「ゾンビ」は多くの国で受け入れられている人気のテーマのため、毎年数多くのゾンビ映画が製作されています。大ヒットにつながる良質な作品もある一方で、良くも悪くも、どうしようもないゾンビ映画が量産されているというのは誰もが知るところ。
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そして、最後まで見るのが苦痛なほどの超Z級ゾンビにも一定のファンが存在します。内容がひどければひどいほど喜んだり、常に迷作・珍作を探しては苦行とも思える上映時間を耐え、達成感に浸ったりするファンもいるのです。
今回はそんなディープでコアな最低ゾンビの世界からWhat Cultureが選んだ、史上最低のゾンビ映画を10本ご紹介します。
一部ネタバレと残酷描写があるので、ご注意ください。そしてリストを参考に鑑賞し、「つまらない!」と怒りを感じても責任はとれませんので、ご了承ください。
■『ゾンビ2009』(2007年)
B級ゾンビ映画を作ることに命をかけていたブルーノ・マッティ監督の遺作。マッティ監督らしい、しょーもない作品(そこがたまらない)で、『エイリアン2』をゾンビで超低レベルに再現しただけといった内容です。
ゾンビの襲撃から逃げ延びた女性が、兵士とともに潜水艦でゾンビが生息する島へ再び足を踏み入れることになるのですが、主役の女性に華がない、兵士はツッコミどころ満載なおマヌケぞろい、伏線はメチャクチャ、そして設定もコロコロ変わります。さらに、ラスボスはガラスに入った脳みそというヒドさ。
気楽に見られる映画が流行っている中、ストーリーについていくだけで疲労しかねない凄い作品となっています。ここまでやれるのはマッティ監督だからこそ。
マッティ作品を見たことがない人は「なんだこのクソ映画! 素人の作品か!」と言いたくなるかもしれませんが、ど素人が作ったらここまで芸術的に破綻しません。これは天性のセンスをもったB級映画監督にしか作れない映画なのです。
■『ハウス・オブ・ザ・デッド』(2003年)
大ヒットアーケードゲーム『ハウス・オブ・ザ・デッド』(『HOD』)が原作のウーヴェ・ボル監督作品。孤島で開催されるレイブパーティに参加しようと島を訪れた若者達をゾンビの群れが次々と襲う、ありきたりなお話です。
ゲームを題材にしているためか、『HOD』からのカットが時折挿入されて気が散るだけでなく、有名映画のパクリ要素も盛り込まれています。
パクリが悪いとは言いませんが、せっかくなら上手くパクってほしいところ。これでもかというほど繰り返して登場する『マトリックス』のバレットタイム(出演者全員分あるかも)にイライラさせられること間違いなしです。
最初から最後まで学芸会レベルの本作ですが、決してすべてがダメなわけではありません。本作には、最近の流行りのダッシュに加え、無駄に泳ぎが得意なゾンビが登場します。この華麗なゾンビの泳ぎは見てほしい、かも。
■『サンゲリア2』(1987年)
CSTONEUKより
ルチオ・フルチ監督の『サンゲリア』の続編と思いきや、フルチ監督はノータッチで、ノンクレジットながら実際は『ゾンビ2009』のブルーノ・マッティ監督と『トロル2/悪魔の森』のクラウディオ・フラガッソ監督がメガホンをとっていたとされる作品。
『トロル2』も目を疑いたくなるほどひどい作品なので、この監督とB級映画の名監督マッティのコンビが生み出した作品ならば、どれほど破綻しているのかが想像できるかと思います。
本作のストーリーは、軍が密かに研究していた人間の死体をよみがえらせる細菌兵器がテロリストによって盗まれてしまい、ゾンビが大量発生してしまう――というもの。なんだかデジャブですね。
そう! 『バタリアン』のゾンビ発生法と非常に良く似ています。しかし、『バタリアン』のコピーではありません。ゾンビウィルスに感染して死んだ男性を燃やしたことで発生した煙を吸ってゾンビ化した鳥が人間を襲います。それはもう、ヒッチコック監督の『鳥』を超える凶暴さ。
また、このゾンビは肉弾戦を得意とするファイターです。頭だけになったゾンビが空中浮揚して被害者の首に食らいつく、ナタで切りつけてくる、プロレスかのような大技を繰り出し、大勢でヘリコプターに襲いかかって人を引きずり下ろすなどのアクションを見せます。
さらに、特殊メイクはイタリアン産ホラーらしく、かなり悪趣味です。ルチオ・フルチ監督作品だと勘違いして見ると失望しかありませんが、マッティ作だと思えば生温かい目で最後まで鑑賞できるかと思います。
■『ヘル・オブ・ザ・リビングデッド』(1980年)
