最近巷では、「セックス・ロボットの開発は禁止すべきである」という声が高まってきているのだそうです。
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しかし「io9」では、この意見は短期的にしか物事を見ておらず、これらに使用されるであろう科学技術が発展しないばかりか、法整備や社会の見識の革新も阻害しかねないという論が展開されています。
真面目な話ですが、気になる方は詳しく読んでみてください。
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「セックス・ロボットを禁止せよ!」
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こう叫ぶのは、全自動殺戮兵器に反対しているNGO団体の「キャンペーン・トゥ・ストップ・キラー・ロボッツ」と、セックス・ロボットに反対している運動「キャンペーン・アゲインスト・セックス・ロボッツ」の面々。
ロボットの倫理学を研究しているイングランドのデ・モントフォート大学教授のキャスリーン・リチャードソン博士、そしてスウェーデンのスコフデ大学で情報科学を教えている、エリック・ビリング準上級講師がそれらを率いています。
彼らが反対を主張する理由は、「機械による動きが事故を起こし、人間に危害を加える可能性がある」という「スカイネットにより人類が殲滅されてしまう」説に近いものですが、それとは少し違った意見も含まれています。それがこちら。
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「すでに存在する不平等を増強、または再現してしまう。」
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現実的に世の中には、性差別に女性蔑視、そして男性上位主義といった問題は山積みです。「それをロボットにまでやらせるのか!?」ということに加え、他にもリチャードソン博士はこう言っています。
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「女性や子供の姿をした機械がセックスの対象として使われることは、人間のパートナーや売春婦たちのかわりである。」
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『エクス・マキナ』や『her/世界でひとつの彼女』といった娯楽映画に代表されるように、人間の男性がいつしかロボットの女性に心を奪われてしまう話はいくつも作られています。
フェミニスト的な視点で言うと、これらはほとんどの場合、男女平等を考えずに男性上位主義的に機械の女性を(性的にも)支配しようとする話ばかりです。そしてセックス・ロボットだけでなく、現代社会で活躍するテクノロジーの多くが、男性によって設計され、男性が使うために作られています。
「io9」曰く、たとえばスマートフォンは男性の大きな手に馴染むように作られており、なおかつ男性の服に収まるサイズに出来ているとのこと。ペースメーカーに至っては、20%の女性にしか適用できない大きさなのだそうです。
アタマの賢い人たちは、人間の特性を何かのせいにして、偏見と決めつけを持ち出しがちです。 キャンペーンを展開している人たちは、「ロボットに性差別をするな」と言っているようですが、逆にそう叫ぶことこそがロボットの性差別に見えなくもありません。軽々しく道徳観を振り回しているだけで、臭いものに蓋をしているだけなのではかろうか? と。
それにもし、ロボットが男性的でも女性的でもないデザインだったり、両性具有だったり、性別の切り換えが可能だったりしても、同じことを喧伝するのでしょうか? ロボットは限りなく人間に似せて作られているだけで人間ではありませんし、ましてや人権だってありません。
セックス・ロボット反対の声は、たとえば科学技術の発展の妨げになるだけでなく、伴侶に先立たれた人が性行為なしにただ側にいて欲しいとラブドールを購入する人たちや、医療や介護が必要な人たちにも需要が有ることに目を向けていません(「当事者の間に広がる「意外な医療機器」待望論」では、これについてもっと詳細が語られているので、ぜひご一読を)。
人は神話の時代から人工物を愛していた
一方で「the guardian」に取り上げられていた、『Love and Sex with Robots: The Evolution of Human-Robot Relationships(ロボットとの愛と性:ヒトとロボットの関係の進化)』の著者デイヴィッド・レヴィ氏はこう言います。
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インターネットを通じて操作ができるサイバーセックス玩具が益々普及しそうな様子から、社会がセックス・ロボットを歓迎する見込みがあるでしょう。
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ロボットとの性行為は、人間とロボットとの関係を写す鏡だとレヴィ氏は捉えているようです。「USB オナコン」や「iPad用オナホール」などは、もはや古いガジェットですし、これからは未来の男性器:ペニス2.0なんてブッ飛んだモノまで提唱される時代です。
たとえばですが、人工知能を備えたラブドールが、セックス・ロボットとして世界に先駆けて流行るのも、そう遠い未来ではないのかもしれません。再び映画の話にはなりますが、「【閲覧注意】最も珍妙で笑える仮想空間でのセックス・シーン12選」と「未成年禁止なSF/ファンタジー映画の名作16選」でもご紹介した、和製SFポルノ映画『I.K.U』(2000年)ではドンズバでセックス・ロボットを主題にしたストーリーが展開しており、社会が受け入れる土壌は以前からあるようにも感じます。
ロボットではないにせよ、人間と人工物との恋愛と言えば、80年代のハリウッド映画『マネキン』なんていう作品もありますし、近年では『ラースと、その彼女』などがありました。しかし、このテの元祖は、実はギリシャ神話の時代からすでに存在します。
それは彫刻家ピグマリオンが、大理石から彫り出した理想の女性像ガラテアにゾッコンとなり、女神アフロディーテがピグマリオンの切なる願いを聞き入れてガラテアを人間にし、2人が結ばれるという物語です。
彫刻家による口吻で人間化するガラテア
これは神話ですが、ちょっとしたSFでもあり、セックス・ロボット問題が叫ばれている今から振り返れば、未来予想図でもあると言っていいのかもしれません。
機械は私たちがどう作るか? による
たとえばインターネットは世界中と通信する技術ですが、ネットを使う人次第で性別も政治的な思想も意見も好きなように発信/受信でき、ネット上に作られたコミュニティーとやり取りが可能な世界が構築されています。
同じようにロボットだって、人間がプログラミングをしなければただの人形です。どのように作るのか、そしてどのように使うのかで良くも悪くも、はたまたエロくもなり得るのです。我々の社会では、LGBTや性同一性障害について考え直されている時代。
どうしてロボットになると多面的に考えて貰えないのでしょうか?
愛地球博でのアクトロイド
それに、上記でも述べたように医療や介護の現場での使用目的、はたまたこれは日本の話ですがオリエント工業では障害者割引制度があり、障害者の親が我が子のためにと購入する場合だってあります。さらにはバーチャル・リアリティーを使って、性犯罪者を治療する試みも行われているのです。
これらの技術をもっと発展させれば、益々人の役に立つものとなるでしょう。まだ起こりもしない人工知能の反乱を心配するよりも、人々のために愛を振りまく平和利用が発展していくことを願います。
In Defence of Sex Machines: Why Trying to Ban Sex Robots is Wrong[io9]
トップ画像:Humans (AMC).
[Campaign to Stop the Killer Robots]
Ethics of Robotics[Campaign Against Sex Robots]
[Dr Kathleen Richardson]
[Erik Billing]
Review: Love and Sex, by David Levy, and How to Build Your Own Spaceship, by Piers Bizony[The Guardian]
Jean-Léon Gérôme[Bridgemen Art Library]
参考:ピグマリオン[アフロディーテ -5分で読めるギリシャ神話-]
参考:当事者の間に広がる「意外な医療機器」待望論[月刊『集中』]
ガイノイド写真[Gnsin、CC BY-SA]
Technology Isn't Designed to Fit Women[MOTHERBOARD]
How virtual reality can help treat sex offenders[THE CONVERSATION]
In defence of sex machines: why trying to ban sex robots is wrong[THE CONVERSATION]
(岡本玄介)
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