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ゲームクリエイターが否定するゲーム製作にまつわる10の説

2016/02/07 21:30 投稿

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ゲームクリエイターが否定するゲーム製作にまつわる10の説


ゲームを遊ぶ人の数は年々増えていますが、ゲーム製作についてはまだまだ謎が多く、間違った認識を持った人はハードコアゲーマーの中にもいます。


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「ゲーム製作にまつわる都市伝説」とまでは言わないまでも、多くの人が持つ誤解を解くため、豪Kotakuがゲーム製作者たちに聞いてみました。


■間違い1:ゲーム製作者たちは怠けもの

ゲーム製作にまつわる間違った認識について尋ねた時に、一番多く挙がったのがこれ。開発者たちは何度も何度も、プレイヤーたちに「怠けている」と言われた状況を話したそうです。

ゲームの開発は時に非常に厳しく、期限内に完成させるためだけに週40時間を大幅に超す労働量になるという話も少なくありません。

これは「crunch」(かみ砕くこと、危機的状況、などの意)として知られる状況で、評価の高いゲームから売れ残って安売りされているゲームまで、多くのゲーム製作に見られる状況です。

ゲームの職場文化は、超過労働、crunch、死の行進」だと語るのは、匿名でインタビューに答えてくれたトリプルAゲームの製作者。さらに以下のようなことも言っています。

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全員が肉体的、精神的に毎回ぎりぎりのところまで追いつめられて、中には業界の超過労働文化のせいで家族を失う人もいる。どのプロジェクトでも、3から6カ月間「crunch」状態で働かされ、これが業界の「ふつう」だと認識されている。


家族持ちの人や高齢の製作者は、普段から馬鹿みたいに長くて最後には数カ月「crunch」状態になる、この「ふつう」の仕事のペースが維持できないからいつも差別されているんだ。


ゲームへの「情熱」で低い給料を受け入れろと言われ、ゲームを完成させるために健康と家族を犠牲にする......そんな中でゲームに1つバグが残っているだけで、もしくは期待した要素がゲームになかったというだけで、怠けもの呼ばわりされるわけだ。馬鹿げているよ。


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■間違い2:ゲーム製作は簡単

これについては、ヤギ・シミュレーターこと『Goat Simulator』で知られる、Coffee Stain Studiosのアルミン・イブリサジクさんがこう語っています。

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一番の誤解は、ゲーム製作にかかる時間と労力についてだと思います。


FPS/タワーディフェンスゲーム『Sanctum 2』に携わったときのことを話すと、『Sanctum 1』ではサーバーブラウザーから手動で好きなマップを探さないといけませんでしたが、『Sanctum 2』では人々にマップを選ばせて、マッチメイキングを使い、同じマップで遊びたい他のプレイヤーが参加できるようにしました。簡単で便利になったと思いませんか?


しかし、プレイヤーたちはそれでもサーバーブラウザーも望んでいて、フォーラムにはそんな声が絶えずありました。一人のプレイヤーは「『Sanctum 1』ではサーバーブラウザーがあったんだから、その時のコードを『Sanctum 2』にコピー&ペーストできないのか?」なんて書いていましたが、こんちくしょう! 別のゲームから単純にサーバーブラウザーをコピー&ペーストなんてできないんだよ!


この「ゲーム製作は簡単だ」という説は「開発者は怠けもの」という説と関連しています。ゲーム製作に関わっていない人々は、ゲーム製作がコンテンツを取るか機能を取るか、時間を取るかリソースを取るか、の絶え間ない妥協であることを理解していません。


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■間違い3:ゲームに必要なのは良いアイデアだけ

Uber Entertainmentのチャンダナ・エカナヤケさんは、ゲームの製作過程についてこう語っています。

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アイデアは魅惑的で完璧。


『No Man's Sky』みたいな広大な宇宙で、友達と一緒に恐竜に乗ってゾンビと戦うなんてどうでしょう? 『スター・ウォーズ』の世界観を持つ『Far Cry』風のゲームで、ハン・ソロとしてプレイできるとか? ロケットを月にくくりつけて、ほかの星にぶつけて敵を倒すとか? スペースコンバットゲームだけどシームレスなFPSになっているとか?


