さすがに電気じかけじゃないけどね。 現代の義肢技術は素晴らしいですが、それでもまだ発展の余地のある技術でもあります。では、500年前の義手とはどのようなものだったのでしょうか? 1500年台にフランス王室公式外科医であったアンブロワーズ・パレさんの作った義手はとても良く出来ており、兵士が戦場で使ったりもしたんだそうです。 詳細は以下より。
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1500年代の人に尋ねれば、誰でもパレさんがいかにすごい人だったかを語ってくれるでしょう。低い身分の出ながらも、戦場で兵士たちの治療にあたり、その技術のすばらしさに名声を高め、王室公式外科医にまで上り詰めた人です。とは言っても、彼のアイデアすべてが素晴らしかったわけではなく、子供の歯肉をメスで裂き、歯を露出させる提案をしたりもしています。とはいえ、腕などを切断した際に、従来の熱い鉄や煮えたぎった油を使った従来の止血方法に代わり、血管を縛って止血するという痛みを少なくなる方法を編み出したのもまたパレさんだったそうです。 医者としての彼は、自らが救った人々の反応に悩んでいました。一部の兵士たちは腕や足を失ったり、大きな傷を負ったまま生きるよりは、自ら命を断つことを選んだのです。この問題を解決しようと、パレさんは義肢を作り始めます。当時すでに義肢は新しいものではなく、古代エジプトでもすでに義肢は存在していました。しかし、パレさんのものはある意味斬新なものだったのです。彼はただ失われた身体空間を埋めるだけの義肢以上のものを求めました。 解剖学者でもあったパレさんは、本当の手足が動くように可動できる、生物学的に実際の手足に近い義肢をデザインしようとしたのです。例えばパレさんの考案した義足の場合、膝の部分が、立った状態、座った状態でそれぞれロックできるようにデザインされています。初期の義腕のスケッチでは、腕の筋肉の働きを再現するために滑車を用いて、曲げ伸ばしが行えるようになっていました。そんなパレさんの義肢デザインの中でも群を抜き秀でていたのが義手のデザインです。
それがこの複数の留め金とバネにより、手関節の動きを生物学的に再現しようとした義手です。パレさんのデザインは同僚たちにも評判となり、プロトタイプの制作が始まりました。1551年には実際に機能する義手が、フランス軍の大尉によって戦場で使用されます。この大尉によれば、この義手はとてもうまく機能したため、馬の手綱を握ったり放したりすることも可能だったとのことです。 残念なことに、このパレさんの残した功績は、義肢技術の革命を起こすまでには至りませんでした。パレさんはその後も義肢、義足、義眼などを作り続けてはいましたが、多くの国々は義肢制作に資源を費やすことが出来なかったり、費やさそうとはしなかったのです。現在の我々の持つ素材や技術では、脳からの信号により義肢を動かすことも可能になっています。 米コメント欄では『ベルセルク』のガッツの腕や、そのインスパイア元となったであろう1500年代のドイツの騎士ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンについて言及するコメントも見られますが、まさにそうような印象を受ける義手です。 フランス映画『ロング・エンゲージメント』の中にもネジを巻いて手の握り開きが出来る義手がありましたが、現代の義肢の多くは見た目こそリアルなものの、可動しない装飾義肢が多く、そのような可動性を備えた能動義手はあまり見られないようで、また電動の筋電義肢となれば価格も高価で欧米諸国と比べると、日本での普及率はとても低いとも聞きます。 時代や技術が進んだとは言っても、利便性と普及性を考えるとまだまだパレさんの時代から進んでいないのかもしれません。もし、パレさんの活躍以降も絶えず義肢技術の改良が続いていれば、より多くの人が安価に利便性の高い義肢を手に入れることができたかもしれませんね。今後の義肢技術の向上と普及に期待したいところです。
Via Science Blogs, Discovery, NCBI, and The University of Virginia [via io9] (abcxyz)
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