その後の映画を変えた、革命的な恐竜映画『ジュラシック・パーク』シリーズの最新作『ジュラシック・ワールド』。
今回は世界的な超ヒットとなっている本作を手がけた、コリン・トレボロウ監督に話を伺いました。
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――監督が初めて元祖『ジュラシック・パーク』を鑑賞した時、どのように感じたのでしょうか? また、本作にその頃の思いは込められているのでしょうか?
コリン・トレボロウ(以下、トレボロウ):『ジュラシック・パーク』を初めて観た時、自分はすでにティーンエージャーでしたが、本当に子供の頃へ戻ったような気持ちになりました。その思い出が今回の作品作りに役立ったと思います。
『ジュラシック・パーク』はさまざまな世代が観て育った、人によっては100回観ていてもおかしくない作品ですし、私たちはそこに敬意を払っているので、当時観た大人たちにも、当時観ていない新しい世代にも、『ジュラシック・ワールド』は「子供の頃へ戻れる映画」にしたいという狙いがありました。
――『ジュラシック・パーク』と同じスタッフが何人も参加していますが、彼らは本作においてどのような影響を与えたのでしょうか?
トレボロウ:最初からリック・カーター(『ジュラシック・パーク』のプロダクション・デザイナー)とはかなり話をしましたし、音響も『ジュラシック・パーク』と同じ人間が担当しています。さらに、恐竜スーパーバイザーのフィル・ティペットも戻ってきてラプトルを全て担当していますし、『ジュラシック・パーク』でアカデミー視覚効果賞受賞を獲得したデニス・ミューレンもVFXを担当しています。
こういった素晴らしい人々が、当時と同じスピリットを持って『ジュラシック・ワールド』の製作には挑みました。そういった人選もあって、本作にはかなりの数のオマージュが入れられたわけです。しかし、同時に『ジュラシック・ワールド』シリーズと過去の『ジュラシック・パーク』シリーズとをつなぐ、橋渡しをする役目を今回の作品には持たせています。
この先の『ジュラシック・ワールド』シリーズは、旧作とは全く違った形で変化していき、恐らくオマージュなどは減っていくはずです。
人間同士の関係性も描かれる本作
――恐竜のバトルはさながら怪獣映画のようでしたが、監督自身日本の怪獣映画で好きな作品はあるのでしょうか?
トレボロウ:ギレルモ・デル・トロほどは詳しくありませんが(笑)、怪獣映画はもちろん観たことがあります。彼のようにジャンルの隅々まで観て、自身の映画に反映させるのは本当にすごいことです。私には彼ほどの知識はありません。そして、スティーブン・スピルバーグも怪獣映画、モンスター映画を愛しています。
色んな時代のモンスター映画を観ているとわかりますが、日本の怪獣映画がアメリカのモンスター映画に影響を与え、また逆にアメリカのモンスター映画が日本の怪獣映画に影響を与え、インスピレーションが歴史とともに何層にも重なっていると思うんですね。
どのジャンルでも、さまざまな国のさまざまな作品同士でそういった影響の与え合いが起こっていて、現代の映画はリミックスになっていると感じます。サンプリングを重ねたヒップホップのようなイメージです(笑)。
『ジュラシック・ワールド』が独特なのは、恐竜をモンスターというよりは「動物」として扱っているところです。自分にとっては、本作はモンスター映画ではなく、人間と動物の関係性を描いた映画だと思っています。今も人間は動物たちと地球を分け合って生きていますし、そういったことを表現したいと考えて製作を進めました。
クリス・プラット演じるオーウェンの恐竜たちとの関係を見ればわかるかと思いますが、モンスター映画よりは『ヤング・ブラック・スタリオン』といった動物映画からの影響が強いです。
――そういった関係性を描く上でクリス・プラットは完璧な配役だと感じたのですが、監督の思うクリス・プラットの魅力というのはどういったところでしょうか?
