おはようございます。マクガイヤーです。
先日の放送「ピクサー続編映画の光と闇」は如何だったでしょうか?
まさか、しまさんがピクサー嫌いとは思いませんでしたが、おかげで対立構造ができて盛り上がりました。
敢えてディズニー・ピクサー映画を例に挙げなかった「続編映画とはなにか」のパートも反応がよく、嬉しい限りです。とにかく都会へ行くんじゃ!
マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。
○7/26(火)20時~
「最近のマクガイヤー 2016年7月号」
いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
・『存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48』
・『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』
その他、いつも通り、最近面白かった映画や漫画、気になったトピックについて、まったりとひとり喋りでお送りします。
○8/11(木)20時~(仮)
「『シン・ゴジラ』とは何か(仮)」
7/29より期待の怪獣映画『シン・ゴジラ』が公開されます。
日本製作のゴジラシリーズとしては12年ぶりであり、総監督・脚本は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を中断して参加する庵野秀明です。また、監督・特技監督を『平成ガメラ』シリーズや『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』で腕を奮った樋口真嗣が務めます。特撮博物館や、そこで上映された『巨神兵東京に現わる 劇場版』のコンビが、ギャレス版『GODZILLA ゴジラ』後の日本版『ゴジラ』を作るわけです。日本映画界におけるこの夏最大の話題作といっていいでしょう。
そこで、いったい『シン・ゴジラ』とはどういったものかについて語りたいと思います。
是非とも『シン・ゴジラ』を鑑賞後にお楽しみ下さい。
○8/16(火)20時~(仮)
「マイナー生物大バトル(仮)」
先日ゲストとして漫画家 山田玲司先生が主催する山田玲司チャンネルに出演しました。
先生は『Bバージン』や『絶望に効くクスリ』、『ゼブラーマン』などの著作でお馴染みですが、先生は『Bバージン』の後半や『ドルフィンブレイン』でもお分かりの通り、生物に造詣の深い方でもあります。
そこで8月スペシャル番組として、山田玲司先生をお迎えして生物について2時間たっぷりお話することになりました。
山田玲司先生をお迎えするのに漫画のことを全く語らないこの贅沢さに驚け!
番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。
マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html
思わずエナジードリンクが呑みたくなるヒロポンマグカップ
いつもイラストを描いて頂いているアモイさん入魂の一品、キヨポンマグカップ
情報量が多すぎる印南マクガイヤー善一TENGA Tシャツ
……等々、絶賛発売中!
さて、今回のブロマガですが、放送で話しそびれたこと――ピクサーとスティーブ・ジョブズについて書かせて下さい。
ピクサー・アニメーション・スタジオの起源はニューヨーク工科大学(NYIT)のコンピュータラボをその起源としています。
ケント・デリカットがネタにするくらいの田舎なのにCG研究の最先端だったユタ大学出身のエド・キャットムルと、カリフォルニア大学バークレー校というヒッピーの巣窟のような場所で教鞭をとっていたアルヴィ・レイ・スミスが、CGアニメに興味をもった億万長者アレグザンダー・シュアー博士の求めに応じてNYITにラボを設立したのです。
シュアーの求めに応じてニューヨークに集まったCG研究者たちは、その後のCGアニメで使われるようになるソフトウェアの基礎を作り上げますが、キャットムルとアルヴィは満足できませんでした。CG技術だけでは駄目なのです。
今やピクサーは世界の誰もが知る有名企業ですので、創立からこれまでについて書かれた本が何冊も出版されています。そのどれでも、NYITではストーリーを語る機能をもったソフトウェアは開発できても、ストーリーを語れる人材がいなかった――というようなことが書かれています。
たとえば『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』では、『チューバのタビー』というシュアーが監督したCG映画について、こんなふうに書かれてています。
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キャットムルたちは、痛ましくてみていられなかった。失敗する可能性のあるものは、すべて失敗したかのように思われた。コマは埃っぽく、線の下には影ができ、音楽はうっとうしく、ストーリーは癇に障り、作品自体が退屈の極みだった。最前列に陣取っていたスミスは耐えられなくなって目を閉じた。CGチームのプログラマーは眠ってしまった。場内が明るくなると、錯乱状態の若いアニメーターが叫んだ。「人生を二年も無駄にしちまった!」
