実を言うと、僕は猫に触ることができない。確か小四の夏休みだった。誰もいない家で宿題をしているとベランダで不穏な物音がした。激しい羽音がした。泥棒かもしれない。そう思いながらカーテンの隙間から恐る恐る覗くと鳥籠が倒されていた。母が大事にしていたインコを貪る野良猫の姿があった。一瞬、野良猫が僕を見た。目と目が合った。悟った者だけが持つ深淵なる闇のような目だった。気圧された僕は追い払うことも、目を逸らすこともできなかった。まるでメドゥーサの瞳で石にされたように、立ち尽くしたまま小さな命の火が消えてゆくのを見ていることしかできなかった。

「猫は日溜まりでまどろんでいる奴を遠巻きに眺めているくらいがちょうどいい。」
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コメント
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私の猫は捨てられたのか迷子になったのかよくわからないのですが、生後推定5-6か月で野良で発見された時にはすでに避妊手術を受けていました。もともと自分は犬派だと思っていたのですが、今年の1月に野良で発見され保護されていた猫を引き取りました。今はすっかり家にも私にも慣れ、トイレも一度も失敗することなく穏やかに暮らしています。猫が来てから急に地域の野良猫が気になりはじめ、なんだか可哀想で見かけるたびにじっと観察してしまいます。小原さんには子供のころに野良猫とのトラウマがおありになったんですね。その猫も生きるために必死だったんでしょうけど、そういう経験があったら、私も今猫を飼ってはいないだろうと思います。今は自分にとって大切な存在であり、無責任な飼い主にだけはならないでおこうという思いが強いです。
(著者)
>>1
捨て猫が増えたのもそもそもは無責任に捨てた人間のせいなんですよね。僕らが日々悩まされていることは本当に自業自得なことばかりで溜め息がでます。
(著者)
>>2
植物であれ動物であれ人間であれ、無垢で無力で、でも力強い命とともに生きることが僕らには必要なんだなと改めて思います。人間は絶対にひとりきりでは生きていけないんだなと。