またまたブルーノ・マッティ監督の作品。B級ゾンビものの中でも特にひどいと言われているタイトルです。
音楽はなんとジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』やダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』でおなじみのゴブリンですが、楽曲を流用しているだけ......。
ニューギアニアの巨大科学研究施設「ホープセンター」で事故発生し、漏れ出したガスを吸った作業員が次々とゾンビ化。人を襲い始めます。事態の収束に政府が特殊部隊を派遣し、そこへテレビクルーが合流しますが、ジャングルに入ったところで次々とゾンビに襲われてしまい、あっという間に生き残りは2人に。襲われた~、食われた~、助けて~を経て、物語は「ホープセンター」で行われていた極秘研究「スイート・デス計画」に迫っていきます。
この計画はオチなので書きませんが、当時としては面白い発想だったと思います。マッティ監督らしく、ニューギニアっぽく見せるために他フィルムからのジャングル映像や動物映像を大ざっぱに切り貼りしているため、統一感がなく、最初の20分で見るのがつらくなってきますが......。
さらにヒロインの行動が意味不明で、「極限状態でおかしくなっちゃったのかな......」と自分を納得させるしかありません。
■『人間解剖島 ドクター・ブッチャー』(1980年)
ある病院の死体安置室で心臓を食べようとしていた男性職員が捕まりそうになったところを窓から飛び降りて自殺。死の間際に口にした言葉が彼の出身地であったこと、胸部に謎のマークが刻印されていたことから、彼がその島に生きる食人族であったことが判明。事件を調査すべく女医や学者が島を訪れますが、そこには不死の実験をしているマッドサイエンティストや、その実験で生み出されたゾンビがいた――
というゾンビ、食人族、マッドサイエンティストが1度に楽しめる映画です。
ルチオ・フルチ監督の名作『サンゲリア』の舞台とキャストを使いまわしていることもあり、イタリアンゾンビ映画ファン期待のタイトルでしたが、折角の素材を生かし切ることができず、何とも中途半端な印象。唯一輝いているのはマッドサイエンティストで、かなりのキレっぷりを見せてくれます。
実験の産物であるゾンビは、マッドサイエンティストさんの忠実なる僕で、むやみやたらに人間を襲うことはありません。そのかわり、ヒョロヒョロの食人族がゾンビの分まで頑張ります。エグい描写がけっこう多く、セクシーショットも無駄に多いです。
最低映画と一言で言い切れない魅力のある珍作でしょう。
■『ナチスゾンビ/吸血機甲師団』(1981年)
タイトルからしてどうしようもない予感しかしない作品。史上最低ゾンビものといえばイタリアの専売特許かと思いきや、こちらはフランスとスペインの合作です。
かつて侵略した村で殺され、湖に沈められたドイツ兵が、恐らくフランス美女の裸(トップ画像)がトリガーとなってよみがえり、村人を次々と襲い出します。
殺されたナチスがゾンビになっただけでも当時としては新しいですが、本作の何が他と違うかと言うと、このゾンビの中に、かつて村の女性と恋をして子供を設けた男がいること。彼が逃げ惑う村人の中に成長した娘を発見し、感動の再会を果たすという展開があるのです。
フランスらしい情緒が描かれている、なんとも美しいシーンで、思わずウルっときてしまうかもしれません。
■『ゾンビ4』(旧題『人喰地獄 ゾンビ復活』、1988年)
相変わらずしょうもない映画を作り続けるクラウディオ・フラガッソ(クライド・アンダーソン)監督のマカロニゾンビ映画。原題は『After Death』で、日本でビデオリリースされた際には『人喰地獄 ゾンビ復活』というタイトルだったのですが、DVDのリリース時には『ゾンビ4』というタイトルに変更されているという非常に紛らわしい作品です。
『ヘアスプレー』や『セシルB シネマウォーズ』で知られるジョン・ウォーターズ監督が「ポルノ界のケーリー・グラント」と評するゲイのポルノスター、ジェフ・ストライカーがチャック・ペイトンの名で初主演していることでも知られています。
ガンの特効薬の開発に挑んでいる研究者たちが、ガンに侵されてしまった司祭の娘に薬を投与するものの、娘は治療の甲斐無く死亡。司祭は激怒し、ブードゥー教で妻を地獄へ向かわせ、ゾンビをよみがえらせようとします。