すべてが可能な状態であれば、アイデアを考えるのはゲーム製作の楽しい部分でしょう。しかし、ほとんどのゲームにおいて開発当初のアイデアは、そのゲームが出荷されるときのものと違うか、それとも最初のアイデアの期待に応えられないかのどちらかです。


時にはプロダクションの現実が実現を難しくしますし、ほとんどの場合はゲームのプロトタイプ段階で、そのアイデアがゲームプレイをつまらなくすると判明します。しかし、この場合プロトタイプを作った段階から何度も試されるまで、プレイヤーはゲームを目にすることがありません。なので、これが問題になることはまずないんです。


クラウドファンドされるゲームの多さは、製作者にとってもプレイヤーにとっても問題になっています。プレイヤーは売り文句を見て出資し、売り文句通りのゲームができるのを期待します。ゲーム開発中にアイデアがフォーラムやライブストリーム、ツイートなどで語られれば、ファンはそれが確定された要素だと考えてしまうんです。


しかし、ゲーム開発者はアイデアを出発地点として、開発の過程でいろいろ変わると考えています。この考えの違いが問題を引き起こすんです。ゲーム開発にはセクシーではない、つまらない部分もたくさんあり、多くの場合、開発者はその部分を売り文句では語りません。


その調整、開発ツール、アセット管理、ミドルウェアのアップデート、テストやバグ修正といったことが、ゲーム開発の時間の多くに割かれ、プレイヤーたちが期待している要素を実装する時間が残らなくなるというわけです。


常に物事は考えるよりも時間がかかります。この問題に関して単純な解決方法はなく、絶えずコミュニケーションを取り、大げさな約束はしないようにする他はないでしょう。


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■間違い4:ダウンロードコンテンツは悪

最近ではゲームがリリースされるより前に、DLCの予定が発表されることがあります。

これを開発者たちがプレイヤーからお金を搾り取ろうとしている証拠だと考える人もいます。「不完全」なゲームにお金を払うように期待されているというわけです。

しかし、DLCをめぐる現実はそれよりも複雑。Deep Silver Volitionのゲーム・ユーザー・リサーチャー、エリザベス・ツェッレさんは、以下のようにメールで語ってくれました。

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特にDLCが最初から発表される場合、低く評価されるのを多く見ています。しかし、大抵はコアタイトルから取り去ることのできないものだということをプレイする人たちに理解してもらいたいです。


コアタイトルのように、ゲームの発売日の数カ月前までに完成させないといけないという状況にはならず、(DLCにより)チームはデジタルコンテンツをそれ以降も作り続けられます。


開発者にとってはゲームの発売の間を埋めるものの存在は大きいです。もちろんDLCが利益を生むというのも1つですが、DLCはリストラの恐怖談には事欠かないこの業界に安心感をもたらしてくれるものでもあります。


昔はゲームが完成すると、それ以上開発チームに大きな仕事はないため、ゲームの提出後に大規模なリストラが行われることがありました。


同じ開発スタジオが数カ月後には、次のプロジェクトのために大人数の開発チームを必要となり、再雇用するんです。DLCプロダクションは開発者たちに雇用を与えるものであり、開発スタジオでリストラ~再雇用のサイクルが起きないように追加の資金を生み、ゲーム開発者たちにより安定した生活を与えるものなんです。


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■間違い5:ゲーム開発者はお金持ち

ゲーム製作には何百万ドルとかかるという記事もありますし、開発元が数十億ドルの契約とか、YouTubeでストリーム配信する人が超高いマンションを購入したといった話もあります。

ゲーム開発者たちはみんなお札のプールを泳いでいるに違いないと想像してしまうのも無理はありません。しかし、現実は違います

Boss Key Productionsの共同創設者、「クリフィーB」ことクリフ・ブレジンスキーさんはメールで「自分はラッキーだった」と語ります。

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何年間も一生懸命働いて素晴らしいゲームを素晴らしい人々と作ってきたかもしれない。でもティム・スウィーニー氏はとても思いやりのあるボスで、彼は初期の社員にとてもよくしてくれた。自分のような人間は成功したけど、たくさんの開発者たちはぎりぎりやっていけているんだ。


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■間違い6:リアルなグラフィック=良いゲーム

『Treachery in Beatdown City』のデザイナー、ショーン・アレンさんは「人々は写真のようなグラフィックのゲームに簡単に惹かれてしまう」と考えています。

そのため「美しい美的感覚」や「要素を強調した」作品には目が向けられないとのことです。さらに、メールで以下のように語っています。写実的なグラフィックを評価することには危険もあるのだとか。

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ピクセルアートの媒体としての評価は低いです。これはピクセルアートが「簡単」だと思われているからでしょう。しかし、アートを見る上で製作の容易さを唯一の基準とすべきではありません。


それがゲームに新しさを呼び込むかどうかにかかわらず、より新しく、より大きな世界だというだけで大げさに熱狂されます。ここでも(大半の人にとっては)フレームレートとテクスチャーの解像度がアートディレクションに勝ってしまうのです。


