夏は太陽を食べる季節だ。

 噎せ返るような草いきれを掻き分け菜園に入ると、宙から惜しみなく降り注ぐ夏の光が育んでくれた邪気のない命の数々が息づいていた。赤、深緑、薄緑、黄緑、黄色。太陽が詰まったひとつ一つの果実はまるで色彩見本のように鮮やかだ。掌で包むように触れると命あるものだけが発する独特のぬくもりが伝わってくる。葉脈の流れと鼓動を感じる。そう、まるで大きくなった妻の腹部の、厚さ3センチほどの肉壁の下で日々成長し続けている胎児のような。