司祭の暴挙を止めようとする研究者たちが洞窟にやってきて司祭を殺しますが、すでにゾンビ化していた司祭妻が次々と襲います。どうにか逃げ延びたのは幼い少女だけ。そして物語は20年後に飛び、生き延びた少女が仲間とともに再び島に戻ってきたところをゾンビに襲われます。さらには、同じく島に来ていた別のグループが偶然見つけた本に書かれていた呪文でゾンビを大量に復活させてしまい――。
すべてのゾンビがジョージ・A・ロメロ監督の考えたルールに従わないといけない、というわけではありません。しかし、本作のゾンビは普通に言葉を交わしたり、攻撃に銃を使ってきたりするという驚きの設定。
カメラはブレ気味、メイクはやっつけ、音楽や映像の素材は他の映画の使い回し、演技も舞台も音声も3流以下と、全体的に非常に退屈で、90分の上映時間が苦痛です。
極め付きが急展開すぎるクライマックス。もちろん壮大ではなく、マカロニゾンビ的な正統派どうしようもないラストです。
■『レイダース 失われたゾンビ』(1986年)
タイトルの時点でつっこみどころしかない作品。レンタルDVDのコーナーで見つけたら、パッケージを眺めてひとしきり笑った後、アホらしくて棚に戻すでしょう。しかし、本作はぜひ鑑賞してほしい秀逸な作品。脱力系笑いを約束してくれるダウナー系ゾンビ映画です。
本作が他と一線を画すのはその主題歌。「ゾンビ映画を見るぞー」と意気込んで見ると、拍子抜けするほど間抜けな曲が流れます。サビの歌詞は「見ちゃいけないものをみちゃった、ゾンビが追っかけてくる~」というもの。以下の動画でご覧ください。
この曲に続くオープニングでは、放射能物質を運ぶトレーラーをテロリストが強奪します。「これをきっかけにゾンビパンデミックスが?」と期待していると、テロリストは呆気なく殺されてしまい、放射能も無事。何事もなく終わります。実は伏線になっているのかと思いきや、このシーンは完全に宙ぶらりん状態で、最後まで本編とは全く関係がありません。
そして本編ですが、マッドサイエンティストがゾンビを数体生み出すものの、発明を得意とする少年がおじいちゃんの古いレーザーディスクを改造して作った自作レーザー銃で一掃。以上。それだけです。内容はオープニングだけでなく、タイトルとも関係がありません。
ちなみに、この映画が公開されたのは1986年。デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』と同じ年なんです。この映画に限ったことではありませんが、ホラー映画って本当に奥が深いな......。
■『デイ・オブ・ザ・デッド』(2008年)
ジョージ・A・ロメロ監督の名作『死霊のえじき』のリメイク。しかし、オリジナルとは随分内容が異なります。
脚本は『ファイナル・デスティネーション』シリーズのジェフリー・レディックで、監督は『13日の金曜日 PART2』&『PART3』のスティーヴ・マイナーです。
低予算で十分上質なホラーを作る方法を知っている2人が作って、どうしてこんなことに!? と驚きを隠せないほど陳腐で、お粗末の一言。
■『ゾンビの秘宝』(1981年)
どんなテーマにも加えられる「ゾンビ」ですが、本作ではお宝探しとゾンビが混ぜ合わされています。しかし、全く上手くいっておらず、結果的に「映画鑑賞という名の拷問」を経験させてくれる作品として有名になりました。
砂漠に隠されたナチスドイツのお宝を探す人々を迎えるのは、ナチスゾンビ(ナチスゾンビというコンセプトはB級ゾンビ界のお気に入りのようです)で――というストーリーがつまらない、さらにはキャラクターの設定が弱くて感情移入できないという愚痴はまだまだマシな方です。
本作は画質が最悪で、後半になると暗くて何が起こっているのかが見えません。さらには音声も悪くてうるさい......。ちょっと迫力の戦闘シーンがあると思えば、イタリア映画の『バトル・コマンド/熱砂の大作戦』からシーンをカットして貼り付けただけという、やっつけも堪能できます。
監督はB級映画作りで有名なジェス・フランコ。エログロと猟奇をゆるい感じで撮る監督として知られていますが、そんな彼でもここまでひどい作品は珍しいと言われています。自分の限界に挑戦してみたい! という方は手にとってみてはいかがでしょうか。
Eurociné, J.E. Films (Julian Esteban Films)
ソース:What Culture、YouTube①・②・③・④・⑤・⑥・⑦・⑧・⑨・⑩・⑪
(中川真知子)
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