潮騒を聞いていた。砂浜に寝転んで、背中で太陽の放射熱を感じていた。曇天だったけれど、雲の切れ間には時折り陽射しが光の梯子となって降り注いでいた。

 その数時間前、雨が降っていないのを確認して久し振りに里山の菜園を覗いた。ミニトマトを摘んで頬張ってみる。このところの多雨のせいでトマトに全く甘味が乗っていない。雑草ばかりが我が物顔で背丈を伸ばし蒼と茂っている。救いはピミエントパドロンが豊作なことだ。雨の少なかった去年は実っても辛い実しか採れず、原産国のスペインでないとうまく育たないのだろうかと手探りだったのだけれど、もっと大量の水を必要とする作物だったのかもしれないと実感した。

 それにしても熱い。まるで熱帯雨林気候のような体にまとわりつく湿度だ。そして無風。不快指数は最高潮に達していた。立っているだけで自律神経もみるみる不調になった。海の水に裸足を浸して頭の先まで冷えるところを想像した。