青木愛幹事長代理 衆議院本会議質問(2013年11月1日)
衆議院本会議にて、田村憲久厚生労働大臣より「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」(社会保障制度改革プログラム法案)の趣旨説明が行われ、生活の党を代表して青木愛幹事長代理が質問いたしました。
質疑全文は以下の通りです。
【冒頭挨拶】
生活の党 青木愛でございます。
私は、生活の党を代表し、ただいま議題となりましたいわゆる「社会保障制度改革プログラム法案」について、質問いたします。
まず、安倍内閣の基本的方向性についてお聞きします。
安倍総理が強く関心を抱いておられる、憲法改正や集団的自衛権、または特定秘密保護法などの中身を見ると、国民の権利を縮小し、国家の権力を強化する方向に向かっているような印象を受けます。例えば、憲法改正自民党草案では、基本的人権の意義を明記した第九七条を削除し、国民の権利及び義務に言及した第十二条や第二十一条では、秩序や公益を優先し、国民の基本的人権を制約する旨が追加されています。また、特定秘密保護法案では、国民の知る権利が大きく制約を受ける危険性があります。
安倍内閣は、「まず強い国家があり、その下に国民がある」と考えておられるのか、或いは、「国民を第一とし、国民のために国家がある」と考えておられるのか、国家と国民との基本的な関係についてお聞かせください。
なぜ冒頭にこの質問をしたかというと、議題となりましたプログラム法案には、至るところで国民軽視の発想が見られるからです。
もっとも見過ごせない部分は、第二条に「自助・自立のための環境整備等に努める」との規定です。しかもこの考え方は、法案全体に貫かれています。
社会保障は、自助・共助・公助の組み合わせであり、自助のための環境整備に努めるのは結構なことです。しかし、本法案では、敢えて自助に係る規定を設け、それを強調し、公助、即ち、社会保障の国の責任を大きく後退させています。社会保障のために消費税増税を強行しながら、社会保障から国は逃げ、個人や家族の自助・自立に押し付けているように思えてなりません。
高齢化が進み、一人暮らしも増える中で、自助が衰退して行くのは当たり前であり、自助・自立が難しい時代だからこそ、そうした流れに沿った、国民の皆さまが安心できる制度改革が求められているのではないでしょうか。
安倍内閣の考える社会保障制度は、「高齢者の切り捨て」と思えてなりませんが、自助・自立を殊の外、強調された理由をご答弁ください。
希望と安心のある長寿社会ビジョンを提示せず、景気が本格的に回復しない状態で消費税を増税すると、景気は必ず落ち込みます。特に、景気回復が遅れている地域経済や、所得が増えず、円安で物価や電気代などの値上げラッシュに苦しむ家計には深刻な影響を与えます。
消費が落ち込んで景気が腰折れする、その対策として、安倍内閣は総額六兆円規模の経済対策を実施し、増税の影響を和らげようとしています。しかし、経済対策の主たる対象は黒字の企業であり、厳しい環境下に置かれている中小零細企業にはほとんど恩恵がありません。家計に対しては、住宅ローン減税の延長・拡充や、住民税を納めていない世帯を対象に、一人当たり一万円の一時金の支給が検討されていますが、企業減税と比べると大きく見劣りします。ここにも国民軽視・大企業優先の考えが色濃く反映しています。
このように、安倍内閣は国家や大企業に対しては、積極的に手を打っていますが、一般国民に対しては、消費税増税と社会保障削減にひたすら邁進しているように思えてなりません。こうした懸念について、安倍内閣としての考えをお伺いします。
最後に、長寿社会における社会保障制度のあり方についてお伺いします。これまで長年にわたり、社会保障制度改革を審議してきました。社会保障と税の一体改革では、社会保障制度改革議論をきちんと進めるということが消費税率引き上げの前提となっていたにも関わらず、少子化対策も、医療も、介護も、年金も、抜本的な改革ビジョンは打ち出されておりません。政治や行政の身を切る努力はどこへ行ってしまったのでしょうか。それでいて、消費税増税については確実に進みました。
財源に焦点を当てて社会保障制度改革を論じると、日本のような超高齢化社会では、どうしても消費税増税と社会保障削減という、誰も歓迎しない、後ろ向きの結論しか出てきません。
「高齢者は自助・自立で生きなさい」と冷たく突き放すのではなくて、高齢者がいつまでも健康で生きがいをもって社会参加する、という長寿社会の実現を目指すべきであると考えます。健康な高齢者の社会参加は、必然的に医療費や介護費用の削減につながるばかりか、高齢者は納税者にもなります。そのような長寿社会を実現し支えるための税負担であれば、国民の多くが支持すると思います。その実現のヒントは、日本に点在する「長寿地域」にあります。
財政のみに視点を合わせた従来の発想をやめ、高齢者の健康と生きがいと、社会参加に視点を合わせた社会改革を目指すべきであると考えます。これに関する政府の見解をお伺いして、私の質問を終わります。