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■間違い7:開発者がやることはすべて利益のため

開発者たちはもちろん生きていくために稼がないといけませんが、「できるだけたくさんお金を作ること」が彼らの唯一の目標ではないとArenaNetのマシュー・メディナさんは語ります。

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もちろん価値(≠利益)を最大限に上げるためのデザイン上の判断が存在することも事実です。しかし私自身の経験では、現実にそういったデザイン上の判断の結果、開発チームは大抵の場合「投資利益率」の立ち位置からそれを見ることになります。


それに見合った売り上げが得られるかどうか確証を持てる予想も立てられず、投資に対する保証もなしに、X人の開発者とYドルを費やして、1つの要素、もしくは1つのコンテンツを作らせるなんて、意味をなしていないでしょう。


最終的にゲームスタジオはすべての社員が、ある程度そのことを考える義務のあるビジネスなのです。しかし、私に言わせれば(私は2度もEAで働いていますが)、23年のキャリアーの中でどの雇い主も、一度たりとも、プレイヤーから可能な限り多くのお金を得たと感じたことはありません


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■間違い8:ゲーム開発者はバグを気にしていない

ゲームをプレイしていて遭遇するバグは、どれも大きなものに見えるもの。ゲームが発売されてすぐに何千人もの人が遭遇したバグに対して、「こんなバグを誰も見つけることができなかったなんて!」と多くのプレイヤーがコメントすることも珍しくはありません。

それに対して、『A Hat in Time』の開発者ダン・ツカサさんはこう語っています。

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バグは非常に限定された状況でないと出現しないということにプレイヤーは気づいていません。「特定の一般的な状況」で起きているように見えるのかもしれませんが、それはプレイヤーが所持しているのがX個のアイテム、銃弾数がY、ゲーム内のタイマーが12:01と0.003ミリ秒カウントする前にぴったり20人の兵士を殺していないと出ないもの、一見ランダムな状況に見えても、特定の状況下でないと起きないものバグだったりもするわけです。


バグは数えきれない要素が同時に起こることによって生じます。「ああ、この数値を直せばいいか」なんて単純なものであることはほとんどありません。


ゲームを20年プレイして一度も遭遇しなかったバグに、別のプレイヤーが開始5分で遭遇することだってあるわけです。バグに関して、私たちのような開発者はプレイヤーに悩まされています


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■間違い9:「カジュアル」ゲームは意味がない

『Cobra Club』や『Hurt Me Plenty』などの大人向けのゲームを開発するロバート・ヤンさんは、人々は「カジュアル」なゲームの重要性を軽く見ていると考えています。

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iOSやAndroidでリリースされているキム・カーダシアンのゲームは、少なくとも『DOTA2』と同じくらい、もしかしたらもっと多くインストールされているでしょう。しかし、Steamでトップのゲームは『DOTA2』であり、カーダシアンのゲームは数多くの何千万人のユーザーがいる、ヒットしたモバイルゲームの1つにすぎません。


人々が理解していないのは(そして私自身も理解に苦しむのは)それらの数字の大きさです。500万本売れた『バイオショック・インフィニット』が「失敗」とされたことにゲーマーたちはショックを受けましたが、もし私たちが、きっと製作もマーケティングも維持するのにそこまでお金のかかっていない『クラッシュ・オブ・クラン』がAndroidだけでも数億ダウンロードされていることを知っていれば、そこまでショックを受けなかったかもしれません。


ゲーマーはこれを否定しがちです。なぜなら、どのゲームが人気であるべきか? 成功すべきか? という点で私たちと考えが異なる状況があるからです。


もっと他のものとは違う、システムに複雑性があり、アート的な意図もあって、プロダクション・バリューも高い......キム・カーダシアンのゲームはどれにも当てはまらないかもしれませんが、実際のところ数字だけ見れば、Steamにあるどの「本物のゲーム」よりも大きな成功と文化的な影響を持っています


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■間違い10:プレイヤーはゲームに何がベストかを知っている

情熱を持ったファンは、フランチャイズのすべてを知り尽くしていて、ゲームがどうあるべきなのか、強い思いを持っているものです。フォーラムやコメント欄ではそういったファンたちの声が見られます。

しかし、Panache Gamesの創設者であるパトリス・デジーレさんは、ファンの要望に応えることがより良いゲームにつながるとは限らないと考えています。

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もし、みんなの声や(プレイヤーからの)一般的なフィードバックに耳を傾けていたら、『アサシンクリード』にはドラゴンやモンスターが登場していたでしょうし......『ゲーム・オブ・スローンズ』では誰も死なないでしょう。


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ゲーム業界に限ったことではありませんが、裏側のことは現場にいる人でなければわからないものです。


Illustration:Sam Woolley.
ソース:Kotaku Australia

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