殺人鬼が次々と人々をブチ殺し、観客を恐怖させる「スラッシャー」映画。ホラー映画の一ジャンルとして根強い人気があり、『ハロウィン』や『13日の金曜日』、『悪魔のいけにえ』などが代表的な作品です。
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そんなスラッシャー映画に欠かせないのが、殺人鬼から逃げ惑い、絶叫するスクリーム・クイーン。そんな絶叫女王のトリビュートドラマ『スクリーム・クイーン』が放送を開始したのを記念し、io9がスラッシャー映画の歴史を振り返っているので、ご紹介します。
『スクリーム・クイーン』は殺人犯によって閉鎖された大学のキャンパスを舞台にしたホラーコメディ。傑作『ハロウィン』でローリー・ストラードを演じ、その絹を裂くような絶叫で絶大な支持を得たジェイミー・リー・カーティスが出演していることでも話題です。
そんなローリーの話題も登場する、スラッシャー映画の歴史を紐解いていきましょう。
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世界初のスラッシャー映画はどの作品なのでしょうか? 答えは人によって異なるかもしれませんが、1971年の『血みどろの入江』、『悪魔のいけにえ』や『暗闇にベルが鳴る』(共に1974年)あたりの名前が挙がるかもしれません。
少し遅れて公開された1978年のジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』はスラッシャーのテンプレートのようになり、そのやり方は後の映画で繰り返し使われています。
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io9によると、『Men, Women, and Chain Saws: Gender in the Modern Horror Film』の著作者であるキャロル・クローバー氏は、『ハロウィン』が成功の理由の1つは、ジェイミー・リー・カーティスを最後まで生き残る「ファイナル・ガール」にしたことだと考えているそうです。
本作で彼女のキャリアは確立され、その後、1980年と81年に『プロムナイト』、『テラー・トレイン』、『ハロウィンII(ブギーマン)』と立て続けにホラー作品に出演し、ハリウッドを代表するホラー女優になりました。
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当時、ホラー界ではカーティスは引く手数多。彼女が起用できないとなると、監督は『ヘルナイト』のリンダ・ブレアや『誕生日はもう来ない』のメリッサ・スー・アンダーソンといった、カーティスと同じような年齢の女優を起用、もしくは『13日の金曜日』のエイドリアン・キングや『13日の金曜日PART2』のエイミー・スティールといった無名女優を主役に抜擢しました。
カーティスが演じたシャイなベビーシッターのキャラクターは、その後のファイナル・ガールのスタンダードとなります。最後まで残る少女は分別のある典型的な「良い子」で、脚本家がどんなに試練を与えようとも、最終的にその人間性が身を守るのです。
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io9のシェリル・エディ記者は「スラッシャー映画は女性蔑視の傾向が見られるジャンルではあるものの、全体的に最低でも1人は有能で動ける女性キャラクターが登場する」と書いています。
確かに、キャーキャー騒ぐだけで観客が早く死んでほしいと感じる女性キャラもいる一方、男性よりも活躍する女性キャラも多いですよね。
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感情移入できるファイナル・ガール(と恐ろしく記憶に残るヴィラン)をキャスティングすることが最も重要だということは、スラッシャー映画が再び脚光をあびるようになった『スクリーム』で証明されています。そして典型的な展開は、最初に悲惨な出来事を持ってくること。
例えば、ジェイソン・ボーヒーズがクリスタルレイクで溺れ死ぬ、フレディ・クルーガーがエルムストリートで子どもたちを殺しまくる、小さいマイケル・マイヤーズがハロウィンの日に姉を滅多刺しにする、大晦日やプロムの夜といったイベントのちょっとした悪戯が悲惨な結果をもたらすといった具合です。
そのイベントの後に、高校入学や大学入学を控えた年頃の主人公が登場するパターンが多いですが、彼女たちは過去の悲惨な出来事のことは完全に忘れてしまっていることがほとんど。そして、事情を知る人物が差し迫る危険を人々に訴えるも、それは得てして無視され、結局大惨事に発展します。
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善意の忠告をするものの、変人扱いされてしまう。
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スラッシャーの面白さは「この街は終りだ!」といった一見馬鹿げた主張にどのキャラクターが耳を貸すか? そして殺人鬼をどんな行動で避けるか? を見ることにあります。
観客は、夢見がちなキャラクターに魔の手が忍び寄るのをハラハラしながら見守り、心の中で「あぁぁぁ、そっちに行っちゃダメ~!」と叫ぶのを楽しむのです。
