おはようございます。マクガイヤーです。
なんやかやと忙しいせいか、すっかり風呂で寝るのが癖になってしまいました。
我が家のバスタブはちょうど体にピッタリなせいか、溺死する危険性はなさそうなのですが、掌や足の裏から脂っ気が無くなるのが悩みです。
今後の放送予定ですが、以下のようになっております。
○5/24(火)20時~(日程が変更になりました。ご注意ください)
「最近のマクガイヤー 2016年5月号」
・『最近の訃報』
その他、いつも通り、最近面白かった映画や漫画、気になったトピックについて、まったりとひとり喋りでお送りします。
○6/10(金)20時~
ニコ生マクガイヤーゼミ
詳細未定ですが、科学解説回を考えております。
「腸管免疫と腸内フローラ(仮)」もしくは「『テラフォーマーズ』と最強昆虫決定戦」をやるつもりです。
どっちが観たいか、是非ともお知らせ下さい!
○6/30(木)20時~
「最近のマクガイヤー 2016年6月号」
いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
詳細未定。
番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。
マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html
次回ニコ生ゼミのイラストを用いたマクガイヤー仮面Tシャツや
マクガイヤー・ウォーズTシャツもできましたよ!もできましたよ!
引き続き、思わずエナジードリンクが呑みたくなるヒロポンマグカップの他に
いつもイラストを描いて頂いているアモイさん入魂の一品、キヨポンマグカップ
……等々も絶賛発売中!
さて、前回のブロマガの続きです。
釣りは短気な人向けの趣味である――というのはよく言われるところです。
つまり、釣りは針に餌をつけて海や河に垂らして、ひたすら魚がかかるのを待つ、気長な人向けの趣味のようにみえますが、実は違う、釣れなかったら仕掛けを変えたり、場所を移動したり、刻々と変わる天候や海峡といったシチュエーションに合わせて小まめにセッティングを変えてゆく必要があり、それを楽しむことができる短気な人向けの趣味でありスポーツである――という意味です。
もっといえば、これは魚が釣れるその瞬間が来るまで引き伸ばされる時間を楽しむスポーツである、ともいえます。「その時」が来るまで、耐えに耐える。勿論、仕掛けを変えたり、場所を移動したりと、自分なりに試行錯誤しながら、耐えに耐える。
その間、路傍に咲く華の美しさに目を留めたり、刻々と移り変わる海や河や空の美しさに感じ入ることもあるかもしれません。大自然と一体になりながら食べるごはんも美味しいことでしょう。それら全て「釣り」というスポーツの魅力の一つであり、釣果ゼロでも愉しめることがあるのは、そういった愉しさがあるからです。
もっといえば、実際に釣れたかどうかよりも、「その時」が来るまでの行為そのものが楽しいという人も多いのではないでしょうか。
そういう人にとっては、極限すれば、釣りの魅力とは「その時」が来るまで永遠とも思える時間、引き伸ばされる快楽にあります。
そして、自分に言わせれば、ストーキングの魅力は釣りと同じところにあるのです。
目的とする人物に出会えるかどうか、永遠とも思える時間を、昨日は自宅周辺、今日は駅前と、自分なりに試行錯誤しながら耐えに耐えます。
町中に溶け込むための服装とはどういうものか、警官に職務質問されても不信に思われない言い訳は何か、季節や時間帯や場所といった状況に合わせて、セッティングも変えます。
それらしき人物の後ろ姿を見かけたら、胸が高まります。まるで、魚が水面に跳ねたり、光の加減で水面に魚影が一瞬映ったり、漁船のソナーで魚の群れを発見した時のように。
別人だったとしても、少々がっかりはしますが、完全に気落ちすることはありません。この先、無限とも思える時間があり、その間ずっと引き伸ばされた快楽を楽しめるのですから。
おまけに、自分には少々の希望もありました。いつも有益な情報をくれるK先輩が、W先輩とT先輩が別れたことを教えてくれていたのです。
このタイミングで別れたことに、なるほどと合点がいきました。その時、自分は4年生でした。研究室への配属や就職活動で、生活環境が変わり始めた時期でした。新しい人間関係が始まったり、卒業してこれまでの人間関係が続けられなったりするのを、悟る時期です。同期の友人知人も、数年間交際していた男女が別れたり、逆につきあい始めたりということが多くなってきました。
今まで愛し合っていたはずなのに、急に別れを切り出され、慌てふためく男女たちの姿をみるにつけ、自分はそのようなさまを「清算」とか「決算」とか呼び、心中で嘲笑っていました。レジで清算ボタンを押してチーン、ガシャガシャ。卒業するついでに子供っぽい彼氏と別れてチーン、ガシャガシャ。就職活動で出会った可愛い女子とチーン、ガシャガシャ……ざまあないぜ大学でつきあうリア充どもが! といった具合です。童貞なので仕方ありませんね。
一足早く社会に出たW先輩は、「清算」とか「決算」とかが早めにやってきた。そういうことなのでしょう。自分は、そんなことを考えてニヤニヤしながら、夜の街やW先輩のアパート周辺を徘徊していたものです。
問題は「釣り」が終わる時です。
自分は、W先輩に嫌がらせをしたくてストーキングをしていたわけではありません。なんとかチャンスをみつけて男女としてつき合い、セックスしたくて、ストーキングというか、つきまとい行為というか、気違いじみた努力をしていたわけです。
だから、一度本人に会ったら、そこでこの楽しみは終わるのだと確信していました。永遠に引き伸ばされた快楽が、永遠では無くなってしまうのですから。
「ボクはここで影から見守っています」
アパートの階段を上がったところで、そう後輩が固辞しました。ここなら仮にW先輩が通報したとしても、無関係と言い切れます。まあ、W先輩の性格なら同じサークルの後輩にそんなことしないことを知っていたからこそ、ストーキングしていたわけですが。
ドアの前まで来ます。ここまでは日々のストーキング活動で何度か繰り返しました。覗き穴やポストの中から部屋を覗こうと試みることまでしていました。確かにいつもと違い、覗き穴から部屋の灯りが漏れています。
少々考えた後、チャイムを押しました。後輩が階段の角から見ていなかったら、押さずに帰っていたことでしょう。
室内でバタバタという音がした後、数分ほど経った後、覗き穴が暗くなりました。しっかり確認して自分のことを認識したのでしょう。ドアを少しだけ開いて、上気した顔でW先輩が出てきました。
「マクガイヤーじゃん。誰かと思ったよ」
その時、W先輩が変わっていたことが分かりました。
決して部屋の中を覗かせまいと必要最小限しか開かないドア。
そのドアの隙間から覗く男ものの靴。
冬なのに薄着でちょっと汗をかいているW先輩。
そのW先輩から漂ってくる動物としての女の匂い。
何よりも、以前と、下北沢の時と比べて、実に明るそうなW先輩の表情。
間違いありません、就職先で彼氏ができて、その彼氏が部屋の奥にいるのです。本当の男の彼氏が。
きっと彼氏は童貞ではないのでしょう。
近くに住んでいると聞いたものですから、ちょっと顔がみたくなって……
そんなことを言い訳のように告げると、足早にその場を立ち去りました。
「顔がみたかった」というのは真実ですから、嘘ではないわけです。それでも、後ろめたさを感じました。
以後、自分がW先輩をストーキングすることは無くなりました。
あれから20年近くが経ちました。
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