。65年の「ワッツ暴動」や92年の「ロス暴動」の舞台にもなったロサンゼルスでも有数の貧困地帯です。数キロ歩けば同じロサンゼルス内に立派なオフィス街もあり、アメリカ資本主義社会の貧富の差を象徴していたりもします。

何故デヴィッド・エアーはこの街に住んだのでしょうか。エアー家は、父も軍人、祖父も軍人という、軍人の家系です。また、イリノイ州とミネソタ州は中西部、メリーランド州は西部に位置し、どちらかといえば保守的な州になります。デヴィッド少年の中には、自由な気風というイメージがある東部、それもカリフォルニアへの憧れがあったのかもしれません。


サウスセントラルは様々な映画の舞台にもなってきました。監督としてのデニス・ホッパー復活作『カラーズ 天使の消えた町』、そのものずばり『サウス・セントラル~非情の街~』、ダンスでなんとか自己実現を図ろうとする『RIZE』、後に『ワイルドスピードX2』『ハッスル&フロウ』を監督するジョン・シングルトンのデビュー作『ボーイズ'ン・ザ・フッド』……つい最近も、サウスセントラルのすぐ南にある同じくらい治安の悪い街コンプトンを舞台にした(そして『ボーイズ'ン・ザ・フッド』にも出ていたアイス・キューブを実の息子が演じた)『ストレイト・アウタ・コンプトン』が大ヒットしました。『GTA』のロスサントス市にもサウスセントラルやコンプトンそっくりの街が出てきますね。

サウスセントラルの抗争で有名なのはブラッズとクリップスの抗争ですが、このような映画やテレビや音楽、特にヒップホップカルチャーを通じて世界に発信された結果、様々な国や土地でサウスセントラルのストリートギャングたちの影響を受けた、というか模倣したチンピラ集団が発生しました。有名なのは90年代の池袋のカラーギャングでしょう。ドンキホーテで売ってる服を好むようなファッションセンスが共通してますね。



さて、デヴィッド・エアーは17歳の高校卒業までの数年間をサウスセントラルで過ごした後、周囲の友人がギャングに入る中、海軍に入隊します。

現在のアメリカは徴兵制ではなく志願兵制度をとっています。ですが、大統領候補にもなったジョン・マケインの一家のように、代々男子は軍隊に入ることを一家の誇り――アメリカ人なりのノブレス・オブリージュみたいなもの――としている家庭もあります(保守的な家庭に多いです)。

更に、軍隊に入れば毎月きちんとサラリーを貰えるばかりか、医療保険(オバマケアが実現するまで国民健康保険に相当するものはありませんでした)にも入れますし、奨学金も得られます。また、軍隊で学んだ銃器の扱いや実戦経験を買われて、警察官や保安官といった法執行機関(アメリカでは様々な組織に警察権があります)、はたまた警備業者や探偵やバウンティハンターといった仕事に就くこともできます。サウスセントラルやコンプトンに生まれた貧困層が、自らの環境を変えるためには、ギャングか軍隊に入るしかないのです。

また、軍隊に入ると、少なくとも数ヶ月は軍隊の外に出れません。それまでの日常生活とは全く異なる軍隊という社会に身を投じることになるわけです。中流層には、軍隊に入ることを、日本でいう出家のようなものと捉えている人もいます。


エアーは潜水艦の乗組員として数年間勤務した後、除隊し、友人であり脚本の師匠でもあるウェズリー・ストリックの紹介でスクリプトドクターの仕事をはじめます。初仕事は潜水艦モノである『U-571(2000)』の脚本です。オリバー・ストーンやデイル・ダイのように、軍隊経験の豊富な人物が軍事アドバイザーのような役割を請われたことをきっかけとして映画製作に関わるのはよくあることです。


その後、『ワイルド・スピード(2001)』『S.W.A.T(2003)』『テイキング・ライブス(2004)』といった映画の脚本に関わりますが、初めて単独で書いた脚本『トレーニング デイ(2001)』で注目されます。それまで善人役を演じることの多かったデンゼル・ワシントンがカリスマ性たっぷりの悪徳警官を演じた本作は、デンゼル・ワシントンにアカデミー主演男優賞をもたらしました。


順調にハリウッドでのキャリアを積み重ねていったエアーは、自身のオリジナル脚本作『バッドタイム(2005)』にて監督デビューします。主演はクリスチャン・ベールで、エアーの脚本を気に入ったベールは制作総指揮まで務めました。この時、ベールは『バットマン ビギンズ』の主演を務めた翌年です。以降もエアーはキアヌ・リーブス、ジェイク・ジレンホール、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブラッド・ピットと、一流スターを主演に迎える監督作が続きます。如何にエアーが実力派監督としてハリウッドで注目されているかが分かります。



さて、『バッドタイム』のDVDの裏面には、あらすじとして下記のようなことが書いてあります。


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ジム(クリスチャン・ベール)は陸軍特殊部隊員としてアフガニスタンの過酷な前線で戦闘していたが、今は退役し、ロサンゼルスに帰還した。未だ戦場の悪夢にうなされながらも、ロサンゼルス警察で仕事を得るため適正検査である心理テストを受けるが、不合格となる。心理テストで知らされたのは、過去に犯した戦争犯罪の記憶。ロス警察からも拒否されたジムが、この状況を打開するためにとった行動とは、同じく失業中でシルヴィア(エヴァ・ロンゴリア)と付き合っているマイク(フレディ・ロドリゲス)と組み、ドラッグの取引をすることだった。

メキシコからドラッグを無事密輸し、取引現場に向かう2人だったが、そこで彼らを待ち受けていたのは…

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このあらすじ、実は大ウソです。

や、大ウソというのは言い過ぎかもしれませんが、あらすじとして不適当です。

メキシコからのマリファナ密輸の話は、映画が終わる10分前に出てくるのですから。



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