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また、前出のクローバー氏並びに『Games of Terror: Halloween, Friday the 13th, and the Films of the Stalker Cycle』の著者であるヴェラ・ディッカ氏は、スラッシャーというジャンルが持つ最も破壊的な面は、観客にヴィランの視点を疑似体験させることだと書いています。
こうすることで、観客により恐怖を抱かせ、より嫌な感じを楽しんでもらうことが可能になるのだそうです。
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一般的に、映画が進んで死人の数が増えても、殺人は秘密裏に行われるため、ファイナル・ガールが真相に直面するまで観客は何が起こっているかをひたすら追うだけです(『ハロウィン』を含む多くのスラッシャーが、エンディング近くでヒロインが友人の死体の山を発見し、殺人鬼と対峙するという流れ)。
そして、一度殺人鬼の面が割れる、やっつけられる、もしくは鎮圧されると映画は終わりを迎えます。
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『スクリーム』がそうであるように、この真相が明らかになるクライマックスのシーンは衝撃的かつ印象的である必要があります。
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スラッシャーに欠かせないのが、ファイナル・ガール同様、恐るべき手に負えない敵。
『ハロウィン』のマスクを被ったマイケル・マイヤーズ、『13日の金曜日』のジェイソン・ボーヒーズ(と世界一強いケーブルニットセーターを着た女性と言えるボーヒース夫人)、ホラー界のファッションリーダーこと『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーは象徴と言える存在です。
また、彼らの出演作ほどビッグタイトルでなくても、『血のバレンタイン』の殺人鬼や『バーニング』のキャンプ場の管理人、『悪魔のサンタクロース/惨殺の斧』のサンタクロースといった、スケールが小さいながらも予測不可能でとても不気味なヴィランがいます。
初期のスラッシャーは、その過激な暴力描写が批判されることも多かったですが、ホラーファンにとっては、それこそが一番のアピールポイントでした。
このジャンルは、ストーリーラインが似る傾向にあります。そのため、よりグロく、よりアーティスティックに死のシーンを演出して差別化を図ることが重要になっていったのです。
殺人シーンが重要視され、トム・サヴィーニのような特殊メイクアップアーティスの類まれなる技術が重宝されました。
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無名時代のケヴィン・ベーコンもトム・サヴィーニのおかげでこの通り。
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しかし血なまぐさい殺戮も、次第に観客に飽きられていきます。フレディ・クルーガーはジョークに走り、ジェイソンシリーズは単調になり、10代の映画ファンは徐々にホラー映画に興味を無くしていきました。
1991年に公開された『羊たちの沈黙』は大ヒットし、アカデミー賞を受賞するまでになりましたが、ホラーでアカデミー賞作品賞を受賞したのは後にも先にもこれだけです。
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人気を失ったスラッシャー映画でしたが、再び脚光をあびることに。起死回生となった作品は1996年の『スクリーム』。
『エルム街の悪夢』のウェス・クレイブン監督が「ホラーあるある」を詰め込んだ、直球で恐ろしい本作は、かつてのホラーファンを喜ばせただけでなく、新たなホラーファンを獲得します。
興行収入的に大成功を収め、『ラストサマー』や『ルール』シリーズを生むきっかけにもなり、ブームを巻き起こしました。そしてホラー業界だけにとどまらず、『最終絶叫計画』といったパロディまで登場することになります。
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『キャビン』のような異色作は別として、現在もスラッシャーはかつての名作のフォームを維持しています。21世紀のベスト・ホラー映画は、過去の作品を大事にしつつ新境地を開拓した作品が多いです。
その中でも最近公開された『It Follows(日本未公開)』は過去のスラッシャーに影響を受けているにも関わらず、ゴアよりも精神的な恐怖に重きを置いており、今の時代にふさわしい新鮮さがあるといえます。
古き良き時代のスラッシャーは、リバイバルやリメイク、テンプレートとして繰り返し映画化されるうちに目新しさがなくなってしまいました。そして、大画面での地位を失ってしまったように見えます。
『スクリーム・クイーン』のように、新たなる活躍の場をテレビにうつしたことは正しい選択なのかもしれません。
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いかがでしたか?
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[via io9]
(中川真知子)
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