トレボロウ:まず、クリス・プラットは本物の魂を持っていると感じます。動物とコミュニケーションがとれる人物というと、どちらかというとソフトで優しいイメージを持ちますが、クリスは本作のオーウェンにさらにヒーロー的な雄々しさを加え、なおかつリアリティのあるキャラクターとして演じています。
さらに、軍を経て今の仕事に就いているという、本編では詳しくは描かれていないバックグラウンドもクリスは見事に表現していて、色んなものを見てきて、どこか傷ついてきた過去のある人間性がオーウェンからは感じられます。
このように、クリスはキャラクターを非常にリアルで、魂のこもった存在として見せることに成功しているんです。そういった点から、クリスはとにかく信頼できます。ハンサムでアクションヒーローでチャーミングで~といった誰もが知っている点ももちろん素晴らしいのですが、俳優として「信頼できる」という点が、自分にとっては彼の一番の魅力です。
信頼できる男、クリス・プラット。
――CMでは流れていた恐竜の糞を体に塗るシーンがカットされていますが、この他になくなく切ったシーンというのはあるのでしょうか?
トレボロウ:本当に少ししかありません。シーンとして完全に切ったのはそのシーンだけです。
クレアの性格などが伝わりやすいシーンではありますが、危険な目に遭っている子供2人を探しているという深刻な状況の中で、例え有効な手段だとしても「君たち何やってんの?」と感じてしまう、どうしても緊迫感がなくなってしまう描写だったので、かなり早い段階で切りました。
他にも小さいカットはいくつかあって、あっても良かったのでは? と感じるようなシーンが多いかもしれません。ブルーレイには特典として収録されると思いますが、これらのカットに関してはスタジオが決めたわけではありません。テスト上映もありませんでしたしね。
何度も何度も観直したくなるような、脂肪分の少ない作品にしたいという思いから、私がカットしただけなので、上映版がディレクターズ・カット版だと思って、是非観て下さい。
――『ジュラシック・パーク』シリーズから『ジュラシック・ワールド』では、映画内の時間がけっこう経っていると思うのですが、その期間に何があったのかというのは、綿密に作り上げられているのでしょうか? そして、それが語られる日は来るのでしょうか?
トレボロウ:自分としては『ジュラシック・ワールド』の過去よりも未来がどうなっていくのかに興味がありますし、前へ進めたいという気持ちが強いです。
本作は、片足は過去に付いていて、もう片足は現在に付いています。そして、次の作品では片足が未来へと踏み出すはずです。今回の世界的なヒットを受けて、観客が未来へと進むことを許可してくれたのではないかと感じています。
ラプトルとバイクに乗ったオーウェンが一緒に走るといったシーンははっきり言ってナンセンスですし、少し不安に感じながら作ったんです(笑)。でも、それを気に入ってくれた観客が多かったので、本作の人間と恐竜が地球で共存しているというアイデアをどう展開させていくか? を今後は考えて、進めていくと思います。
今後インドミナス・レックスを超える恐竜が登場するかも
――前作の『彼女はパートタイムトラベラー』はSF、そして本作も広義ではSFだと思うのですが、監督にとってSFは思い入れのあるジャンルなのでしょうか?
トレボロウ:前作も本作も現実世界に根ざした、エモーショナルな側面のあるSFだと思っています。どちらもロマンチックで、ラブストーリーだと言ってもいいでしょう。
私もデレク・コノリー(監督のパートナー、『彼女はパートタイムトラベラー』で脚本、『ジュラシック・ワールド』で共同脚本を担当)もそういった現実世界をちゃんと描いていて、コメディやロマンス、サスペンスなどが含まれたSFが好きなんです。
『ジュラシック・ワールド』が、そういった自分たちの作りたいと常に感じているジャンルの枠に入っている作品だったのは非常にラッキーでした。今作っている『インテリジェント・ライフ(原題)』もそういった要素のある映画で、今後もこの方向性を追求していこうと考えています。
――そういったジャンルの映画を好きになった、作りたいと思うようになったきっかけの作品はあるのでしょうか?
トレボロウ:美しく成し遂げていると感じたのは、ミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』です。あの作品は人間関係を描くことを主軸においた、エモーショナルでロマンチックなSFだと感じました。とにかく素晴らしいです。こういったテーマを語ることがSFにはまだまだできると思います。
多くのSFはどこか冷たい作りですが、そうである必要はありません。そういった意味で『エターナル・サンシャイン』は2人の恋愛関係を語る、暖かいSF映画のパイオニアであり、自分にとっては特別な作品です。
映画『ジュラシック・ワールド』は2015年8月7日(金)より全国公開。
(C)2015 Universal Pictures
(スタナー松井)
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