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いかにもアメリカンな描写です。しかもこの本、大事なところはきっちり引用元を明記しています。
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コンピュータ野郎たちにとって、これは啓示の瞬間だった。エド・キャットムルとアルヴィ・レイ・スミスは高い志をもっていたが、それまで映画製作の技術的な側面にしか目を向けていなかった。「(コンピュータ・ラボの)誰一人として、プロットや筋や物語性という観点から映画を考えていなかった」
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そこで、彼らは「プロットや筋や物語性」を学べて、CGアニメ映画を作れる環境への移籍を考えます。面白いことに、ここで彼らが第一の候補にしたのはディズニーでした。しかし、その時のディズニーはCGに関心を示さず(だからその後ラセターもディズニーをクビになるのですが)、『スター・ウォーズ』で一山あてて、ルーカスフィルムという自分の「帝国」を築きつつあったルーカスの下に入ることになります。シュアーの妨害を避けるために、一度別会社に就職し、しばらく経ってからルーカスフィルムに転職する――「ロンダリング」までします。
これが1979年のことです。
面白いのは、当時からルーカスフィルムは一つのブランドだったことです。
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キャットムルはルーカスフィルムの名声の力を目の当たりにしていた。もちろん、彼のキャリアでは今後もそういう状態が続くのだが、クールでステイタスの高い組織で働くチャンスには、一流の人材をひきつけるうえで金と同じかそれより大きな力があることにキャットムルは気づいた。彼が接触した相手は一人残らず、是が非でもルーカスフィルムに加わりたがった。あるときなど、デジタル音声の世界的権威がスタンフォード大学のアンディ・ムーラー教授だと突きとめた彼とスミスは、大学をやめて音声編集プロジェクトを担当してくれるかどうかを打診するために、車でパロアルトを訪ねた。二人がオフィスに入り自己紹介するかしないかのうちに、教授は椅子から立ち上がってこう言った。「もし君たちが私の思うような理由でここに来たんなら、答えはイエスだ」
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売り込みにやってきた数多くのアニメーターの中に、若かりしころのブラッド・バードがいた話には驚きました。若い頃から情熱的やったんや……
もう一つ面白いのは、ルーカスの人柄です。
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ルーカスがオフィスにやって来たときには、暗黙のルールがあった。ボスの顔を見つめてはいけない。「自分も仲間の一人だと感じたかったのさ」ラルフ・グッゲンハイムは説明する。「ちやほやされたり、自分のせいで大騒ぎするのを好まなかった」
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ルーカスがシャイで内向的なのは有名な話です。ILMに勤めていたマシ・オカが「ルーカスにサインを求めたらクビ」、「ルーカスと5秒以上目を合わせたら石になれ」といったルールがあると『ダウンタウンDX』で語っていましたが、この頃からそうだったのですね。
ルーカスフィルムが熱心だったのはあくまでもフィルムのデジタル化で、CGにはそれほど熱心ではなかったことと、ルーカスの離婚によりおカネが必要になったことが理由で、キャットムルたちがいたCG部門は売りに出されます。
もし買い手がつかなかったら、これまで必死の思いで集めたCG部門の人員――当時世界最高のCGチームを解散しなければなりません。それは、世界初のCGアニメ映画の製作という目的を永遠に達成できないことを意味します。この頃にはジョン・ラセターもCG部門の一員でした。
で、様々な企業による買収話が頓挫する中、スティーブ・ジョブズがCG部門を買収し、ピクサーを設立したことは有名な話です。
では、ジョブズはどのように買収話を進めたのでしょうか。
ウォルター・アイザックソンの書いた『スティーブ・ジョブズ』や、ジェフリー・ヤングとウィリアム・サイモンが書いた『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』といった伝記では、「ルーカス・フィルムに行って感動したジョブズが買収を決めた」程度の、わりあいさっくりとした記述にしかありません。
だいたい、ルーカスフィルム側のCFOとの交渉におけるジョブズの辣腕ぶりが書かれる程度です。ジョブズをよくいる背伸びした金持ちの若造と甘くみていたCFOは、わざとゆっくり会議に現れることで優位に立とうとします。しかし、ジョブズはCFOがいないまま会議を始め、「会議そのものを掌握」し、3000万ドルのところを1000万ドル弱で買収した――そんなエピソードが書かれていればいいところです。
これが、エド・キャットムル自身が書いた本では詳細に書かれています。
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